「チーバくん」の生みの親。2007年、千葉県から国体のPR用に採用され、11年、マスコットキャラクターへと登用された“我が子”が今年で10周年となり、「感慨深い」と話す。活躍ぶりには「できる子を見る思い。うちの子、すごいって」と笑顔。
チーバくんが県民をはじめ、多くの人に親しまれていると実感する場面は、イベントやサイン会だ。
「イベントでは子どもたちがわっと集まってきてくれる。サイン会では県外の人からも『チーバくんを描いて』と声を掛けられる。県外の人がですよ」
市川市で生まれ育った。地元の図書館に足しげく通い、「クマのプーさん」など動物が登場する挿し絵入りの本を読みふけった。動物好きになった原点は「家でペットにインコを飼っていたから」。読書の一方、動物の絵を画用紙に夢中で描く少女だった。
長じて動物を得意分野とするイラストレーターになった。手掛けた作品にはイヌ、ネコ、ゾウ、パンダ、クマなどがあり、中でも交通系ICカード「Suica」に彩りを添えるアデリーペンギンは有名だ。JRを利用する人は日常的に目にする。「直立していて人間を投影できる面白さが好き」。ペンギンには昔から興味があった。
仕事の魅力は「実物のかわいさを抽出し形にできること」。ありのままの雰囲気をうまく表現することを心掛ける。半面、依頼者が求める内容と自身の感覚が少しずれている時は苦労するという。
プレゼンテーション勝負となった千葉国体のイラスト。これまでの動物作品とは違う手法で創作した。
「千葉らしいものは何だろうから着想に入った」。海と川に囲まれた県内の地図を眺めていた時、ひらめいた。「千葉の形が丸ごとキャラクターになる。これがふさわしいと横(向き)から作った」。コンセプトも「千葉県に住む不思議ないきもの」で特定の動物ではない。色使いは当初、黄やオレンジ案もあったが、スポーツにぴったりの情熱の赤に決まった。
チーバくんは、県内各地のご当地キャラと共演するなど忙しい。県の要望に応え、イラストのチーバくんのポーズも毎年増え続け、新聞紙を広げたり、ハートマークを抱えるなど200点以上に上る。
現在、横向きのチーバくんの体の部位で住まいを伝えるコミュニケーションも県内の女性の間で人気となっている。「私はチーバくんのベロの辺り。市川だから」といった具合だ。
そんな話題に触れると、「作者冥利(みょうり)に尽きる。私が思っていた以上に県の形がキャラクターになった面白さは伝わっている」と目を細める。
親が気になるのは子どもの行く末。「一過性のものではなく長く愛されてほしい。自分より長生きしてくれたら素敵」
◇坂崎千春(さかざき・ちはる)さん 市川市出身。東京芸術大卒。文房具会社のデザイナーを経て1998年からフリーのイラストレーター。座右の銘は「沈思黙考」。1人になり、静かに過ごす時間を大切にする。「最近は持ちにくくなっていますが」と苦笑い。趣味はフィギュアスケート観戦。49歳。
◇来月、市川で大型個展
坂崎千春さんの大型個展「さかざきちはる おしごと展」が7月1日、市川市真間の市芳澤ガーデンギャラリーで始まる。5年ぶりの企画。大人気のペンギンシリーズや10周年を迎えたチーバくんの新しい表情など150点超のイラストや絵本の原画を紹介する。
9月24日まで。一般500円、中学生以下無料。問い合わせは同ギャラリー(電話)047(374)7687。