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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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損害賠償

 うう……何だろうか。

 苦しくて、それでいて頭がおかしくなりそうな悪夢をずっと見させられているような感覚がずっと続いている。


「ナオフミ様!」


 ラフタリアの声にハッと意識が覚醒し、夢から覚めるかのような錯覚と共に目を開く。

 するとそこには心配そうに俺を抱き起こすラフタリアが居る。


「ここは……?」


 辺りを見渡すと、錬や樹、リーシアと様々な面々が海の見える廃墟の様な場所で俺たちを見つめている。

 確か、俺が覚えているのはメルティの屋敷だったはずなんだが……。


「ラフタリア、ここは一体どこだ? 俺はどうして倒れて……確かカースシリーズが……」

「ナオフミ様です! 今、ここに居るのは確かにナオフミ様です!」

「は? どういう事だ?」


 俺は起き上がって再度辺りを確認する。

 潮騒の音が耳に響き、ここが村では無いのは容易く理解できる。

 見た感じだとサディナの秘密基地がある島……のはずなのだが、どうも周りの様子がおかしい。

 まるで何かが崩落したかのように廃墟と化している。

 これは植物か?

 そこで目に入ったのは、近くの檻に入れられたフィーロ、アトラ、キールの三人。


「なんでフィーロ達が檻に入れられているんだ?」

「覚えておられないのですか?」

「何が?」

「はぁ……フィーロ達は騒ぎに便乗して暴れた罰として檻に入れています」


 なんか三人共、ショボーンと落ち込んでいるかのようで、こっちをみている。


「ラフー」

「ん?」


 足元をみると、なんか小さなアライグマと狸を混ぜたような変な魔物がいる。

 大きさは、子犬くらいか?

 なんだろうか?


「ニセモノー」


 と、ラフタリアを指差して喋る?


「黙りなさい!」


 ラフタリアが珍しく怒鳴ってその魔物を追い払う。

 その声に魔物は散るように逃げ出して行った。

 なんだ?


 ん?

 ラトが俺を思いっきり睨んでいる。

 その後ろにはフィロリアル形態のフィーロよりも大きな狸のようなアライグマの様な、さっきの魔物をそのまま大きくしたような魔物が佇んでいる。

 眠そうな顔をしているな。


「ラフタリア、何があったんだ?」

「本当に、覚えておられないのですか?」

「ああ」


 なんとなくイヤな予感がしつつ、俺は頷く。


「詳しく教えて欲しい。何があった」

「本当に尚文なんだな?」


 錬が尋ねる俺に聞いてきた。


「何を今更……俺の偽者でも出たのか?」

「まあ……あれは偽者と呼ぶべきなのかなぁ」


 そういや、妙にスッキリした感じがする。

 ラースドラゴンと戦った時の様な微妙な爽快感。

 ……なんか激しくイヤな予感がする。


「えっと……ナオフミ様は呪われた盾に意識を乗っ取られていたようなのです。その影響で奴隷紋を使う事が出来なかったようで……それが幸いだったんですけどね」

「……そうか」


 薄々そんな気がしていた。

 意識を失う前に変なカースシリーズが出現した所までは覚えている。

 新・七つの大罪シリーズだったか。


「俺は一体何をしたんだ?」

「何をした、ですって!?」


 ラトが眉を吊り上げて言い放つ。

 なんだ? あのラトがここまで怒るって何をしたんだ?


「ああ、詳しく話せ」

「侯爵は事もあろうに私の研究所を占拠して、この島に勝手に移転した揚句、私の大切なミー君を勝手に改造したのよ!」

「ラフー」


 ラトの叫びに後ろに居た巨大アライグマ? が、鳴いた。


「ミー君って確かお前の大事にしていた試験管に入ってた魔物だよな。それを改造した?」

「それだけじゃありません。この世界は浄化すべきなんだと怪しげな研究をした揚句、世界征服を宣言したんですよ」

「何!?」

「……幸い、ギリギリの所で皆さんが止めてくださったので大事には至らなかったのですけど」

「そうか」

「メルティちゃんが盾の勇者様は波の予行練習を行うために特殊な力で魔物を放っていると宣言したので事なきを得ました。シルトヴェルトの使者達も協力してくださいました」


 と、ラフタリアは説明しながらフィーロ達を睨みつける。

 フィーロがビクッと怯えるように震えたかと思うと、俺の方に手を伸ばして呟いた。


「ごしゅじんさまのあの笑顔……フィーロ守りたかったの」

「ええ、例え何があろうとも落日のその日まで私はお供しますわ」

「兄ちゃんと遊んでいた方が強く楽しくなれたんだ」


 と檻に入った三人がそれぞれ漏らす。

 あの笑顔って、それは偽者だ。守るな。


「ごしゅじんさま。ずっとラフタリアお姉ちゃんの事をしゃべってたよ」

「なんでラフタリアを?」

「最初、おかしな言動をしながら私に近づいて来て、一緒に来いと言ったんですよ。ですが私が断ると、無理矢理に迫ってきて、なんかおかしいと突き付けたら私を偽者と言い出して、挙句正体を現して逃げました」

「おかしな言動?」

「まず一人称がワシでした」

「そりゃあおかしいな」


 ワシってなんだよ。

 意味がわからない。

 いや、今までの例を見るにカースに犯された奴は意味がわからないけどさ。

 つまり俺もその例に漏れず、頭のおかしな事をしていたと。


「後は、この世界は腐っている。波で滅ぶ前に一度浄化すべきじゃとか言って私に協力を要求したんです」


 空からガエリオンに乗った谷子が降りてきて補足する。


「で、あのババアの研究所を乗っ取ったかと思うと魔物舎の魔物をみんな連れてって、村の子もついてくる子は一緒に来いって攫って行ったの」

「果てしないな」

「フィーロもアトラちゃんもキールくんも便乗してナオフミ様に付いて行って、挙句、サディナ姉さんの家の上にバイオプラントを改造して作りだした巨大な城を建築しました。確かキャッスルプラントと名付けて見せ付けてましたよ」


 すげぇ……呪われた俺は何を考えているんだ?

 考えられるのはこの世界の王族とかその他諸々に感じた事をストレートに行動した……という事か?


「そして巨大な結界を構築し、その結界の守り手にフィーロ達を人体改造して配置しました。私達は必死にナオフミ様を元に戻そうと頑張ったのですけど、おかしくなったナオフミ様はあの手この手で攻めてきて……」


 往生際の悪い奴だったんだな。

 と、他人事みたいに言いたい。


「ところで俺を倒すまでどれだけ掛ったんだ?」

「一週間と少しですよ」

「なん、だと!?」


 ちょっと待て、あれから一週間以上も経過しているだと!?

 俺はステータス魔法の中にある、次の波までの日数を見る。

 うわ!

 本当だ。後二週間と半分しかない。


「……ちょっと待てフィーロ達を人体改造した?」

「はい。キール君」


 ギロリとラフタリアがキールを睨みつけるとふんどし犬がびくりと尻尾を丸まらせて怯える。

 が、意図を察したのか、キールが変身する。

 ……頭が三個になった小さな子犬。ケルベロス?

 まあ、元がキールだからケルベロスというか可愛くけるべろすってひらがなで言う感じ。


「え?」

「カッコよくしてくれって言ったら兄ちゃんがしてくれたんだ!」

「幾らなんでもそれは無いだろ」


 人体改造だぞ、しかも元に戻れるのか?

 呪われた俺はコイツ等を使い捨てるつもりだったのか?


「兄ちゃん。言葉使いは変だったけど、俺の事を心配してたし、苦しくない。無理の無い範囲で出来るようにしてくれたんだ!」


 凄く悔しそうにキールが涙を流しながら言い放っている。

 随分と慕われていた様だが、俺であって俺じゃないし、身に覚えが無い。

 他人を褒められている気分だ。


「あの方はナオフミ様であってナオフミ様ではありません!」


 ラフタリアに怒鳴られてキールは黙りこんでしまう。


「フィーロはねーごしゅじんさまに飛べるようにしてもらったのー」

「は……?」


 檻に入った人型のフィーロが羽をパタパタと羽ばたかせると、キラキラと何かの残滓を出しながら浮き出した。

 本当に飛んでる……。

 あのデカイ図体でどうやったら飛べるんだ?

 どう考えても地面を走る様に体が作られているフィーロが飛んでいる事が不自然極まりない。


「ふおおおおお! フィーロたん!」


 元康が感極まって檻に突撃してくる。


「むー! 来るな!」


 凄くイヤそうな顔でフィーロが拒み、近付いて来た元康をアトラが突いて追い払う。


「アトラは?」

「私はダメだと言われてしまいました……改造できないと」

「そうか」


 フィーロとキールにこれだけの魔改造をしてしまったと言う事は……俺はイヤな予感がしつつラフタリアを見る。


「他の連中は?」

「……研究所で療養中だった亜人奴隷達は尽くナオフミ様の実験体になり――」


 ギャアアアアアアアアアアアアア!

 取り返しのつかない蛮行をしてるじゃねえか。

 さすがにそこまで非人道的な事をするつもりなんて無い。


「みんなを完治した後、本人達の希望で改造してもらい、私達に襲い掛かってきました」

「……はい?」

「今では皆さん。フィーロ達のように制裁を受けてから保護されています」

「あ、そう」


 本人達が希望してって……何があったんだ。


「おかしくなってもカリスマがあるって凄いな。みんな必死に尚文を守ろうとしていたぞ」

「……そうですね。尚文さんはなんだかんだでみんなに慕われているのでしょう」


 錬と樹が答える。

 樹は無表情だけど、なんか俺が知る樹よりも変化があるような気がする。

 考えてみれば一週間も経っているんだから、呪いが回復したのか?


「イツキ様」

「大丈夫ですよ。尚文さんの正義で動いていたと言う事くらい今の僕なら分かります」

「それで、さっきから気になっていたんだが」


 心配そうに廃墟の影からこっちを覗きこむアライグマと狸を混ぜたようなあの魔物達は何なのだ?

 どうも個性的に色々な種類の魔物が居るみたいだ。

 そのどれもが必ず、アライグマと狸を混ぜたような造形をしつつ、見覚えのある名残がある気がする。

 俺は奴らを指差すと。


「侯爵を慕っていた魔物達のなれの果てと新しく作られた新種の魔物に決まっているじゃない。アレは第一世代のラフ種よ」

「はい!?」


 え? あいつ等、俺の所に居た魔物共なの!?


「うん。みんなをあんな風にして、私達に喧嘩を売ってきたの」


 谷子が忌々しそうに言い放つ。

 思いっきり根に持ってる!

 まあ魔物共を相当大事にしていたから、文句は言えないが。


「というか、こいつ等、どうしてこんな姿に?」


 なんとなくラフタリアの耳や尻尾に似てるが?

 鳴き声も「らふー」とか「たりー」や「りーあー」など、繋げるとラフタリアになるような感じだ。

 そのどれもがラフタリアを指差すと条件反射的に。


「ニセモノー」


 と、鳴いている。

 俺がそれを尋ねるとサディナがノシノシと歩いて来て、ケタケタと楽しそうに笑いながら答える。

 ……なんでお前まで茶色? ふわふわになってるぞ。


「ラフタリアちゃんに拒まれた変なナオフミちゃんが、ラフタリアちゃんが裏切るはずがない。アレは偽者なんだ。本物のラフタリアちゃんを蘇らせるって何故かラフタリアちゃんの髪を使って色々とやり始めたのよ」

「なんで!?」

「さすがにお姉さんもわからないわー。スパイ活動してたお姉さんはナオフミちゃんに見破られちゃってこんなふうになっちゃうし」

「大丈夫なのか?」

「ラトちゃんの話だと治せるらしいから大丈夫ー」


 むう……おかしくなった時の俺はいったい何を考えていたんだ?


「で、結局、あの魔物共はどうするんだ?」

「本人達が望んでいるからねー……このまま種として確立していくんじゃないかしら?」


 イヤそうにラトが答える。


「ちなみにおかしくなった侯爵はラフ種、タリ種、リーア種、ラフタ種、タリア種、とか色々呼び名を付けていたみたいよ」


 マジでおかしくなった俺の考えが理解できない!

 こんな訳のわからない生命体を作ってどうするつもりだったんだ。


「ちょっと待て、さっき第一世代って言ったよな。第二世代とかいるのか?」

「当たり前じゃない。第七世代まであるわよ。一日毎に世代を変えて作りだしたのよ侯爵は。しかも戦闘型とか決戦型とか、訳のわからない種類まで作るし、徐々にラフタリアさんに似てきて、みんなやりづらかったわよ」


 谷子が一匹抱きかかえて連れてくる。


「らふー」

「これが第七世代」


 そこにはラフタリアをSDにしてケモノにしたような魔物がちょこんと佇んでいた。

 見方を変えれば小さい頃のラフタリアに似ている様な気がしないでもない。

 しかし、この形でも言葉は同じなのか。


「第八世代はどうなっていたかしらね。本人と殆ど同じのが出てきたかもしれないわね」


 うわ……地味に発展してるじゃないか。

 俺が頭を抱えてうつむいているとラフタリアがポンと肩に手を置いた。


「ナオフミ様」

「な、なんだ?」

「波を乗り越えたら?」

「帰る」

「はい」


 ニッコリと微笑んでラフタリアは頷く。


「大丈夫です。遅れはまだ取り戻せますから、頑張りましょう」

「そうだな……ぐふっ!」


 いきなり吐血した。


「な、なんだこれ!?」

「呪いだろう」


 錬がボリボリと頭を掻きながら呟く。

 呪い?


「妙に悪知恵を働かせて最低限の呪いでみんなを改造していたみたいだけど、さすがに呪いがあったみたいだな」


 そりゃあ……。

 フィーロやキール、ラフ種と呼ばれる魔物に改造された連中やその他を見れば相当な事をしでかした自覚はある。

 ステータスを見ると傷が回復しない。軽度の呪いみたいだ。

 臓器系は薬でカバーできる範囲だったので助かったけど。


 他に……EPも回復しない。こちらは正規の方法で使用する事はできるみたいだ。

 後で判明するのだけど一日毎に一定の経験値を奪われる呪いがある。奪われた先はラフ種系に入るみたいだ。

 戦えば維持できるのが救いだ。

 まだあるかもしれないが、現時点ではこれだけマイナス効果がある。


「あの盾に乗っ取られた尚文自身は弱かったな」

「そうなのか?」

「はい。防御力が極端に低かったので、強化はしていなかったようです」


 むう……そのお陰で助かったのか?


「とにかく……この騒ぎの損害賠償って俺がするんだよな」

「そうですね」


 あーあ……あれだけあった収益が全てなくなって借金になりそうだ。


「幸いなのはおかしくなったナオフミ様が研究した内容の一部はラトさんが引き継いでくれるそうですよ」

「本当は私がやりたかった事ばかり、途中までしてくれたみたいだからね。研究も大きく進むと思うわ。非常に遺憾だけど!」

「らふー」


 ミー君だったかがラトを担いで肩に乗せて歩き始める。


「あの子が力を貸してくれなかったらまだ戦っていたかと思います。第一世代のボディを発展させて強くしてほしいとナオフミ様にお願いして決戦型の体を開発させていたようです」

「へぇ……でもドラゴンの核の概念を取りこんだ。汎用性を欲したんじゃないのか?」

「その辺りは既に内蔵しているみたいですよ」

「ああ、そう……」

「一番の立役者だよな。あいつが土壇場で味方にならなかったら、まだ戦っているのは確かだし」


 錬が補足する。

 ああもう……俺はいったい何を仕出かそうとしてたんだよ!


 ……しかし、ミー君とか言ったか。

 裏切りという言葉にイラっと来るな。

 サディナの場合、ラフタリアの味方をしておかしくなった俺を止めようとしていたのだから、広義で言えば裏切りとは言えないし、もし俺がサディナの立場なら同じ事をした。

 仮に一時的にでも理性が戻れたら同じ事を頼んだはずだ。


 だが、コイツは自分を強くする為におかしくなった俺を利用した事になるんだよな。

 ミー君は元々ラトの味方であって俺の味方では無いし、しょうがないとは思うが、釈然としない。


「ラフー」


 なんだ?

 ミー君がラトにラフラフ言っている。


「えーなになに? 実験台にはなったけど、忠誠を誓えとは言われなかった?」

「……っ」


 なんという屁理屈。

 要するに忠誠を誓えと言われたら断ったとでも言うつもりか。

 俺が日常的に使う屁理屈と同じ理屈だ。

 現状俺は加害者側だから文句を言えないのが逆に腹立たしい。


 つまり、最初から味方では無かったから裏切りにはならない。

 裏切るというのは味方である人物を騙す事だ。

 勝手に改造されていたのを黙って受け入れていただけ、とでも言いたいんだろう。


 記憶が無いし、他人事だから言えるが、俺が悪役でラフタリアは主役だったって事か。

 実際状況的にそうだし。

 良くいるじゃないか、部下に裏切られてボコボコにされるボスキャラクター。


 マンガとかだと主人公達は敵を裏切った新たな仲間を歓迎するんだ。

 俺もそういうキャラクターで好きな奴がいない訳じゃない。

 創作物ならな。


 された側はこんな不快な気持ちになるんだろう。

 反吐が出る。

 俺じゃないけどさ。


 そういや、以前ラトが強さに貪欲と言っていた気がする。

 人格を理解しなかったのが悪いのか。


 しかし……個人的に気に入らないな。

 これからコイツには無視を決め込もう。


「ラトさん。ナオフミ様の事を怒っているように見えますけど、感謝もしているみたいです」

「そうか。出来れば結果良ければ全てよしになってほしい……」


 はぁ……少し自重しよう。

 色々とやりすぎたみたいだ。

 バイオプラントの改造や、守銭奴的な行動をしてもカースシリーズって解放されるのかよ。

 ちなみにその新・七つの大罪シリーズがどんな盾だったのかは、今の俺では閲覧する事も出来なかった。

 こんな感じで、堕ちた俺の暴走事件は幕を閉じた。


「そういやフォウルは何処へ行った?」

「姉貴!」


 遠くからフォウルがラフタリアを見て走ってくる。

 姉貴?


「上手く行きましたか?」

「はい。フォウル君が後続の足止めをしてくれたお陰で……」

「あの後大変だった。城が崩れ始めたからな。一応、みんなを誘導して避難させた訳だけど」


 と言う所でフォウルは俺に気づくと、思いっきり睨んでくる。


「姉貴? 修行の関係で呼ぶようになったのか?」

「違いますよナオフミ様。今回の騒動で、アトラちゃんがナオフミ様の元に行った時、フォウル君も嫌々ながらナオフミ様の配下として働いていたのです。それを私が……その激励して、説得しまして、こっちの陣営に引き入れました」

「ああ、姉貴が言ったんだ。大事な妹を本当に思っているのなら甘やかさずに止めるのが兄の務めだと!」

「へー……」


 なんて言うか、色々な人間ドラマがあったんだろうなぁ。

 反抗的なフォウルがこれほどまでにラフタリアを慕うとは。

 将来は結婚かな? あんまり認めたくは無い。


「……ナオフミ様? 何か不吉な事を考えていませんか?」

「何が?」

「いえ、別に問題はありませんが」

「目からうろこだった。俺は今まで元気になったアトラの我が侭に振りまわされていた。嫌われるのを恐れていたんだ。だけど、愛ゆえに厳しくしなくちゃいけないのだとラフタリアの姉貴に教わったんだ」

「ああ、そう……」


 力強く拳を握っているけど、常日頃から俺が注意している事だし、アトラに嫌われるのを恐れるって、アトラが時々フォウルを呪うとか言ってるじゃないか。


「全てお前が悪いんだ!」

「それで良いよ……」


 実際そうだし、なんか疲れる。


「絶対に俺はお前を認めないからな!」

「ああ、はいはい」


 つまりフォウルがラフタリアの舎弟になった訳か。

 ……実年齢はラフタリアの方が下のはずだがな。

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