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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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最後の七星武器

 それで、保存状態は良かったんだけど、壁画の下の部分がごっそり風化して掠れている。

 見た感じ、柄にしか見えない個所だったんだろうけど……日本語だった。


 このように・・は・・


 と、僅かに読める程度しかないのはどういう事だよ。

 ただ、その鳳凰の攻撃の中で驚異的な物が一つあった……。


 一羽が倒れる絵と共に、もう一羽が膨れ上がる絵だ。

 その後、膨れ上がった一羽が破裂し、巨大な爆発で辺りが焦土となる絵に続いている。

 一度この攻撃を受けて勇者は撤退したみたいだ。

 そんな下りが描かれている。


 倒したんじゃないか?

 と、その時俺は思ったのだけど、爆発の絵をよく確認すると、破裂したのと同時に、二羽に分裂している。

 この攻撃で推測できるのは一羽を倒すともう一羽は自爆すると言う物だ。

 そして自爆と同時に二羽へ分裂して、再生する。


 ……霊亀の時にもあったよな。

 心臓を止めるだけでは倒せない。頭だけでも倒せない。

 どうやら今回は片方だけを倒すと、もう片方が強力な反撃をすると同時に再生するみたいだ。


 御丁寧に鳳凰の周りに星の絵が散りばめてあった。

 俺達の感覚だと、新品とかそういう意図が読み取れる。

 そこから先の壁画はヒビが割れていて読み辛い物ではあったが、二羽同時に倒すべきなのだろうと言う内容だった。


「霊亀は頭と心臓を同時に破壊する事で倒せた。おそらく、鳳凰も同様に二羽同時に仕留めないといけないようだ。失敗は一番強力な自爆攻撃の後に二羽が再生するみたいだな」

「やはり……ゲームとは違う。ゲームは共同HPで、片方を倒せば同時に倒れた」

「自爆攻撃ですか……しかも再生のオプションとなると厄介ですね」


 樹は無表情、棒読みで言うからやる気が感じられないなぁ。

 セリフから真面目に分析しているとは思うが。


「しかも片方は常に高高度にいるともなると自然と下にいる方に攻撃が偏りかねないな」

「そうなると、爆弾が上から降ってくる事になるのか……」


 しかも復活する。

 錬達の情報では鳳凰がかなり強いとの話だったが相当厳しそうだ。


「では樹くんと私は高高度の方を狙うので、お義父さんと錬くんは低高度の方を対処すると言うのはどうでしょう?」

「ま、そうなるよな。リーシアはその武器の性質から樹と一緒に高高度の方を頼む」

「はい」

「連合軍はどう致しましょう?」


 勇者だけで倒せる相手なら良いが、どうもその辺りは怪しいんだよなぁ。

 連合軍も参加するのなら使うべきだろう。

 となると、考えられるのは。


「遠距離攻撃が出来る奴、武器だったら弓か? 他に魔法が得意な奴は高高度の方を、それ以外は低高度の方を攻めて行こう。この辺りの作戦や隊列は女王を筆頭に隊列を考えてくれ」


 まあ、最大強化した勇者が四人も揃っているんだ。今度こそ楽勝で終わらせたい。

 これでまだ知らない要素があって困難にブチ当たったらたまったもんじゃないけどな。

 それに今回はある程度攻撃パターンがわかっているし、対策は取りやすいはず。

 もちろん過去の記述が絶対に正しいとは限らないから、一応念の為注意は怠らない様気を付けるとしよう。


「了解しました。訓練はどういたしましょうか?」

「そうだな……飛べる奴が鳳凰役をやって、隊列を組めばどうにかできるだろう」


 竜騎兵とかにさせるべきか?

 いや、フィーロとガエリオンが共に飛べるから、鳳凰の攻撃パターンを真似させて訓練させるか。

 火の粉や羽の攻撃、ブレスは疑似的に魔法でカバーさせればどうにか再現できるだろう。


「わかりました。ではこれから、連合軍との合同で鳳凰戦に備えた訓練を行います。勇者様方のご協力をお願いいたします」

「ああ」

「お任せください」

「頑張ります」


 その為に俺達はここにいる訳だしな。

 目標は被害者数を出来る限りゼロに近付ける事だ。

 今までのような後手に回る戦いは出来る限り避ける。

 これに尽きるな。



「では先ほど流したあの寺院を一目拝見いたしましょうか」


 鳳凰の壁画を見終わった俺達を女王とこの国の重鎮が案内する。


「あそこには何があるんだ?」

「現在、所持者が選定されていない最後の七星武器があるのですよ」

「ほう……」


 それは興味深いな。

 ぶっちゃけ、七星武器ってどんなモノなのかを俺達は全く知らない。

 リーシアの持つ不思議武器はどうやら違うんじゃないかって話だし、クズは杖を持っている所を見た事が無い。


「なんであそこまで列が出来ているんだ?」

「勇者様方はお分かりになりませんか?」


 まあ……大体の事は想像できる。

 七星武器はこの世界の人間も所持する事が出来る可能性のある伝説の武器らしい。

 もちろん、異世界から召喚された奴が手に入れる事も出来るらしいけどさ。

 我こそは七星の勇者であると、封印された武器を手にしたくて並んでいる訳か。


 これだけ人気があると商売に使えそうだよな。

 一回銀貨一枚、みたいな感じで。

 ……この世界は勇者崇拝が盛んだから、そういう商売は反感を買うのか?


 と、長蛇の列の脇を通って寺院の奥に行く。

 すると、列の先に……寺院の真ん中にある壁……この場合はロゼッタストーンに埋め込まれた七星武器がある。

 その武器を列の先頭に居る奴が触れ、取り出そうと試みている。


「ぐぬぬぬ……」


 連合軍の兵士が、顔を真っ赤にして必死に取り出そうとするその姿。


「はい。次の人」


 ガックリと肩を落として挑戦者は列を抜けて来た道を帰って行く。

 ……選ばれるってそんなに嬉しい事なのか?

 盾の勇者として選定されてしまった俺は、選ばれた事の苦しみを知っている。

 お前等は幸運なんじゃないか? と今になって思う俺はきっと傲慢でワガママなのだろうな。

 と、思いつつ七星武器を確認する。


 ……小手だ。

 そういや鳳凰を封印した七星勇者は小手だったらしいし、その地にあるのなら不思議じゃない……のか?

 この理屈だと霊亀の封印された町にもなきゃいけないはずだが、どうなんだろう?


「なあ女王、この小手はなんでここにあるんだ? フォーブレイとかが回収に来ないのには理由があるのか?」

「一昔前はこの国はそれはもう繁栄を極めていたのですよ。小手の勇者の伝説によって」

「じゃあ霊亀の方は?」

「他国から来訪した勇者が封印したそうですよ」

「そう言う事ね」


 と言う事は割と鳳凰は新しい方の伝説だったのか?

 ま、根掘り葉掘り調べるのが面倒だから良いか。


 ……見た感じ、かなりシンプルな小手だ。グローブとも言えるのかな?

 スモールシールドの様なシンプルさがある。


 小手の中心にはやはり宝石のようなモノが嵌っている。

 勇者の武器は大抵これが嵌っているんだろうな。

 初期の小手はこんなモノなんだろう。


「これが最後の七星武器?」

「はい」


 実物を見るのは初めてだけどー……何処かで似たような物を見た覚えがあるのは何故だろう。

 リーシアの武器って半透明で何か違う気がする。

 もっと、見ていると何か……力強い物を感じた。


「で、新たな所持者をここで待っていると」

「そうですね。この国への来訪者の大半はこの小手を目当てに来ます」

「へー……」


 家の奴隷共にも挑戦させてみよう。

 これでアトラとかが手に入れたら滑稽だな。

 資質は高いから手に入れられるかもしれないし……。

 ただ、凄い並んでる。


「この列っていつ途切れる?」

「昼間、開放されている間はずっとですね」


 すっげー……どんだけ人気あるんだよ。


「このご時世ですからね。我こそはと冒険者も挑戦いたしますので」

「じゃあさ、無理を承知で頼みたいんだけど、夜に俺の所の連中に挑戦させられないか?」

「交渉をしてみましょう。イワタニ様と勇者様方は訓練が始まるまで自由にしていてください」


 女王は国の重鎮を連れて、城の方へ行ってしまった。

 その結果、夜、特別に俺の所の奴隷に優先的に挑戦する事を許可してもらった。

 言ってみる物だな。

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