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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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麒麟

 ポータルで村に戻った俺達は大急ぎでフォーブレイへ向かう事になった。


「フィーロの馬車ー……」

「置いてきたんだからしょうがないだろ」

「うー……」


 馬車クラスの大きな物となるとポータルでは運べない。

 なのでフィーロには村で使っている安物の馬車を引かせる事にした。

 一応は残してきたフィロリアルが村に届けてくれる事になっている。


「頑張りましょう」

「ああ」


 一応、俺の村の連中でも飛びぬけて戦闘力の高い奴らを連れてきている。

 勇者勢は鉄板だな。今じゃフォウルも入るか。

 ラフタリア、フィーロ、リーシア、キール、サディナ、谷子、ガエリオン、実戦じゃかなり地味なババア(かなり活躍はしていたらしいが知らんな)元康のフィロリアル三匹、女騎士を連れて行く事にした。

 他に女王とクズ。後者はどうでもいいが、女王は政治で役に立つからな。


「麒麟はどんな敵なんだ?」

「ゲーム知識じゃ語れないのがきついな……」


 確かに……錬の話も尤もだ。

 鳳凰も錬達の話と食い違うから、実際戦うのは調べた後にした方が良いだろう。


「女王は何か知らないか?」

「麒麟に関して描かれた物ですか? 伝説には詳しいつもりですが、フォーブレイにあったでしょうか……?」

「無いのか?」


 女王って趣味が伝説の探求だろ? 見た感じ。

 その女王が知らないってなんだよ。

 あるいはフォーブレイという国が意図的に隠している、という事も考えられる。

 俺達みたいな勇者の血で出来た国だからな。

 そういう事も十分ありえる。


「フォーブレイも長い激動の時代がありまして、その時に消失している可能性が否定できませんね。あちらにも四霊に関して調べていると思うので、大きな国立図書館でわかるかもしれません」


 国立図書館か。確かメルティが本で、とか言っていた様な気がするけど、そこの本だったのか?

 そう言えばフォーブレイには七星勇者が多いんだったか。

 あっちの七星勇者とも一緒に戦う事になるかもしれないな。


 ……今回の事件を起こした可能性の高い奴も混じっているかもしれない。

 攻撃方法の確認次第では、遠慮せず殺すかも知れんがな。

 むしろ異世界召喚された七星勇者が居るのなら、事前に調べてくれているかもしれない。

 期待しないで行くしかないだろう。


 と、全速力で進む馬車の旅だったんだが……。

 やはり時間が来て、視界の砂時計の数字が現れた。


 今度は『9』と言う数字だ。


 と言うのは良いんだ。

 問題はその後の事だ。


 一時間くらい経った頃だろうか?

 フィーロに限界以上にスピードを出させて、フォーブレイの隣の国への街道を爆走していた時だ。

 いきなり……数字が消えた。

 俺は馬車を止めて、女王や勇者共と話をする事にした。


「どうなっているんだ?」

「どうかしましたか?」

「ああ、砂時計の数字が消えた。まるで倒した時みたいに」

「尚文、俺もそうだ。おそらく麒麟が倒されたと見て良いんじゃないか?」

「ふむ……」


 フォーブレイには七星勇者が居るんだ。

 ならばあり得ない話では無い。

 あっちに何人いるんだ?

 えっと、クズとフォウルが七星な訳だから……リーシアはどうなんだ?


 考えてみればリーシアの武器はフォウルと違って半透明で形も安定しないんだよな。

 これを七星武器と呼ぶのはなんか違うと思うのだけど、どうなのだろうか?


 ともあれ、最高で五人の七星勇者がいる訳だから麒麟を倒せたとしてもおかしくは無い。

 まあ麒麟を倒せる様な連中が何故、鳳凰との戦いに参加しなかったのか、という疑問は残るが。


「女王、フォーブレイは何人七星勇者を抱えているんだ?」

「あちらの地域を重点的に回っていただいているのは五人です。もちろん、各国を回っているそうですけど」


 残りは全てフォーブレイか。

 で、四聖とクズはメルロマルク周辺の波と?

 まあ、人数的にも出来なくはないか。


 その中に絶対に許せない奴がいるかもしれない。

 勇者は七星も殺してはいけないらしいが、あんな事を起こした奴を許せるはずが無い。


 それに、七星では無い可能性もある。

 波の敵……グラスの様な連中が何かしらの手段でこちらに来ていた場合も考えられる。

 仮にそうだった場合、勇者同士で殺し合いなどというバカな事をする事になる。

 冤罪ではダメなんだ。

 本当の犯人が罰を受けなければいけないんだ。


 だが……。

 一つ大きな問題がある。


 青い砂時計の数字が無くなった。

 と言うか、青い砂時計のアイコン自体が無い。

 代わりに赤い砂時計が残り時間を提示している。


 後一週間か。

 麒麟を仮に七星勇者が倒してくれたと仮定して、次の応竜は何処へ行ったんだ?

 ガエリオンに目を向ける。


「キュア!」


 谷子があやしている。

 どうにかして親ガエリオンと話をしたいがー……。

 谷子は元より、錬の前でも親ガエリオンって出て来ないんだよな。


 ……麒麟は倒されたが、応竜が残っている。

 仮に出現するとしたらどこに現れるだろうか。

 今回みたいに、土壇場で出てこられても困る。

 場所を聞いておこう。


「錬、樹、元康。応竜はどこで蘇る?」

「あっちだ」

「こっちです」

「そちらです。お義父さん」


 そう言って三人は別々の方向を指差した。

 全員バラバラだぞ……。

 まあ居場所が特定できない設定、とか言っていたから期待してはいなかったが。


「ど、どうやら応竜は場所がわからなそうだな」


 と、錬が困惑気味に言った。

 そりゃそうか。

 自分が指した方角とは違う方向を樹と元康が指差してた訳だしな。


 しょうがない。

 応竜については後で考えるとして、ガエリオンと話しておくか。


「ガエリオンに乗ってフォーブレイの方を見たい」

「フィーロは?」

「お前もついて来て良い。とりあえず、ガエリオンもな!」


 少々強引だけど、錬と谷子がいるから高く飛んで話すしかあるまい。

 谷子がガエリオンに乗ろうとするのだけど、ガエリオンが嫌がって、谷子を乗せずに羽ばたく。

 俺はフィーロに跨り、飛ばせた。


「……で? 応竜について聞きたいのだが」

「すまんが我にもわからん」


 高高度から遠いフォーブレイの方を見る。

 豆粒みたいな何かが見えるような気がするがー……あれがフォーブレイか?

 行った事が無いからわからない。


「応竜はお前じゃないのか?」

「竜帝の欠片が集まればそうなのかもしれんが……」


 ふむ……応竜の封印が解ける見込みがないから青い砂時計は出て来れなかったと見て良いのかもしれない。



 ガエリオンと話を終えた俺達は途中で小さな国に立ち寄った。

 入国の関係で、女王が小さな国の城で話をしに行くと、直ぐに戻ってきた。


「イワタニ様、麒麟がどうなったかのか判明致しました」


 ま、その国の連中が少しだけ噂話をしていたから俺達の耳にも入っているのだけど、女王が影や国の連中から話を聞いたので、ある程度わかった。


「フォーブレイの七星勇者が軍を引き連れて討伐に成功したそうです。損害は限りなくゼロだとか」

「そうか……それはよかった」


 しかし、アトラとそして共に戦った連合軍に犠牲を出した犯人がそこにいるかもしれない。

 そう思うだけで、今すぐそいつ等の所に行ってアトラと同じ目、いや、それ以上の罰を与えてやりたい。


「で、その七星勇者とやらは何人が参加したんだ?」

「それが話では、おかしい事に一人だそうです」

「一人……?」


 一人か、随分とがんばった奴がいるみたいだな。

 だが、他の七星勇者は何をしているんだ?

 鳳凰にも参戦しない。予想外に早く出現した麒麟とも戦わない。

 まるで役立たずじゃないか。


「真偽を確かめる為に行くべきか。アトラ達の為にも」

「わかりました。速達でフォーブレイに謁見できる様、使者を送ります」


 女王の指示で、立ち寄った国からフォーブレイに謁見の伝達が送られた。

 騎竜だったので、そんなに時間は掛からないだろう。

 問題は俺達もすぐに出発するかどうかだが……。


「急行いたしますか?」

「ふぇ……」


 フィーロが馬車に体を預けてぐったりしている。

 考えてみれば連戦の後の急行だった。

 フィーロは大丈夫だと言うだろうが、相当無理している。

 少しだけでも休むべきだろう。

 それにフォーブレイに居るらしい七星勇者共も集まるのに時間が掛るだろうし、少しだけ休息を取るべきか。


「いや、今日は休んで体力の回復を図る」

「了解いたしました」


 こうして四霊の内、三つを討伐した後、波は普段通りの赤い方へと落ちついたのだった。

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