世界各国の新型コロナ対策、明暗分かれた原因は?

7カ国の再生産数「R」の推移から見る、コロナ対策成功の鍵

2020.05.10
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ルールに従う

 初期にCOVID-19が流行した地域では、検査、接触者の追跡、隔離などの封じ込め対策で、多くの問題が発生した。このため、アフリカなど、最近になって新型コロナに襲われた国は、「社会的距離」「学校閉鎖」「在宅勤務」などの社会的制限を即座に実行に移した。

「多くのアフリカ諸国は、すぐに制限を実施しました」とエル=サドル氏は話す。同氏が所属するICAPは、アフリカ諸国との仕事を20年近くしてきた。「西欧や米国で起きたことを見て、封じ込めはうまくいかないと、アフリカ諸国は確信したのです」

 しかし、こうした社会的制限も、国民が義務や公式ガイドラインに対応しなければ、効果が異なる可能性がある。これは、その国の文化が大きく影響する要素だ。2008年のある調査では、ヨーロッパ8カ国の7000人以上に、キスや握手から対面での会話まで、日々の社会的接触に関して日記をつけてもらった。その結果、社会的交流の違いにより、特定の国では、呼吸器ウイルスが急速に拡散する可能性が高いと予測された。

「病気の感染につながるような接触者数は、イタリアでは1日平均20人だったのに対し、ドイツでは8人でした」とグラスリー氏は話し、この傾向はCOVID-19にも当てはまると考えられると付け加えた。

 GoogleやAppleをはじめとする巨大IT企業が、スマートフォンの匿名化したデータの共有を始めたため、公衆衛生の研究者は、制限命令に対する世間の反応を評価できるようになった。こうしてわかったことの1つは、人々が緊急事態宣言を気にかけず行動するように見えることだ。

 ノースイースタン大学のベスピニャーニ氏のグループが、米国の主要都市における移動データを調べたところ、市、州、国家がCOVID-19の緊急事態宣言を出した後でも、ほとんどの人が外に出ることをやめていないことがわかった。多くの都市で、徐々に外出や移動が減るが、通常時の50%未満に減少するのは完全な外出禁止令が出された後だった。

「私たちが個人として何をするのか。私たちの行動が、感染拡大の傾向や軌跡を変えられるのです」とベスピニャーニ氏は話す。

参考ギャラリー:新型コロナ、都市封鎖したイタリア、ミラノの隔離生活 写真12点(画像クリックでギャラリーへ)
2020年2月23日にミラノが封鎖されたときは、「休暇をもらった気分でした」と話すアーティストのダニエル・ヴェロネシさんは、同じくアーティストのアナ・モストシさんと一緒に、倉庫を改装した家に住んでいる。ところが、日が経つにつれて「だんだん不安になってきました」と語る。(PHOTOGRAPH BY GABRIELE GALIMBERTI, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 興味深いことに、どのリーダーのメッセージが、人々の行動を変えることに成功したのかに関しても、移動データから明らかになっている。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、2月下旬から定期的にFacebookのライブ動画で国民に率直に話しかけたことで称賛された。実際、1カ月後に封鎖を実施した際、移動が激減し、政府の政策が幅広く支持されていたことがうかがえる。

 国がこのパンデミックを乗り越えるうえでは、わかりやすく共感できるメッセージが基本になるだろうと、エル=サドル氏は言う。ワクチン開発に時間がかかり、自然免疫が弱まると、世界の多くの地域でウイルスの複数の波が発生し、感染者の増減が繰り返されるかもしれない。つまり、封じ込め期と社会的制限期の間を、行ったり来たりすることになる。

「必要なのは、非常に明確かつ一貫したメッセージです」とエル=サドル氏は語る。「人々は、こうしたメッセージを渇望しています。明快なものを求めているのです」

文=NSIKAN AKPAN/訳=牧野建志

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