新型コロナウイルスの感染拡大で困窮する学生への支援策が国会で議論されている。現金給付などが第二次補正予算案に盛り込まれる方向だ。学生の未来を守るため力強く素早い対策を望みたい。
コロナ禍で飲食などのアルバイトが激減し、経済的理由で退学を余儀なくされる学生が増えるのは確実だ。学費の無償化などを求めて活動する学生による団体が三百十九の大学、専門学校などを対象に調査を実施。その結果、約千二百人の学生や大学院生のうちほぼ二割が「退学を考えている」と回答している。
安倍晋三首相は十一日の衆院予算委員会で「速やかに追加的措置を講じる」と述べた。政府・与党内では一次補正予備費を使った困窮学生への十万円支給案が浮上している。もし一次枠で支給するとしても、二次補正でも当然、支援策を急いで策定すべきだ。
立憲民主党など野党四党は、授業料半減に応じた大学などに対する免除分の負担や、バイト収入が激減した学生への二十万円支給を盛り込んだ支援策を提案している。与党側にこれ以上の手厚い案がないなら、審議時間を短くし素早く支援を実施するためにも野党案を成立させるべきではないか。
さらに大学などは今、オンラインでの授業をせざるを得ない状況だ。かなりの額の設備投資が必要で、こうした授業形態への公的支援も充実させるべきだろう。
学生の就職活動をめぐり大企業にもくぎを刺しておきたい。一部で採用数を絞る動きが出始めているが、これは納得がいかない。
国内に限らず経済の見通しが急激に不透明感を増しているのは確かだ。特に運輸や観光関連企業の決算が著しく悪化するのは理解できる。だが業種によっては影響が軽微なケースもあるはずだ。
国内企業の二〇一八年度の内部留保は約四百六十三兆円で七年連続で過去最高を記録した。この背景に政府・日銀による金融緩和や株買い支えがあることは言うまでもない。決して企業の自助努力だけでは生まれなかった数字だ。
日本社会は一九九〇年代中頃以降の「氷河期」といわれた就職難の悪影響をいまだに受けている。これが当時の経営者の視座の低い採用姿勢に起因することは否定できないだろう。
ここは大企業を中心に採用を抑えず氷河期の再来を防ぐのがビジネスの正道ではないか。未来を託す学生たちを救うための行動を多くの経営者に強く求めたい。
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