新型ウイルスのワクチン情報、中国がハッキングか FBIが警告

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米連邦捜査局(FBI)と米国土安全保障省のサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は13日、中国とつながりのあるハッカーが、新型コロナウイルスの感染症「COVID-19」に関する研究を行うアメリカの複数機関を標的にしているとして、異例の共同警告を発した。

FBIは、新型ウイルスのワクチンや治療の研究などを行う複数の団体に対する不正アクセスが複数回確認されたとしている。

公共サービス情報として発信された共同警告の中で、FBIとCISAは、「COVID-19への対応に取り組んでいる医療、製薬および研究部門はすべて」、ハッカーの「1番の標的にされることを認識すべきだ」と述べた。

また、こうしたサイバー泥棒が、新型ウイルスの治療に関する「貴重な知的財産や公衆衛生データを特定し、不正に入手しようとしていることが確認されている」と付け加えた。

アメリカは、サイバー・スパイ活動をしているとして中国政府を長らく非難してきた。中国側はこうした行為について繰り返し否定している。

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新型ウイルスのパンデミック(世界的流行)をめぐっては、アメリカと中国はアウトブレク(大流行)の封じ込めに失敗したとして互いを非難し合っており、両者の緊張関係は悪化している。

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、日本時間14日正午時点での世界全体の感染者数は434万7000人を超えている。アメリカでは8万4000人以上が、中国では4600人以上がこれまでに死亡している。

「いつものこと」

今週初め、中国外務省の趙立堅報道官は、「我々はCOVID-19の治療とワクチン研究において世界をリードしている。証拠なしにうわさや誹謗中傷で中国を標的にするなんて不道徳だ」と述べた。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は11日の記者会見で、中国のサイバー活動疑惑について言及した。

「中国については、いつものことだ。私は中国の対応に不満がある。(新型ウイルスを)発生源で止めることができたはずだ。そうすべきだった」

「それで今度はハッキングをしているらしい。いつものことじゃないか。我々は非常に注意深く見ている」

米当局はこれまでも中国がハッキングや知的財産侵害をしたとして非難を続けてきた。

2009年、アメリカは中国とつながりのあるハッカーが米航空大手ロッキード・マーチンの戦闘機F-35の機密データに侵入した主張。その後ほどなくして、中国は同様の戦闘機J-31を開発していると発表した。

また、米情報当局が中国について、米企業から技術を盗むという「非伝統的な」手段を使っていると非難したこともあった。

アメリカの国家防諜・セキュリティーセンターのビル・エヴァニア氏は、中国によるアメリカの知的財産の被害額は年間約4000億ドル(約42兆7700億円)に上るとしている。

<解説>詳細のない警告、中国への圧力強化が狙いか――ゴードン・コレーラ安全保障担当編集委員

イギリスとアメリカは5月5日にすでに、研究を標的とした活動をしている国々について、詳細を含んだ共同警告を発している。

公式に国名は挙げなかったものの、複数情報筋によると、中国やロシア、イランが含まれていたという。

今回アメリカは中国を名指しにしているが、これまでのところ、この新しい警告にイギリスは関わっていない。それに、何が起きたのか、新しい詳細も含まれていない。

つまり、今回の警告は米中間の緊張が高まる中での米国内向けのメッセージであり、中国に対する圧力を高めるための手段だったと、見ることができるかもしれない。

(英語記事 US accuses China of hacking coronavirus research)