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【社説】

検事の定年延長 ツイートの抗議に耳を

 「#検察庁法改正案に抗議します」のSNS投稿が四百七十万件に達した。政権が検察人事に介入しうる法改正への異議申し立てだ。コロナ禍のどさくさ紛れの早期成立を与党は断念すべきだ。

 会員制交流サイト(SNS)のツイッター上で、九日から十日にかけて、検察庁法の改正案に抗議意思を示すツイートが相次いだ。市民ばかりか、政治的な発言を控える傾向がある芸能人らも投稿した。俳優の浅野忠信さん、演出家の宮本亜門さん、小泉今日子さんとみられる投稿もあった。

 「三権分立が破壊される改悪です」「護符としてモンテスキューの肖像を貼る」-そんな著名人の投稿は市民を巻き込んで、うねりとなった。十日午後十時時点で四百七十万件超。コロナ禍で集会ができない現在、SNSを使った「ネット・デモ」の様相である。

 六十三歳の検察官の定年を六十五歳にすることへの異議ではない。政権が認めた人物に限り、六十三歳以降も検事正や検事長などの役職を続けられ、定年延長も可能になる特例への異議である。この規定で政権が準司法機関たる検察をコントロールするようになり、三権分立が危うくなる。そんな危機感が広がったのだ。

 契機は八日の衆院内閣委員会だった。野党側が法相の出席や法務委員会との連合審査を求めていたのに、与党側は拒否。野党欠席のまま実質審議に入った。

 同法案は国家公務員法改正案などとまとめた「束ね法案」として提出され、内閣委での審議となった。法務・検察の根幹の法なのに法務委で審議せず、法相が答弁しないのは明らかにおかしい。

 そもそも黒川弘務東京高検検事長の定年を延長する閣議決定をめぐり、安倍晋三首相は「解釈の変更」と述べた。だが、解釈とは条文から複数の読み方ができる場合のみ可能となる。

 検察庁法には国家公務員法を適用しないことが確定している以上、読み方は一つで、解釈変更はありえないはずだ。

 政権の都合でルール変更が可能なら、その政権は事実上、法律に拘束されていないことになる。解釈変更という実質的な法改正を政権自身が行っているのに等しい。これは「法の支配」が崩壊している姿である。

 内閣委では与党側が近日中に強行的に法案採決する可能性がある。緊急事態宣言の中、火事場泥棒的な法案の成立は阻止せねばならない。

 

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