ちょっぴり大人な話が混ざるから。R15を加えました。
(俺は遂に卒業したよ、ペロロンチーノさん。ああ、それにしても·····この俺が卒業する事ができるなんて·····)
悟は、ちょっとした感動──本当は半端なく感動だが、少しカッコつけた──を覚え、そして今までに感じたことのない達成感を味わっていた。
(それにしても·····なんだか世界が眩しいぜ·····)
なんだか今までとは違う世界に感じる。まあ、実際には本来悟がいた世界とは違う世界にいるので、間違いではないのだが·····今回はそういう意味ではない。
ひとりぼっちでナザリックを維持していた前の悟は、言ってみれば色のない灰色の世界にいたが、ラナーと出会い明るい世界にそして今はオレンジ色に感じている。ラナーが初めてサトルに出会った時にある意味似ているのかもしれない。
(まるで縁のなかった事をこんな美しい女性を相手に·····まるで夢のようだな·····おっと見ちゃ駄目だ。止まれなくなるよ·····)
悟の隣にはラナーがいる。
「きゅう·····」
ベッドの上で目を回しぐったり突っ伏しているラナーの美しい裸身·····特に細い腰と小ぶりながらも、形の良いヒップが目に入り、悟の欲望がまた蠢きだす。
「目の保養って言い方よくするけど、今は駄目だ。見ちゃいけない·····ずっと見ていたいけど·····ヤバいな欲望が止まらないぞ·····完全に溺れそうだ」
見ないようにと優しくシーツをかけ、部屋の端まで吹っ飛んだふっかふかの布団を拾ってきて、はたいてからそっとラナーを包む。
その間ラナーは身動ぎ一つしない。どうやらこの分だと彼女は当分目を覚まさないだろう。
(うーん、調子に乗りすぎたかな·····)
ベッドサイドに腰掛けた悟は、ちょっぴり反省しながら、愛しい妻の美しい黄金の髪を撫でる。
「ちょっとイジメっ子しすぎたかなぁ·····でも、ラナーが悪いんだぞ」
そう呟きつつも、本当は自分が悪いとは思っていた。
悟が第三王女の婚約者としてこの世界に来てから二ヶ月が過ぎ、悟は今日·····正確には昨日だが、ラナーとの豪華ながらささやかな華燭の典──サラリーマンの感覚としては豪華すぎるが、王族にしては質素という感じらしい──を終え、そしてついに·····ついに初夜を迎えたのだった。
悟とラナー、相思相愛の二人は、これまでも幾度もベッドをともにしながら、超えなかった一線を遂にこの日超えたのだ。
もちろんこの二ヶ月の間に、ラナーからは何度も婚前交渉を誘われたのだが、悟は頑として首を縦には振らなかった。
「もう、サトルは古風なのね·····」
ラナーは不満げに頬を膨らませて可愛らしく抗議する。
(私はいつでもいいのになぁ。というより早くして女にして欲しいのに·····)
ラナーのモヤモヤは溜まっている。ここまでの気持ちにさせておいてお預けというのはなかなか苦しい。
「し、祝言を挙げるまでは、駄目だ·····」
「祝言ってなんですの?」
どうやら悟の言い回しは古風過ぎて通じないらしかった·····。
「·····結婚式までは駄目だ。そ、その後なら····················」
悟は真っ赤になって俯き、瞳は落ち着きなく宙を彷徨う。言葉にしたいが出来ない。
(まったく、サトルったら可愛いんだから·····)
ラナーの中で、ちょっと虐めたい願望が疼く。
「その後なら、なんですの?」
もちろん、わかっている。わかっちゃいるけど、言わせたい。そんなラナーの心理が働き意地悪く聞いてみる。
(さあ、言ってサトル)
ラナーは微笑みという名の最強のプレッシャーをかけ続ける。
「だ、だから·····えっと·····た、たくさん·····ダダダダダダ·····」
やっぱり言葉が続かない。
(ん、もう。サトルったら仕方ないわねぇ·····)
ラナーは言葉にさせるのは無理と判断し、リードすることにする。
「クスクス·····抱いてくださいますのね?」
「う、うん。もう、目一杯に! ラナーがやめてと懇願してもやめないくらいに! 何度でも!」
これが悟の本音だ。悟だって、眠れなくなるくらいに欲望は覚えているのだ。ただ、理性で無理矢理抑えているだけだった。
「楽しみにしてますわ」
ラナーは本当に楽しみにしていたのだが、悟に本心を言わせたことをちょっぴりどころかかなり後悔することになる。
だって悟は100レベルなのだ。
そう、悟の体力は
行為の一回の持続時間が長く、そして回復力まで異常に高かった。
そう、世の中の男性の悩みとは無縁の存在である。
なにしろ絶頂に達した後、僅かな時間で次に行けてしまうのだ。ほぼ一瞬に近い。体力もあるから休む必要がないのだ。
「ま、待ってサトル! ちょっと休ませてくださいませんか!」
甘い匂いの汗をかき息を切らせて懇願するラナー。悟はと言えば息も切れず汗一つかかず、涼しい顔だ。
「ダメだよ、ラナー。言っただろ? 懇願してもやめないって」
悟は優しく微笑むとグイッと腰を動かす。
「きゃうん! そんな·····ひどい·····」
いつもは悟を手玉に取っているラナーだが、この時ばかりは完全に悟に支配されていた。
「·····もう、嬉しいくせに。愛してるよラナー」
「う、うう·····私も愛してます。さ、サトル」
·····こんなやり取りを何回しただろうか。十を超えるまでは数えていたが、その後は覚えていない。
実際行為は20を超えていたが、ラナーも悟もお互いにそんなことはどうでも良くなっていた。
「ラナー、おやすみ。まあ、もう明るいけどね·····」
すでに朝を告げる陽の光が、室内に差し込み初めていた。
ちなみに明日からはハネムーンに出る予定だ。
「少し寝るか。ラナー、愛してるよ」
悟はそっとラナーを仰向けにすると優しく口付けた。