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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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VS鳳凰

 やはり想像通り、現れた鳳凰は霊亀と同じく手ごろに多数の命が集まっている俺達の方へ向かって飛んできた。

 視界に浮かぶ『8』という数字。

 やはり八番目の波相当、というのが正解だろうか。


「お前等、間違ってもトドメを刺すタイミングを誤るんじゃないぞ」

「わかっている!」


 錬を筆頭に近付いてくる低高度の方の鳳凰に向かって、各々は攻撃を開始した。


「キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」


 高高度にいる鳳凰がこっちに向けて羽ばたきで羽根を降り注がせながら火の雨を降らし始める。


「流星盾!」


 気の力を込めた流星盾は範囲と防御力がかなり向上する。

 そのお陰で最前線の一部は守られるが、それ以外はまだ足りない。

 この辺りは想定内だ。


「お前等、わかっているな?」


 振り返ると奴隷は元より、連合軍の連中も頷いた。

 さすがに大人数を守りきれる自信は無い。

 それでも守るために俺は出来る限りの工夫をする事にした。


 俺とアトラが協力して作り出したスキルでは無い技、集を俺は降り注ぐ火の雨に向けて展開させる。

 大きな漏斗で集めるかのように上から降り注ぐ火の雨は俺に向けて集まって行く。

 この攻撃がどれほどの物かで対処が変わってくる。


 その間に低高度で襲い掛かってくる鳳凰に向けて攻撃を集中させる。

 降り注ぐ火の雨を盾で受け止めた。

 バシバシと傘に雨が当たるような、そんな感覚が盾を通じて伝わってくる。

 俺が今装備しているのは強化した霊亀甲だ。


 霊亀甲(覚醒)+8 70/70 SR

 能力解放……装備ボーナス スキル「Sフロートシールド」「リフレクトシールド」

 専用効果 グラビティフィールド Cソウルリカバリー Cマジックスナッチ Cグラビティショット 生命力向上 魔法防御(大) 雷耐性 SPドレイン無効 成長する力

 熟練度 100

 アイテムエンチャントLv8 防御力10%アップ

 ドラゴンスピリット 防御力50 火耐性向上

 ステータスエンチャント 魔力30+


 鳳凰の攻撃を想定してエンチャントは万全だ。

 これで火属性の攻撃は相当軽減できる。

 蛮族の鎧にも火耐性が付いているから並大抵の攻撃ではビクともしないはずだ。


 現に上から降り注ぐ攻撃に対して、俺は痛くも痒くもない。

 ただ、さすがに範囲が大きすぎて連合軍全てを守りきれるはずもない。

 だけど、そのくらいは想定済みだ。


「アル・ツヴァイト・レジストファイア!」


 連合軍の方も後方援護部隊が、火属性の耐性を上げる魔法を常時掛けている。

 これである程度は軽減して、戦いに集中できるはずだ。


 ん?

 鳳凰が落とした羽根が地面に落ちると、そこから鳳凰の使い魔(眷属型)と言う魔物が出現した。


 壁画の通りだ。

 前衛の近接部隊が出現する鳳凰の使い魔の殲滅に走る。

 よし!


「ラフー!」


 俺が取りこぼしてしまった鳳凰の羽根をラトの育てた魔物であるミー君が体を絨毯のように変化させて弾く。

 形状変化が得意だからか。こう言う時には便利だな。


「いくよー!」

「キュア!」


 フィーロとガエリオンと谷子が高高度にいる鳳凰に向けて飛んでいく。


「てぇい!」

「キュア!」

「うん。行こう!」


 ここで空を飛べるようになったフィーロに関しての難点を説明しようと思う。

 飛ぶと言う事はそれだけ犠牲にする事が増えると言う事だ。


 本人曰く、俺が説明したらしいのだが、魔力を使って飛ぶようになった。だから飛ぶのは魔力を相当消費する。

 更に、地上に居る時よりも腰に力が入らないので蹴りの威力が大幅に下がっていて、くちばしで突くや爪で握るとかしか出来ないそうだ。

 しかも意識を集中するクイック系やスパイラルストライクは使い辛いのだとか。


 その点で言えば、昔から飛ぶと言う事が出来るガエリオンは空中戦での短所はそこまで無い。

 ブレスが基本攻撃だし、爪による引っかき等、戦闘パターンに大きな変化は無い。

 むしろLvの影響か、ホーミングで炎で作られた矢を射出する魔法まで使いこなせる。


 ただし、鳳凰は火を使うのが得意だからガエリオンのブレスも属性を変えねば威力が出ない。

 まあ、火だから耐性も高いんだけどな。


「うぃんぐ・とるねーどー」


 強く羽ばたいたフィーロが回転しながら鳳凰に突進した。

 スパイラルストライクに似ているけれど、速度が出ていないな。


「てい!」


 そして高高度の鳳凰に引っ付いたかと思うと、力強く蹴りあげた。

 ああ、確かにその方法なら蹴りの威力は下がらないな。


「ガエリオン、行くよ」

「キュア!」

『我ここにガエリオンの力を導き、具現を望む。地脈よ。我に力を』

『キュアキュアキュア!』

「ハイウィングスラッシュ!」


 ガエリオンの翼が光り輝き、羽ばたく事で風の刃が生み出される。

 その刃は高高度の鳳凰に突き刺さった。


「キュイイイイイイイイイ!?」


 善戦しているな。

 今は俺も目の前の鳳凰に意識を集中させよう。


「はぁあ!」


 俺が鳳凰の足を掴んで、隙を作るとラフタリアやフォウル、アトラが逃さず攻撃を加える。


「八極陣天命剣二式!」

「タイガーブレイク!」

「行きます!」


 ラフタリアの剣が鳳凰の肩口を切り裂き、フォウルの拳が腹部に刺さり、アトラの突きによって突いた場所が弾ける。


「俺も負けてられない! 重力剣!」

「うん! 兄ちゃんの為に頑張るぞーワンワン!」


 錬も負けじとスキルを放ち、鳳凰に飛びついて頭に向けて剣を何度も突きさす。

 キールもけるべろすになって鳳凰に噛みついた。

 おお……バターを切るかのように錬の切りは鳳凰にきつい一撃を与えているようだ。

 キールの攻撃も馬鹿には出来ない様だぞ。


 しかし。

 鳳凰は霊亀の様な生物的な側面と、精霊や幽霊の気体のような部分を持っているようで、傷付けたその場から、炎のように燃えがって傷が消えて行った。


「く……なんて生命力だ!」


 切っても、その場で引っ付いて深い傷には出来そうにないか。

 なんて厄介な……。

 だが、見た感じではあるが、ダメージが入っていない訳では無いようだ。


 やはりシミュレーションした通り、自爆しても平気なように低高度の方はダメージを受けることを視野に入れた戦い方をしてこない。攻撃特化な捨て身戦法で攻撃してくる。

 だが、鳳凰を想定した攻撃を俺達は組んでいたので、ブレスも羽ばたきも大してダメージを受けない。


 霊亀のようなSP吸収攻撃の様な厄介な攻撃を低高度の方はしてくる気配が無いのが救いだな。

 念には念をとガエリオンの所為で弱体化していたラースシールドも強化しておいたが、使わずに済みそうだ。

 霊亀甲の性能がかなり高いから、ある程度追いついて来ているんだけどな。

 グロウアップするような事態じゃないし。


 まあ、何をしてくるか想定しきれないんだけどさ。

 もしかしたらそう言う攻撃をしてくるのかもしれないし……。

 鳳凰を掴んで高く飛べないように押さえつけている最中、俺は高高度の方に目を向ける。

 すると元康、樹とリーシア、サディナと女王がそれぞれ高高度の鳳凰に向けて攻撃をしている。


「フィーロたん気を付けて! ブリューナク!」

「バードハンティング!」

「トルネードスロー!」

「合唱魔法! ウォーター&ライトニングブリッド!」

「高等集団儀式魔法! レインストーム!」


 元康が光の槍を鳳凰に向けて投擲した。

 そう言えば、取り巻きの三匹は何をしているんだ?

 と思ったら、思いだした。フィロリアル部隊と連携してこっちで戦っているんだった。


 樹の矢が拡散しながら鳳凰を射抜き、リーシアの投擲具が竜巻を起こして閉じ込め、サディナが率先して発動させた合唱魔法が命中する。

 見た感じ、やはり低高度の方よりもダメージが入っていない。

 フィーロとガエリオン、他竜騎兵や空を飛ぶ魔物……グリフィンか? に乗った兵士が善戦しているけれど低高度の方にダメージが入り過ぎている。

 このままでは同時に、と言うのは難しいな。


「みんな、もう少し加減しろ。じゃなきゃこっちが先に倒れる! 出来る限りタイミングを合わせるんだ!」

「わかっている!」

「はい!」


 前線にいる連中に注意し、俺はエアストシールド、セカンドシールドを小まめに展開させながら低高度の鳳凰を抑えつけた。

 後はダメージを抑えつつ、高高度の方のダメージを蓄積させるだけだ。


「!? 尚文様、鳳凰の生命力が回復しています」

「く……やっかいな」


 アトラの進言なら間違いない。

 攻撃の手を緩めると回復されるか。

 かといって本気で行くと先にこっちが倒れる。


 難しい塩梅だ。

 だが、勝てない相手じゃない。

 と言う所で、俺は熱さを感じて鳳凰を見る。


 そして、掴んでいた手がすり抜けた。

 なんと鳳凰は炎に形を変えて居たのだ。


「全員、俺の後ろに下がれ! エアストシールド! セカンドシールド!」


 壁画の中でひび割れていてよくわからなかった部分の攻撃か?

 俺は盾を前面に構えて、立ちはだかる。


「キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」


 炎の竜巻と同時に鳳凰が俺達に向かってぶつかってきた。

 フィーロのスパイラルストライクに似た突進攻撃だ。

 炎を纏っているけれどな。


「く……」


 さすがに無傷とはいかないか。

 じりじりと肌が焼かれる感覚がある。


「大丈夫か!?」


 低高度の鳳凰の突進攻撃を正面から受け止めたお陰か、後方の連中には被害が無い。

 まあ、降り注ぐ羽根と使い魔による戦闘で前線部隊も多少はダメージを受けているが致命傷には程遠い。

 と言う所で、俺は自身の異常に気付いた。

 魔力が吸われている。

 ……イヤな予感がする。


「キュイイイイイイイイイイイイイイイイ!」

「流星盾!」


 高高度にいる鳳凰が大きく息を吸い、赤いレーザーの様なブレスを吐き散らした。

 命中する直前に発動した流星盾のバリアが俺を中心に展開される。


「わ!」

「キュア!」


 高高度の方で接近戦をしていたフィーロやガエリオン達は辛うじて回避したが、そのブレスが地上部隊に放たれる。


「うわぁあああああああああ!」


 一部の部隊が玩具のように吹き飛んで行く。

 くそ……厄介な攻撃をまだ隠していたようだ。


「魔力を吸われた! 低高度の奴が使ったさっきの攻撃は、地上部隊で戦う奴から魔力を奪って、その魔力を使って高高度の奴が強力なブレスを吐く!」


 だがな、奴は一つ大きなミスを犯した。

 霊亀甲にはCマジックスナッチがある。

 耐えきった俺の盾から、魔法弾が低高度の鳳凰に向かって飛んでいく。

 のだが……バシンと音を立てて魔法弾は消失した。


 魔力吸収は無理か。

 しかもこうして抑えている手前、判明しているのだけどグラビティフィールドは鳳凰に効果が無いようだ。

 どれだけ厄介なんだよ。


「うう……」

「攻撃を受けた者を即座に治療するんだ。アル・ツヴァイト・ヒール! 死なれると敵に操られる! 後方部隊は、早く手伝え」


 俺の指示に後方援護をしていた部隊が駆けつけて、吹き飛ばされた連中の生存者を救護して行く。

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