【悲報】引きこもりのワイ、里から追い出される。誰か助けて。【所持金0】 作:ケンブリッジ明夫
前回のあとがきや前書きにも書きましたが前回狐耳の女の子と書いたのですが、展開の都合上エルフ耳の女の子に変更しました。
コメ欄で玉藻かな?など狐耳の女の子を楽しみにしていた方には申し訳なく思います。
許してください!何でもしますから!!
僕自身エルフはそこまでですがダークエルフは大好きです。
夜の街。
ネオン輝く歓楽街にて、フラフラと一升瓶を片手に千鳥足を踏む男が一人。
桂孝太郎である。
監察の仕事に耐えかねて、ガス抜きと自分を正当化して夜の街に出る。
その挙句はこの始末である。
1日一度里から支給される金をすべて使い潰し、酒を飲み続けた。
未成年だとバレないまではよかったが、実は案外酒が弱いどころか酒癖が悪かったらしく、散々店でてんやわんやあった後、一升瓶を押し付けられて追い出されてしまった。
歩きながら一升瓶を呷るその姿はダメ人間だ。
「なぁ~にが、監察だバカヤロ!!こちとら生き物観察も小学生以来やってないんじゃボケ!!」
一人で歩きながら天に向かってがなり立てる。
「んぐっ・・んぐっ・・・・・ぷはっぁ~、お酒おいしいお酒すき~。」
お酒を飲みながらお酒に対して甘い声を出して頬擦りする。
もはや泥酔していると言っても過言ではない。
親が見たら泣くぞ。
そうして一人の酔っぱらいが適当に何も考えず歩いている内に歓楽街は様相を変えていく。
奥に行けば行くほどディープになるし、路地裏など人目に付かない場所が多くなる。
ガラの悪い人間も闊歩している。
「おい、どこ見て歩いて・・ぐはっ!!」
「あ、兄貴!!よくも・・・へぶっ!!」
「うっせんだよゴルルァ!!酒飲んでんだ邪魔すんじゃねぇよ!!ぶっつかってきたのはそっちだろうがあぁあん!!!!」
ガラの悪いチンピラ二人にぶつかったと思いきや、即座に一升瓶で頭をぶん殴り、もう片方を膝蹴りで鼻面を潰す。
兄貴と呼ばれた男はもちろんぶっ倒れるし、鼻を潰された男は腹や顔をガシガシと蹴られて、呻き気絶する。
酒を飲んだせいか、理性が薄れて凶暴になってしまっている。
これではまるで性欲が最高潮になって意識を失った状態となんら変わりない。
間違いなく孝太郎がこの場で一番ガラが悪かった。
ていうか頭おかしかった。
しかもぶつかっていったのは孝太郎の方である。
殴られた二人は怒っていい。
しかもこんな奴に限って、腐っても対魔忍。
身体能力は一般人よりもあるのだ。
始末におえないとはこのことである。
すると突然酔っぱらいが路地裏の方に目を向けた。
なんとなくではあるだろうが、酔っぱらいは一升瓶が割れてないのを確認するとだらりとだらしない笑みを浮かべて、フラフラとまた路地裏の中に入っていった。
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路地裏の一角。
美しいダークエルフを目元に見たこともない器具をはめ込んだ男たちが囲む。
「逃げ回られては困りますよナドラ様。」
男の一人がそう言うと、ナドラは怯えた表情を見せる。
「・・・・裏切られた相手にそのように礼節を持って接されても慇懃無礼に見えてしまいますことよ?」
そう言うと男の一人が下卑た笑みを浮かべる。
「そりゃそうだ!俺らはアンタの体とアンタの目にしか用がねぇもんなぁ!!」
「・・・下品な方。」
ナドラは男たちの薄汚い劣情を見て、顔を歪める。
忍術や呪い、結界などから、風の流れ、人の感情の変化まで見通す事ができる魔眼を持っているナドラにとっては男たちの劣情などありありと分かってしまうだろう。
ナドラはダークエルフの貴族の出ではあるが、魔眼を持つことで命を狙われて、頼りにした親戚からも裏切られたことで逃げ回る毎日を送っていた。
古来より魔眼は畏怖の対象とされ、その強力な力、外見的美しさ、珍しさなど様々な理由で狩られてきた。
そのため魔眼持ちは争いや禍根になるとして、産まれてすぐに殺されたり、目を抉られ研究や売買の対象にされてしまう事も少なくない。
ナドラは幸いなことに父母に存在を秘匿されて大切に育てられてきたが、ひょんなことで存在がバレてしまい逃亡生活が始まった。
そして今現在、親戚が差し向けた手合いに囲まれて、危機的状況に陥っている。
もちろんナドラにも対抗する術がある。
なにもかもの流れを見通す魔眼を使えば、その流れに介入して忍術や魔法を不発にしたり風を操ったりすることもできる。
しかし、彼らの付けている機器の影響か、周りの流れを見ようにも、強烈な魔素によってジャミングされるような形になる。
(流れが・・・見えない。)
目を細めるナドラを見て鼻で笑う男達。
「散々アンタには手を焼かされたんだ。対策の一つや二つ持ってくるさ!」
「楽しませてもらうぜ・・・へっへっ・・・・」
ゆっくりと近づいてくる男たち。
(これまでかしら・・・・)
そう思った瞬間、男が鈍い音を頭から立てて倒れる。
そしてそこには一升瓶を片手に持った明らかに酔っぱらった男がいる。
桂孝太郎である。
「なんだお前!・・・んぐぅお・・・・」
一升瓶を下から掬い上げるかのように振り上げて、男の金玉を直撃する。
男は下半身を抑えて痙攣しながら倒れる。
「お酒ぇ~お酒切れてんよ~、・・・・・よこせやぁぁあ!!」
ゆらゆらとしたかと思えば、急にブチギレて襲い掛かる。
「う、うわああああ!!!」
急な刺客の存在に混乱して冷静さを失った男はナドラを気絶させる用のスタンガンを振り回す。
しかしゆらゆらと千鳥足の孝太郎に奇跡的に当たらない。
懐まで入ったところで孝太郎は勢いよく一升瓶を顎に横薙ぎに殴った。
顎を殴られたことで脳が揺れて、足がおぼつかなくなる。
それに追加攻撃と言わんばかりに顔面に瓶をめり込ませた。
男は膝から崩れ落ちる。
不意打ちとはいえ鮮やかな攻撃である。
正気の時にそれが出来れば文句なしであろう。
「・・はっ、助けていただきありがとうございます。」
ナドラは一瞬、なにが起きたか分からなかったが目の前の男性に助けてもらったのは事実だ。
孝太郎に対して頭を下げる。
しかし孝太郎は返事をしない。
不思議に思ったナドラは頭を上げる。
すると男は青い顔で地面に突っ伏す。
「やば・・・動きすぎた・・・きぼちわるいぃ・・・・・」
泥酔したまま動きすぎたことで吐きそうになっていた。
「大丈夫でしてっ!?」
「むりぃぃ・・・、気持ち悪いよぉ・・・」
おえっおえっと嗚咽する孝太郎の背中を撫でるナドラ。
すると急に涙を浮かべる孝太郎。
「もうやだよぉ・・・おうち帰っても誰もいないし・・・仕事つまんあいよぉ・・・・おえっ、達郎・・・シスター・・・・一人は寂しいよぉ・・・・」
そう言いながら涙を流す孝太郎。
ナドラは目の前の男の背を撫でる。
すると距離が近い為、孝太郎の感情の流れが見える。
(怯えと退屈・・・それに寂しさ。私と似ている。)
ナドラは目の前の男の弱さを見る。
「おうち、おうち帰らなきゃ・・・ヴゥゥエエエ・・・・」
ゲボ吐きそうになりながらなんとか立ち上がろうとするも、倒れそうになる。
「そんな状態じゃ歩くのも厳しいはず!私が手を貸しますわ。」
孝太郎に肩を貸す。
「お家の場所、教えてくださる?」
そんなナドラに涙で濡れた情けない酔っぱらい面で感謝を口にする。
「あり”がど・・・・・ウヴェ・・・・・」
家になんとかたどり着くと、どたどたと崩れ落ちるかのようにトイレに向かい、トイレに突っ伏してそして・・・・
「うヴぅぉええええええええ・・・おえっ、おるろぉぉおおおおお!!!ごほっ・・ごほっ・・・おえっ、ヴぉえぇ!!」
勢いよくトイレに嘔吐する。
その音を聞きながらも来るまでに見た、部屋の扉を思い出す。
(ここの扉、あんな罵詈雑言を書かれて・・・それでもこの人は逃げてない。・・・いや、逃げれないのか。可哀そうな人。・・・・なんか放っておけませんわ。それに・・・・)
ただスレ民の悪ふざけで書かれた扉の落書きを本気で受け取ってしまうナドラ。
「うヴぅ・・・・水・・・水ぅ・・・・・」
物思いに耽っていると孝太郎の死にそうな水を求める声を聞いて、冷蔵庫から飲料を持ってくる。
「大丈夫でして?」
水を差し出されて弱弱しく受け取り、水を飲んでゲボを吐くのを繰り替えす。
そして口をすすぐと弱弱しくベッドに横になる。
「・・頭いだいよぉ・・・・ねむれないよぉ・・・・・・瓶冷たいよぉ・・・・」
ナドラはそんな孝太郎を見かねて一緒に横になる。
そして額に手を当てて、体の流れを見て、その胃腸や頭の流れに介入する。
「うヴうぅ・・・すぅ・・・・」
さっきまで苦し気なうめき声をあげていた孝太郎が穏やかな寝息を立てて眠りにつき始める。
考えるのはここを運ぶまでに見た彼の体の流れ。
極めて強力な力が股間の辺りで停滞していた。
人の体の流れは常に体中を巡回しているはず。
そんな停滞するようなことはあり得ない。
少なくとも人為的に手を加えられていなければ。
(この方にはなにか秘密がある。・・・でも私を助けてくれたのは事実。)
あのままであればそれこそ捕まった挙句、体を弄ばれた後に目を刳りぬかれて、最悪殺されていたかもしれない。
だからこそ助けたもらった分は恩を返したい。
それに自分はどうせ行くところはないんだ。
なら彼が起きるまではここに居ても問題はないだろう。
朝、孝太郎は起き上がる。
二日酔いの為か頭が痛いし、気持ち悪い。
しかし起きた時間を見ると12時。
不貞人妻の監察任務という仕事をそろそろ始めなきゃいけない。
「うぅ~、頭いてぇ・・・仕事怠いなぁ・・・・・。」
そう思って起き上がるが、頭が尋常じゃなく痛い。
これ仕事とか出来なくね?
そう思っていると違和感を感じる。
まずは一升瓶を抱えて寝ている今の状況。
そして隣に佇んでいる綺麗なダークエルフ。
「えっと・・・・誰?」
彼が尋ねると彼女は上品に笑って答える。
「私はナドラ・バイロール。あなたに昨日助けてもらいましたの。」
「へ~。」
孝太郎は聞きはするも、頭が痛くてあまり彼女の発言の意味を深く考えることが出来ない。
起き上がろうとするも、起き上がることが出来ない。
すると彼女に水をもらう。
有難うとお礼を言うと、彼女は微笑み。
「ふふっ、元気になって何よりですわ。それでは・・・」
彼女は部屋を出ようとする。
「あれ?どこ行くの?」
孝太郎が思考の鈍った頭で聞くと、ナドラは悲し気に笑う。
「行くところはありませんの。でも・・・・それでも行くしかありませんわ。居場所がありませんので。」
そんな彼女の言葉をボケっーとした表情で聞いた孝太郎は急に口を開く。
「それならさ、きつい時に代わりにあそこのモニターで監察してくんない?それしてくれるなら好きにここ使っていいから。」
「えっ・・・・」
ナドラが呆気に取られる。
孝太郎の中では酒を飲みすぎて頭が痛いし、話相手も欲しい。
それに最近監察の仕事もやりがいが見つからなくなってきた為に、頭数を増やして負担を減らそうとしたのが由縁の発言である。
しかし、ナドラの立場にとってみればそうは聞こえない。
「い、いいんですの・・・?わ、私迷惑をまちがいなくかけてしまいますわ。」
「いい!いい!取り敢えず使い方を教えるから今日代わりにやってて。」
ナドラの言う迷惑とやらの意味もよく考えずに近場の楽を取る為にナドラにモニターの使い方やなにを監察するか話し出す孝太郎。
ナドラの立場からすればまるで自分にうまみがないのに、居場所のない自分に居場所を与えようとしてくれていると見える。
それにそういう話は確かに見目麗しいナドラであればたくさんあっただろうが魔眼を持つ彼女にはそれが下心などの劣情に起因していると分かる。
しかし目の前の男はそんなことを考えてはいない。
だからこそ信頼できる人間であるとナドラは断定したのだった。
・・・・まぁそれはただ孝太郎が楽したいと考えているからなのだが。
「・・・ふふ、あなたは良い人ですのね。取り敢えずどうすればいいか分かりましたわ。」
「お、話が早いな。じゃあ俺はもうちょっと寝るから。頼む。」
そう言って孝太郎が布団に戻ると、ナドラは言われた通りモニターを起動する。
これが彼女との過ごす日常の始まりになると未だ惰眠を貪る孝太郎は知る由もなかった。
孝太郎は酒を飲ませてはいけないタイプの人間ですね。
とにかく酒癖が悪いです。
すぐ手が出ます。
突入任務前に酒飲ませた方が活躍できる可能性が微粒子レベルで存在している?
まぁそんなことしたら味方にも殴りかかって行きそうですけどね。
ナドラは能力的にも、後の孝太郎がまともに戦闘が出来るようになる為には必要だな~と思ったので、本来はブリジットにしようと考えていましたがナドラにしました。
僕自身持っていますしね。
これからもナドラはメインキャラになると思います。
ナドラが祝いなさいと言い出す可能性が微レ存?(まぁないと思いますけど。)
次回は日記と多分掲示板の2本立てになると思いますので、楽しみに待っていただければ幸いです。