世界各国の新型コロナ対策、明暗分かれた原因は?

7カ国の再生産数「R」の推移から見る、コロナ対策成功の鍵

2020.05.10
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 ただ、こう話す同氏も「検査は万能ではない」と付け加える。というのも、症状が現れることなく感染する事例が多発しているからだ。このため、大量の調査員を動員したり、スマートフォンのアプリを開発したりすることで、「接触者」(感染者に接触した人)追跡の網を広げる新しい取り組みが多数登場した。広範な検査と積極的な接触者の追跡で、感染拡大を抑えた国もある。「接触者が見つかったらまずは隔離し、解放後も安全になるまで継続的に検査する必要がある」とグラスリー氏は言う。

 グラスリー氏によれば、「韓国では、携帯電話のアプリを利用して接触者を追跡しました。この計画が効果を出すには、アプリに関する法令などの決まりが重要です。利用を法的に強制した例もあります」

 新型コロナ封じ込めに成功した国もあるが、そうした例がどの国にも当てはまるというわけではない。たとえば、ニュージーランドは4月に、同国からウイルスを事実上排除したと発表した。「しかし、米ニューヨーク市など、欧米の多くの人口密集地域とニュージーランドでは事情が違いますから」と話すのは、資源の乏しい国々の保健制度の強化に取り組む米コロンビア大学のICAPの所長を務める疫学者のワファア・エル=サドル氏だ。

 ニュージーランドの全人口は490万人で、英国ロンドンの約半分だ。この人口が、ロンドンの170倍という土地に暮らしている。世界銀行によると、国外からニュージーランドに訪れる観光客は隣国のオーストラリアの半分以下だ。そもそもニュージーランドでは、ほかの国々を襲ったような規模で新型コロナウイルスが侵入していない。またニュージーランドでは、新型コロナに対する勝利宣言以降も、わずかだが新たな感染者が報告されており、完全な意味で封じ込めたとも言えない。

「ニュージーランドやドイツは、どうすれば感染拡大を抑制し、新たな感染を持続的に減少させることができるかを実証しました」とエル=サドル氏は話す。「ただ、制限を緩和し始めた後に何が起きるかを見ることも必要です」

緩慢だった介入

イタリア
様々な理由で事態を悪化させた国々もある。遺伝子解析によると、最初の感染者が記録された1月31日よりかなり前に、COVID-19はイタリアに上陸していた。2万6977人もの死者を出したが、社会的介入により2万4816〜3万3326人の命が救われた。実効再生産数は、3.7から0.6に低下した。

英国
英国とスペインでは、最初の感染者が記録されたのはイタリアと同じ日だったにもかかわらず、検査や社会的介入が遅れた。英国では、COVID-19により2万1092人の死者が出たが、1万7646〜2万4872人の命が救われた。実効再生産数は、3.9から0.6に低下した。

スペイン
スペインでは、2万3190人の死者を記録し、1万8851〜2万6170人の命が救われたと見込まれる。実効再生産数は、4.5から0.6に低下した。

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