挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
307/986

葬儀

 翌日。

 泣き疲れた俺はラフタリアと一緒に寝入ってしまっていた。


「此度の戦いに命を賭けた英雄達に……敬礼」


 鳳凰の封印されていた地の城の前で葬儀が執り行われた。

 今回の戦いで失った者たちを手厚く葬る。

 俺の村の連中も数名失われてしまった。


 戦うための駒にする為に育てていたはずなのに……全員が生きて欲しいと願った。

 もう……波に出すのはやめようか。

 こんな気持ちを何度も味わう位なら、あいつ等を戦場になんて出せない。


 アトラの棺の前で俺は静かに佇んでいる。

 遺体は無い。俺の盾の中に……ある。

 俺はそっと、アトラの棺に花を添える。

 フォウルも俺に合わせて花を入れた。


「……」


 何故かクズも黙って花を添えている。

 その顔は暗い。

 クズは俺にもフォウルにも何にも言わない。

 だけど、俺は知っている。

 アトラを連れて後方に下がった時、クズも治療施設のテントの前で立ちつくしていたのを。


 何にも出来なかった癖に、今更なんのつもりだって言うんだ!

 だが、クズに当たったって何が起こる訳でもない。

 八つ当たりは無意味だ。

 ……何もできなかったのは俺も同じだからな。


 それにクズが犯人ではないのはわかっている。

 あの閃光が鳳凰を貫いた時、女王の近くで指示を見ていたと多数の証言がある。

 なによりクズにはやる理由が薄い。

 場所的にアトラが守らなければ巻き込まれていた訳だしな。


「……俺は戦うからな。波と」


 フォウルが俺に向けて宣言する。


「逃げたって……それは村の奴らの死に繋がるかも知れないからな」

「……そうか」


 フォウルらしい言葉だ。

 もしも俺がフォウルだったとしても、波と戦うだろう。

 皆の為、そしてアトラの為にも。


「兄ちゃん達……」


 キールがボロボロと泣きながらアトラの棺に花を入れる。


「俺だって……戦う!」

「だが――」


 俺の声にキールは決意に満ちた目で答える。


「兄ちゃんはずっと言ってた! 死ぬかもしれない戦いだって、子供の遊びじゃないって、みんなそれは百も承知で戦ってんだ! 今更、危ないから下がってろなんて言っても死んだって聞かないからな!」

「だそうだ」


 フォウルがキールに続いて答えた。


「あの村の連中はみんな、お前を……兄貴を慕って戦う事を決めたんだ。もう止められない。責任は……持て」

「……わかった」


 それでも、出来れば俺はみんなを死なせたくない。

 アトラの言葉を思い出す度に心に刺さる。

 俺は、こいつ等に何をしてやれるのだろう?

 今までそんな事を露とも思わなかった。

 後悔をしない為に……。


 ラフタリアはずっと、静かにアトラの棺の前で佇んでいる。

 アトラはラフタリアが俺の事を好きだと言っていた。

 俺も考えないようにしていた、もしかしたらと思う時が無い訳じゃないが、使命優先の子なんだと思い込んでいたんだ。


 アトラの遺言が俺の心を締めつける。

 後悔ばかりが思い浮かんで、離れてくれない。

 明日には死んでしまうかもしれないと、アトラは前に言っていた。


 じゃあ……後悔しない為に、俺の事を好きだと言ってくれている連中に、応えるべきではないのか?

 俺はアトラに何をしてあげられた?

 病から救ったけれどそれ以外で何をやれただろうか?


 もっと、幸せにさせてあげる事だって出来たはずなんだ。

 ……やめよう。この考えは。

 やるべき事をしてから、安全だとわかってからにしよう。



 葬儀を終え、俺は女王と話をする。


「此度は多大な犠牲が出た中、イワタニ様のご活躍で鳳凰を殲滅出来た事を感謝いたします」

「前置きは良い。それよりも余計な事を仕出かした奴の特定は済んだか?」

「……いいえ、犯人の消息は掴めておりません」

「駆けつけるはずの七星勇者はどうなんだ? 一番怪しい奴だぞ」

「……真に申し訳ありませんが、まだ連絡がありません」

「役に立たないな!」


 イライラしてくるぞ!

 女王に非が無い事は理解しているが、どうしても機嫌が悪くなる。


「この件も重要ではありますが、次の四霊に関しての問題はどうお考えでしょうか?」

「どう、とは?」


 俺の問いに女王は「おやっ」と小さく声を漏らす。


「他の勇者様方から聞いておりませんでしたか? 次の波の猶予です」


 俺は視界の隅にある青い砂時計で残り時間を確認する。


 ――二日と18時間。


 短! 残り時間少な!

 思わず絶句してしまう。


 おいおい、ここから次の四瑞……えっと、麒麟だったか?

 封印されている場所は……錬に聞いてねぇえええ!


「剣の勇者様のお話ではフォーブレイ近隣に出現するそうです」


 フォーブレイって、おま……今からこの部隊を引き連れて麒麟の出現するフォーブレイの方へ行けって言うのか?

 三日以内に?

 ここからメルロマルクへ行くのだってフィーロの足で後先考えずに走らせて二日は掛るんだぞ?

 フォーブレイにはそこからどれだけ掛るんだ?


「と言うか鳳凰の青い砂時計は何処にあったんだ?」

「この町の中央に出現していたようです。目撃者の話では青く光るだけで砂は無かったそうですが」


 ふむ……砂が無い、青い砂時計が現れていたのか。

 それにしてもおかしな話だ。

 鳳凰は三ヶ月とあまりにも長い期間猶予があったのに、麒麟は三日だ。

 考えてみれば霊亀も鳳凰も生物を狙う習性ある。


 ……四霊、か。

 ここから導き出される可能性として真っ先に上がるのは、やはり奪った命の数だけ時間が延びる事だ。

 瑞獣は幸福の象徴だったはず。

 つまり世界規模で考えれば、時間が延びるのは良い事とも言えるか?


 犠牲者……アトラ達の事を考えると否定したくなる。

 いや、否定するべきだ。

 偶々封印が解けるのが早かっただけかもしれない。

 ってそれよりもだ。


「麒麟はどうするんだ? いや、とりあえず錬を呼ぼう」


 俺は声を上げて錬を呼ぶ。

 しばらくすると錬は俺が呼んだのを聞きつけて、やってきた。


「なんだ?」

「麒麟はどんな敵だ?」

「鳳凰と同じく、対の魔物だ」


 麒麟……確か麒と麟と言う鳳凰と同じく二匹の瑞獣だったか。

 フォーブレイ近隣が封印された地であるのは、俺の知る麒麟が人徳のある王の前に現れる獣だからか?

 でもフォーブレイってあの豚王が統治する国だろ?

 その限りではなさそうだな。

 もしくは最初に出現した時は有能な王様が居たとかそんな所だろ。


 そんな事よりも後三日しかないのに連合軍をどうするかだ。

 移動は元より、武器の修理、戦闘の打ち合わせ等、考えたらキリがないぞ。


 と言うか三日ってなんだよ。準備も糞も無いほど短いな!

 三日で、行ける距離じゃないし、仮にポータルで飛ばすにしても、元康はとっくにポータルを消しているし、飛べない。

 地道に行くしかないのか?

 ああもう。


「最低でも勇者は先行して行くしかないだろ。三日じゃフィーロを走らせても間に合わないとは思うが、行くしかない!」


 ただでさえ強力な化け物なんだ。

 間に合わない前提でも、行くしかないだろう。

 フォーブレイってこの世界の大国だし、人口も多いはずだ。

 そんな場所で命の多い場所を狙ってくる化け物が現れたらどうなるか?


 答えは明白だ。

 少しでも犠牲を少なくしないといけない。

 もしかしたら……勇者だけでも勝てるかもしれない。


 自惚れでも良い。やるしかないんだ。

 もしもそうならば、村の連中を犠牲にしないでも済む。


「とりあえず、ポータルで村に戻り、出発する」


 フィロリアル共を連合軍の足代わりに全員連れてきたのが痛いな。

 改造されてラフ種に組み込まれてしまった魔物共を足代わりにするしかないのか?

 一応スタミナはある。フィロリアル程、足は早くないけどさ。


「メンバーはどうするんだ?」

「連合軍は被害があるし、移動も考えて使うのは厳しい。女王、お前はどうする?」

「……わかりました。私もクズ共々ご同行しましょう。フォーブレイの軍に協力を仰ぐとします」


 ふむ、やはりメルティの親か。

 こう言う時、率先して前に出ようとする考えは評価に値する。

 女王は連合軍の連中に話を付けに行った。

 シルトヴェルトの幹部勢が連合軍を連れてフォーブレイの方へ少しずつ移動する事になった。

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。