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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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七星武器

 その後、鳳凰の攻撃を想定した訓練を連合軍と合同で行った。


「なんでフィーロがガエリオンと連携しないといけないのー……」


 ブスっとイヤそうに愚痴りながらフィーロは羽ばたいて俺の指示した通りに疑似的な攻撃をして貰っている。

 担当は低高度の近接攻撃をする方だ。

 本当はもっと大きいはずなのだけど、訓練なのだからこんなもんだろう。


「キュア!」


 ガエリオンの方は、楽しげに高高度から訓練をする俺達に、シャレに出来ない魔法詠唱を展開させて親ガエリオンに抑え込まれていた。もちろん、ガエリオンの担当は高高度からの空爆攻撃だ。

 親ガエリオンに聞くと、俺に頼まれてやる気が暴走していたそうだ。


「やはり上空からの攻撃に対して、対処に問題がありますね」


 淡々と樹が訓練終了時に進言してくる。


「そうか」


 確かに低高度で攻撃を担当していたフィーロや、他の飛竜の方は避ける事に意識を集中していて、攻撃自体はそこまで手を出していなかった。

 もちろん、自爆覚悟で攻めてくるのなら攻撃パターンに違いがあるかもしれない。


 ……俺がフィーロに乗って、そのパターンを視野に入れてみよう。

 俺が流星盾を展開させれば、並大抵の攻撃は無効化出来るはずだし、フロートシールドを使うだけでも脅威となるしな。

 錬が攻撃の筆頭で参加してくれている。もちろん、訓練を本気でやられたらフィーロやガエリオンが怪我じゃ済まないから加減はしているけどな。


 さっきの話に繋がるのだが、やはり高高度にいる相手の方がダメージ調整をするのが難しいようだ。

 樹はほぼ確実に命中させる事が出来るのが優秀ではあるのだけどな。

 加減しているからガエリオンでも矢を迎撃できるけれど、本気だったらどうなるのやら……。


 リーシアも一緒に投擲武器で攻めている。

 そこは良いのだけど、問題は他の連中だ。

 元康は遠距離スキルを何個か使用して高高度の方に攻められるようだけど、樹ほどの命中精度は無い。

 まあ、鳳凰は大きいらしいから問題は無いかもしれない。


 ただ、連合軍の方には問題がある。

 弓や魔法部隊の攻撃が思ったよりも貧弱で、言っては何だがそこまで期待できない。

 俺の所の奴隷共だって、魔法が得意な連中をそっちの部隊に回って貰ってはいるのだけど、それでも連携を考えると難しい。


 サディナや女王が率先して後方援護の指揮をしてくれている。サディナはなんだかんだで合唱魔法や集団合成魔法を使いこなせる。女王もそうだけど、こう言うのが得意な奴が唱えさせる魔法は確かに威力を期待する事が出来る。

 陸上だからサディナの戦闘力は下がっている……らしいが出来れば前線で戦って貰いたい。


 けれど、後方の方の戦力が不安だから念の為にそっちに割り振っている。

 想定して戦っているのだけど、低高度で戦う方の負担が大きくて、何度やっても同時に倒せたと言うような確信が無い。


 もちろん、勇者とその仲間だけで倒せるほどの相手ならばここまで警戒する必要は無い。

 念には念を、石橋を叩いて渡る程の慎重さが必要なんだ。これで想定以上に強くて俺たちじゃ対処できない。

 ってなったらシャレにならない。

 俺たちだけで倒せるなら良いんだ。だけど、そうではないかもしれないのなら出来る限りの準備はするべきなんだ。


 ……そりゃあ連合軍にはあんまり期待はしちゃいないけどな。

 強くさせるために色々と手を回すのは良い。問題は自惚れて、俺達に噛みついてきた等の暴走時だ。

 補正だけを掛けさせて自由にさせていると、樹の配下だった奴のようになりかねない。

 難しい問題だな。



 と言う訓練を終えた後の夜だ。

 村から連れてきた奴隷共を小手の七星武器がある寺院にまで連れてきた。


「へぇ……これが小手の七星武器なんだ兄ちゃん」


 キールが若干興奮気味にロゼッタストーンに埋め込まれている小手を見て尋ねてくる。


「らしいな」

「昼間に沢山の人が列を作ってましたね」


 ラフタリアも見ていたのか。

 我こそは勇者だって英雄願望は何処の世界も変わらないのだと知った気分だ。

 皆大好きだもんな。台座に刺さった伝説の剣とか。

 もちろん、俺も好きだけどさ。


「ラフタリアも挑戦するか?」

「それで世界が、ナオフミ様の負担が少なくなるのでしたら」

「そうだな……」


 剣を使うラフタリアが小手で魔物を殴り倒すのはあんまり見たくは無い、というか違和感が凄そうだ。


「仮に選ばれたら戦えるのか? 剣から小手に武器が変わる事になるぞ?」


 と、言った所で思いだした。

 変幻無双流って武器を選ばないんだったか。


「はい。大丈夫だと思います」

「尚文様の盾と似た力が感じられます」


 アトラもフォウルと一緒に七星武器の方に顔を向けている。

 地味に本命の二人だ。

 可能性としてかなり有力だと思う。


「そうか。じゃあ本物なんだろうな」


 これでただのオブジェでしたとかだったら挑戦者が報われないな。

 落ち込んだ分だけ損だろ。

 ま、自分を選ばなかった七星武器なんて偽物に決まっている!

 とか、虚しい事をするのは人の性だけどな。


「とりあえずお前等が優先してもらえるようにこうして普段は閉じてる夜に挑戦させる時間を作ったんだ。全員試せよ」

「「「はーい」」」


 返事だけは元気だな。

 あんまり期待はしてないけど、選ばれ無さそうだな。


「それじゃラフタリアから始めろ」

「私からですか!?」

「ああ」


 まあ、グラップラーラフタリアは見たいような見たくないような気もする。

 あれだ。幻覚魔法と合わせて残像拳、なんてな。

 小手からビームとか出たら便利そうだよな。

 というか、フォウルとアトラが似た様な事をしていた気がする。


「フィーロはー?」

「小手で戦いたいのなら挑戦しろ」


 お前は基本的に蹴り中心だろ。

 小手って人型形態になって敵を殴るのか?

 ……出来そうで怖いな。

 現にみどりは人型形態で斧を使っているし。


「やってみるー」


 と、次々と奴隷共が並び始めた。

 ちなみに錬と樹とリーシアは既に宿で休んでもらっている。

 元康はフィーロ目当てで勝手について来ているけどな。


「ほーら、みんな順番に並ぶのよー」


 ……サディナは本当に奴隷共の親代わりな感じで仕切ってるな。

 銛を武器に使っているコイツが小手に選ばれたら、どんな感じなんだ?

 格闘家っぽくはあるが、なんか違うよな。

 育成ゲームとかで出て来そうな気もする。


「小手ですか……」


 ラフタリアが小手に触れて、取り出せないか挑戦している。

 だが小手に変化は無い。

 これで選定される時は光り輝いてアッサリと取れるのだろうか?

 何か強力な魔物が出現して倒さないと手に入らないとかありそうで怖い。

 やがて諦めたのかラフタリアは俺の方へ戻ってきた。


「無理でした」

「そうか」

「フィーロの番ー!」


 次はフィーロだったが、やはり小手は何の反応も示さない。

 ロゼッタストーンに嵌っている小手を思いっきり引っ張っている。

 こら、変身して足を使うな。壁の方が壊れそうだぞ。

 幸い、ビクともしていないが。


「この危険な時に勇者召喚もしていないのか?」


 ふと、俺は女王に小手がまだ所持者が無い事に対して疑問をぶつける。

 以前聞いた話では世界の危機が迫っている所為か、四聖の勇者全員が召喚されたとか言っていた。

 この理論だと七星の勇者も選定されてもおかしくはないはず。

 現に小手の勇者以外は揃っているらしいしな。

 それなら小手の勇者用に新たに異世界人を召喚するのも悪い手では無いはず。

 まあ、昼間読んだ日記の持ち主みたいな奴が出て来そうで不安だが。


「何度も召喚をしようと儀式は行っておりますが、結果は芳しくありません」

「ふむ……」


 召喚でも未だに応じない七星武器か。

 考えてみれば四聖よりも所持者の条件は緩い武器だよな。

 四聖は異世界人限定らしいし、七星はその点で言えば、この世界の人間がなる事もあれば、異世界人がなる事もある。


「そういや、俺は七星武器が全部でどんなモノなのかを知らないのだが?」

「そうでしたか。てっきりメルティがイワタニ様にお教えしているかと思っておりました」


 メルティはそう言う事は言わないな。

 伝説の勇者は俺達だけで十分みたいな事を言っていて七星には興味が無い感じだった。

 どちらかと言うと町の経営学やフィロリアルを使った行商と現実的な話ばかりしている。

 夢の無いガキだな。

 いや、夢はもう叶ったのか?

 フィロリアルクイーンであるフィトリアやフィーロと友達になった訳だし。


「小手って素手の延長線上の武器だよな。俺も初期は素手で魔物を殴り飛ばしていたから少しはわかる」

「やってましたね……」


 ラフタリアを奴隷にしてからは主にストレス解消だったな。


「小手はイワタニ様の盾に近い、どちらかと言うと身を守る方に重きを置いた七星武器です」

「そうか」


 俺の盾の中には手甲みたいにサイズが小さい物がある。

 カテゴリーが被っているとも言えると思うんだけど、その辺りはどうなんだろう?

 フリスビーシールドとリーシアの不思議武器みたいにな。

 ちなみにリーシアは元康が使う投槍みたいなスキルも使える。


「逆に爪の勇者と言うのも存在いたしますよ」

「……おいおい」


 思いっきり被っているじゃないか。

 小手と爪の違いを述べろ!

 と、言いそうになったがぐっと堪えて考える。

 ……とりあえず、七星武器全てがどんなモノなのかを聞きだそう。


「七星武器ってどんな武器があるんだ?」

「そうですね。そこから話をしましょうか」


 女王が俺に七星武器の詳細を語りだした。


「まずは杖」


 クズが所持する七星武器だな。

 これを最初に持ってくると言う事はなんだかんだで女王はクズに何か思い入れがある証拠だな。

 六個まで紹介して、そう言えば杖がありましたね、とか言うと思っていた。


 クズは……と辺りを見渡すと、部屋の隅に座ってこっちを見ている。

 誰を見ているんだ?

 どうせアトラだろうと思っていたが、目線が少し違う事に気付いた。

 ……なんでフォウルを見てんだよ。


「イワタニ様?」

「あ、ああ。続けてくれ」

「次に槌、投擲具、小手、爪、斧、鞭です」


 なんかパッとしないラインナップだな。

 まあ四聖がファンタジーって感じだから、多少色物っぽくなるのはしょうがないのか。

 特に最後。


「鞭ねー」


 なんか変わった武器があるな。

 宝石みたいな奴はどこに付いているんだ?

 柄か?

 盾の俺が言うのもアレだが、ちょっと弱そうだよな。

 まあ俺の知っている有名なゲームじゃ最強装備の一つにあるけどさ。

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