航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる将来戦闘機「F3」について、防衛省が、米ロッキードマーティン社によるステルス戦闘機F22とF35をベースにした"ハイブリッド機"の提案を断っていたことがわかった。
防衛省の外局である防衛装備庁が筆者の取材に対し、「これまでの検討によって、『既存機の派生型の開発』というオプションは、我が国主導の開発の観点から、候補とはなり得ず、『新型機』を開発するという結論に至った」と明言した。
ただし、日本主導の新型機開発とはいえ、防衛省や国内航空産業の能力を踏まえれば独自開発は難しく、海外勢との共同開発に向かわざるを得ないのが現状だ。河野太郎防衛相も3月27日の記者会見で、米国と英国を共同開発のパートナーとして検討していることを明らかにし、年末の来年度予算編成までにF2後継機の開発生産の枠組みを決める方針を示した。
ロッキードマーティン社のF22とF35をベースとした改修提案について、空自出身の宇都隆史参議院議員(自民党)は筆者の取材に対し、「防衛省も政界も、はなからそのラインは選択肢にない」と述べた。
そのうえで、「共同開発路線になるが、いわゆるF35のような共同開発ではない」と指摘。さらに、日本として次期戦闘機事業で譲れないポイントとして、以下の2点を挙げた。
1.運用要求(どんな戦闘機にしたいのか)は、日本が主体性を持って決められること。
2.開発途中、または完成後にあっても、諸元の変更や改修の自由度は、完全に日本側に担保されること。
宇都議員は「エンジン、レーダーなどどこの分野を日本が受け持つかも、まだまだ未定」と述べた。
以下に、筆者と防衛装備庁との一問一答を掲載する。筆者は英軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーの東京特派員として取材した。(参考記事:Update: Japan rejects foreign plans for next-generation fighter)
―ロッキードマーティン社のF22とF35をベースとした改修提案を防衛省は既に断ったのでしょうか。
次期戦闘機については、中期防にもあるとおり、国際協力を視野に我が国主導の開発を行うこととしています。
現在、インターオペラビリティー(相互運用性)の確保や費用対効果、技術的信頼性の観点から、協力の潜在的な可能性を有する米国と英国との間で協議を進めており、両国との間での協力の可能性を見極めているところです。
これまでの検討によって、「既存機の派生型の開発」というオプションは、我が国主導の開発の観点から、候補とはなり得ず、「新型機」を開発するという結論に至っております。
―国産主導とは言え、今の自衛隊や国内航空産業の能力では、独自開発はできないとの見方が強いと思います。基本は共同開発路線で間違いはないでしょうか。中期防で書かれた「国際協力を視野に入れつつ、我が国主導の開発に早期に着手」の方針は変わりないでしょうか。
次期戦闘機については、平成21年度に「将来戦闘機に関する研究開発ビジョン」を公表して以降、これまでに約2277億円の経費を投じ、戦闘機開発に必要な、機体、エンジン、アビオニクス(航空電子機器)など一連の戦闘機関連技術の蓄積・高度化を図ってきており、戦闘機の開発に移行可能な技術を国内に蓄積できたものと認識しています。
他方で、2018年12月の中期防衛力整備計画は、「国際協力を視野に、我が国主導の開発に早期に着手する」と記載しており、この方針に変更はありません。
ー現在は、英国のBAE社との共同開発の連携を模索しているとの情報を得ていますが、間違いないでしょうか。
現在、米国と英国と協議を進めておりますが、英国との間では、日英両国にとって望ましい協力形態が何なのか見極めるため、日英両国の政府に企業も含めた形で協議を行っております。
ーF2後継機のエンジンやレーダーなど、どこの分野を日本企業が受け持つかなど、具体的に決まってきている分野はありますか。
現時点で、エンジンやレーダーなどといった個々の構成品をどのように開発するのかについては決まっておりません。