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【大相撲】

28歳力士がコロナ国内最年少の犠牲者に…糖尿病の基礎疾患があった勝武士「力士らしく最後まで闘った」

2020年5月13日 22時34分

勝武士さん=2017年2月

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 日本相撲協会は13日、西三段目82枚目力士の勝武士(しょうぶし)=本名末武清孝(すえたけ・きよたか)さん、山梨県出身、高田川部屋=が同日午前0時30分、コロナウイルス性肺炎による多臓器不全のため、東京都内の病院で死去したと発表した。28歳だった。葬儀・告別式は未定。協会員の新型コロナウイルス感染による死者は初めてで、厚生労働省によると国内で20歳代以下の感染者の死亡が報告されたのも初めて。現役力士の死去は2008年に急性骨髄性白血病で亡くなった元幕下若三梅以来。

 志半ばの28歳。国内では最年少、そして日本のプロスポーツ選手として初の犠牲者となった勝武士。どれほど無念だっただろう。

 相撲協会によれば4月4~5日に38度台の発熱が続いたが、師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)らが保健所へ電話をかけたがつながらず、医療機関も見つからなかったという。4日といえば都内の感染者数が118人となり初めて100人を超えた日。医療現場が逼迫(ひっぱく)していたとはいえ、早期のPCR検査・治療が受けられなかったことは気の毒でならない。

 入院できたのは発熱から4日後の8日。高熱に加え血痰(たん)も見られたため救急車を呼んだが、受け入れ先が決まったのは夜になってからだった。9日に症状が悪化し転院。10日にPCR検査で陽性が判明した。19日からは集中治療室(ICU)で懸命に闘ってきたが、糖尿病の基礎疾患もあったといい、感染の恐怖をあらためて思い知らされる結果となった。

初っ切りで会場を沸かせる勝武士さん(右)=2017年2月、両国国技館で

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 禁じ手などをユニークに紹介する「初っ切り」を2014年春巡業から担当し、各地のファンを笑顔にした。同部屋の恵比寿丸とのコミカルな初っ切りを2月の花相撲で披露したばかり。いつも節制に気を使い、165センチの小兵ながら徹底した突き押し相撲そのままに、性格は超がつくほどまじめで稽古も熱心。初っ切りは大銀杏(おおいちょう)で披露するため、髪を結う時間を考えて巡業中はいつも朝一で稽古場へ姿を見せていた。

 八角理事長(元横綱北勝海)も勝武士を失った悲しみは大きく、「1カ月以上の闘病生活、ただただ苦しかったと思いますが、力士らしく、粘り強く耐え、最後まで病気と闘ってくれました。今はただ、安らかに眠ってほしいと思います」とコメントを出した。

 同部屋の幕内・竜電を角界へ導いたのは勝武士だった。竜電は同じ山梨・竜王中学で勝武士の1年先輩。勝武士を中学までスカウトにきた高田川親方が、同じ柔道部の竜電を紹介された。竜電の心中を察すると言葉もない。

 相撲協会は協会員のうち希望者全員を対象に抗体検査を実施すると発表した。角界には力士だけでなく親方衆を含め、基礎疾患を持つ協会員は少なくない。大相撲は夏場所が中止になり、7月場所は同19日から東京・両国国技館で無観客での開催を予定している。「3密」状態の支度部屋に不安を抱える力士もいる。コロナとの闘いに全力で取り組んでいくしかない。

 

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