Starting handの表の次に抑えておくと役立つ知識は「Outs(アウツ)」と「Odds(オッズ)」という概念です。
<アウツ>
アウトとは、「自分の手を強くするカード(の枚数)」を指します。例えば、自分の手が4・5で、フロップに6・7が出ていた場合、あと3か8が来ればストレートができることになりますが、3も8も残り4枚ずつあるので、この場合、(ストレートになるのに)「8アウツ」あると言います。フロップに出たのが、6・8だった場合には、ストレートを引くには7×4枚しかないので、この場合は「4アウツ」。自分の手が2枚ともスペードでフロップにスペードが2枚出ている場合には、あと1枚スペードが来たらフラッシュが完成することになります。スペードのカードは全部で13枚で、自分の手2枚とフロップに出ている2枚を引くと残り9枚のスペードがあることになるので、この場合は、「9アウツ」です。
なぜアウツの概念が重要かというと、アウツの数で自分が強い手を作ることに成功する確率が大体計算できるからです。厳密に計算すると、先程の”両面待ち”のストレートがターンでできる確率は、8/(52-5)≒17.0%、リバーまででできる確率は、1-(52-5-8)/(52-5)×(52-5-1-8)/(52-5-1)≒31.5%となります。したがって、フロップが開いた時点でストレートの両面待ち(「オープンエンドストレートドロー」といいます。)の場合、ターンでストレートができるのは、5.9回に1回、リバーまで歯を食いしばって着いて行けば、3回に1回はストレートができることになるというのが分かります。
アウツごとの確率は次のとおりです。
アウツ ターン(%) リバー(%) 代表的な待ち手↓
20 42.6 67.5
19 40.4 65
18 38.3 62.4
17 36.2 59.8
16 34.0 57
15 31.9 54.1 ← オープンエンドストレートフラッシュドロー
14 29.8 51.2
13 27.7 48.1
12 25.5 45 ← インサイドストレートフラッシュドロー(間チャン待ちのストフラドロー)
11 23.4 41.7
10 21.3 38.4
9 19.1 35 ← フラッシュドロー
8 17.0 31.5 ← オープンエンドストレートドロー
7 14.9 27.8
6 12.8 24.1
5 10.6 20.4
4 8.5 16.5 ← インサイドストレートドロー
3 6.4 12.5 ← ペア系
2 4.3 8.4 ← スリーカード
1 2.1 4.3 ← フォーカード
全部覚えるのは、困難かつその必要もないので、私は、大体アウトの数の4倍がリバーまでにその手ができる確率と覚えています。
<オッズ>
「オッズ」という概念がなぜ有益かというと、自分が相手のベットにコールする際の判断材料になるからです。
例えば、コイントスで表裏を当てたら賭け金を1.5倍にして返すというゲームがあった場合、このゲームをすることは合理的でしょうか。表か裏か当たる確率は1/2なのに、当たった場合でも賭け金は、1/2の逆数である2倍より少ない数しか返ってこないので、長期的には必ず損をするようになっており「割りに合わない」ことになります。
同じことがポーカーでも言えます。当たる確率が3%しかないのに、ポット(勝者が獲得する積み上がった賭け金)の半分の額をコールすることが「割りに合う」でしょうか。ここで割りに合うか合わないかを判断する際に非常に役に立つのが「オッズ」又は「ポットオッズ」という概念です。
「ポットオッズ」とは、ポットの大きさとポットを得るための勝負を継続するために必要なベット額の大きさの比率のことを言います。(David Sklansky, The Theory of Poker, Two Plus Two Publications (1987))例えば、400ドルのポットで相手が100ドルベットしてきた場合、コールする場合のポットオッズは、4対1です。このとき例えば、8アウツのオープンエンドストレートドローができていて、ストレートができればポットを取れると考える場合、ストレートができる確率は、31.5%。約3分の1の確率でコールの5倍のリターンが得られるわけですから、この場合、コールすることが合理的と言えるというわけです*1。同じように考えると、ポットが例えば100ドルしかなかった場合に相手が100ドルベットしてきた場合は、リターンが2倍しかないので若干割りに合わないということになります。
そうは言っても、例えば、上記の場合ストレートができてもフラッシュやフルハウスができるようなボードになったら、勝てない可能性も出てくる訳で、状況に応じてこまめに考える必要があります。
オッズに関してもうひとつ有益な概念として、「インプライドオッズ(implied odds:推定オッズ)」というものがあります。インプライドオッズとは、現時点のポットの大きさではなく、勝負が終わった時点に予想されるポットの大きさを基に計算されるオッズのことです。例えば、自分が強いAハイフラッシュドローなどの強いドローハンドを持っていて、コールしてくるプレイヤーが大勢いるテーブルの場合、現時点のポットが80ドルでベットが100ドルだった場合、9アウツ・35%でリターンが1.8倍のため、現時点では割りに合いませんが、2人ほどコールしたり、またリバーまでコーラーが出てくると予想できる場合には、最終的に獲得できるポットのサイズが、500ドル以上に膨れ上がることが予想できるので、そのポットの大きさを基に計算されるオッズのことをインプライドオッズといい、アグレッシブなプレイヤーは、現時点のポットオッズが合わなくてもインプライドオッズに合うと判断してコールすることもあるのです。
*1:シマダ注:厳密にはターンでストレートが完成しない場合には、更に相手にベットされるので、リバーでストレートができるオッズのみを計算してコールが合理的かどうかを判断するのは微妙です。ただし、ターンでストレートができる確率は17%で、約5.8分の1の確率でコールの5倍のリターンが得られるわけですから、まあターンでコールするのは合理的と言えるでしょう。これがフロップでストドロorフラドロが見えるときにポットの3分の2〜4分の3くらい打つべきとされる理由です。