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【コラム 撃戦記】配達アルバイトに励む三宅諒の男意気を見た フェンシング五輪メダリストの決断【山崎照朝コラム】2020年5月3日 12時30分
昨年まで中日の外野手として活躍した友永翔太さん(29)が、飲食店の宅配代行サービスであるウーバーイーツの配達員をやっているそうだ。本人がツイッターに書いている。ほかの仕事をやりながらのアルバイトで、「ドラゴンズに入ってから縁がある養護施設に全額寄付しようと思っています」とのこと。その志は立派である。 さて、現役アスリートにもウーバーイーツで配達員のアルバイトをはじめた選手がいる。フェンシングのロンドン五輪銀メダル(男子フルーレ団体)の三宅諒選手(29)。東京五輪を目指す中で、新型コロナウイルス禍にぶちあたった。大会は中止となり、練習場も閉鎖。3社あったスポンサーとの契約もこの1月で終了となった。 企業チームに所属しない選手には、時間に縛られず自由に練習に専念できる利点がある。その反面、こういう事態になると一気に苦しくなる。きっと同じような悩みを持つアスリートも多いだろう。「コロナ禍もここまで来たか」と驚くばかりだ。 アスリートの中でも五輪を目指すとなると、費用は半端ではない。大会に出るための遠征費、練習場の確保と器具…。マイナー競技となると資金確保はさらに難しくなる。ただメダリストである三宅選手の場合、望めばきっと新たなスポンサーも獲得できるのだろうが、あえてプライドを脱ぎ捨てたところに共鳴する人は多いと思う。ちなみに彼は慶応高から慶応大に進んだ経歴の持ち主だそうだ。 私も大学時代に空手に励むかたわらプロのキックボクサーとして試合に出た。ギャラは安く、いろいろなバイトを経験した。選んだのはいつもみんなが嫌がる仕事ばかり。なぜならバイトは卒業後を見据えた社会勉強の一環だととらえていたからである。特にやったのがトレーニングを兼ねた土木作業だった。 三宅選手の初日の日当は4688円だったそうだ。確か私が当時の土木作業で手にした日当は8000円。いい稼ぎだった。テレビ4局が視聴率を競ったキックボクシングブームの時代。NETテレビ(現テレビ朝日)「ワールドキックボクシング」のメインイベンターのギャラは4万円。驚く仲間もいたが金額など私にはどうでもよかった。 あえてウーバーイーツを選んだ三宅選手。その心意気に共感する、私のような人たちの応援がきっと支えとなると思う。アスリートにとっていまは覚悟が必要な時期なのではないだろうか。試されていると言ってもいいかもしれない。(格闘技評論家=第1回オープントーナメント全日本空手道選手権王者) PR情報
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