【中日】郡司裕也の登場曲「青い春」でつながった楽天・今江敏晃コーチとの不思議な“縁” つなぎ役となった球団職員が描く夢とは

中日・郡司
中日・郡司

 一秒でも早くプロ野球を見たい。この物語を聞きその気持ちが加速した。「STAY HOME」中のファンに届けたい話がある。

 3月のオープン戦。慶大からドラフト4位で中日に入団した郡司裕也捕手(22)が打席に向かうと、無観客のナゴヤドームにback numberの「青い春」が流れた。1月の入寮時に同バンドの直筆サイン色紙を持ち込み、「神です」と漏らした熱狂的ファン。実際に郡司は「ちょっとでも長く登場曲を聞きたかったんで、打席に入る前に素振りを数回増やそうと思いましたよ」と冗談っぽく教えてくれたが、今でも記者はこの言葉を冗談ではなく本気だと思っている。余談だが、郡司がナゴヤDでこの曲を聞くのは2度目。初めて聞いたのは大学3年の夏で、慶大野球部の休日が奇跡的にライブの日と重なり、東京から名古屋を訪れて同級生たちと生歌に酔いしれたという。

 球場で流れる登場曲に思考を巡らすのはとても楽しい。福田は重厚なエミネムを「今年も変えない」らしい。梅津は「マウンドに上がる瞬間にスイッチを入れる曲だから」と月色ホライズンを普段は封印している。溝脇に教えてもらったミセスは僕のヘビロテになり、京田はいまだに今季使う2曲を教えてくれない。話を戻すと、郡司は2月のキャンプで先輩の柳から同バンドの「SISTER」を譲り受けていた。この曲も郡ちゃんお気に入りの一曲。そんな中ある球団職員が登場し、郡司に声をかけた。

 中日の営業本部イベント推進部・石田裕貴さん。以前は一般企業に勤めていたが「プロ野球に携わりたい」と一念発起し、2008年から9年間、縁もゆかりもない仙台の楽天で球団運営を学んだ。その後17年から再び名古屋に戻って竜の一員となった。「私が楽天にいた15年に郡司、平沢、佐藤らの“仙台育英旋風”がありました。みんな格好良くて仙台の街が本当に熱狂しました。その時は郡司選手の楽天入団を誰よりも強く願ってました」。その15年オフ。ロッテから今江(敏晃=現・楽天育成コーチ)がFAで楽天へと移籍した。

 ここから話は一気に動き出す。石田氏は話を続けた。「今江コーチの現役時代の登場曲はこの『青い春』でした。私が知るプロ野球選手の中で1番と言っていいほどの人間性、野球に対する姿勢と社会貢献。素晴らしい選手の一言です。郡司選手にこの曲を使ってもらい、目の病気で志半ばで引退した今江コーチを超える選手になって欲しいと思ったんです」。奇しくも郡司は千葉出身で小学時代にロッテジュニアにも選抜された。郡司も今江コーチが同曲を登場曲に使用していることは知っていたし、特別な存在だった。

 しかし郡司はこの話を聞き「恐れ多いです」と一度は断った。しかし石田氏がもう一度頼み込み、柳が譲ってくれた「SISTER」と併用することが決定した。石田氏はことの成り行きを今江コーチにも連絡。すると「ぜひ使ってください!頑張って!とお伝えください」と温かいエールで快諾してくれたという。名古屋と仙台。石田氏を中心にした不思議な三角関係が完成した。郡司は「夢のようです。まだ僕はプロ1年目なのに、周りの皆さんが本当に良くしてくれる。今江さんの思いも背負ってドラゴンズで思いっきり活躍したい」と意気込み、いずれ来るであろう今江コーチとの対面を心待ちにしている。

 石田氏は最後に「いつか柳選手と郡司選手が大活躍して“W裕也”の曲をback numberさんに作って欲しい。僕はそこまで本気で考えてます。実現したら? 泣いちゃうでしょうね」と、言葉を残して電話を切った。そのときは僕も一緒に泣く。ファンの皆さんも一緒にお願いします。(記者コラム・長尾 隆広)

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