【悲報】引きこもりのワイ、里から追い出される。誰か助けて。【所持金0】 作:ケンブリッジ明夫
戦闘中でもネタを挟みたいのですが、挟むところを探すのが大変で、しかも挟みすぎるとテンポがダレる。
やめたくなりますよー。
拙いながらに頑張ったので、温かい目で見ていただけたら幸いです。
・・・それにしても掲示板要素がないですね。
これは次かその次に掲示板要素出さないとタイトル詐欺になっちゃう・・・・ヤバイヤバイ。
「・・・・ 行ったか。」
戦闘の跡でボロボロになった娼館の中、柱に寄りかかったどこか冷たい印象を抱かせる女性。
(今頃空中に飛ばされて戸惑っているだろうな・・・)
少女はついさっき飛ばした少年、桂孝太郎のことを考えていた。
彼自身に見どころはあるものの、このままではただ不知火に殺されるだけだということは想像に難くない。
「まぁ、だからこそ手を打つのだが・・・・」
女は懐からのスマホを取り出し、誰かにかけはじめる。
「もしもし、オレだ。米連の名前を騙ってアンダーエデンを襲撃した男の居場所を知っている。」
電話相手にそう伝えるが、あまり相手側の反応は芳しくないらしく眉根をひくつかせる。
「なに?どうでもいいだと?・・・そうか、だが次にオレが言うことを聞いて同じことが言えるか?オレはその男の名前を知っている。」
女はニヤリと笑うと自分にとっての切り札を切る。
「お前にとっては馴染みのある名のはずだ。・・・・奴の名前は桂孝太郎。あぁ。確かな情報だ。なんせ会ったんだからな。どうだ?少しは動く気に・・・」
電話を途中で切られる。
名前を言った途端、電話相手は確かかと念入りに聞いた後、電話を一方的に切った。
一方的に切られたにも関わらず、不敵な笑みを崩すことはない。
「随分と腰が重い婦人だこと。・・・・まぁ精々生き残ってみせろ。オレを失望させるなよ桂孝太郎。」
そう言うと彼女自身も自身の空遁でその場を後にした。
一方、孝太郎はビルの影に銃を構えて隠れている。
気味が悪いくらいの静寂。
その静寂を切り裂くように鉄のぶつかる音がする。
「・・・上から落ちてきて許されんのは女の子だ。年考えろBBA」
「あらあら、分かっていないようね。若ければいいってものでもないのよ?」
上から切りつけてきた不知火の薙刀を警棒で防ぐ。
正直交戦するには若干心許ないがこれしかないのが現状だ。
鍔迫り合いしながらももう片方の手で銃口を腹に押し付けて、引き金を引く。
しかし腹に穴は開くが、そこから血は流れず、対峙していた不知火自体が水となって地面に広がる。
水分身だ。
彼女は水分身を使って撹乱する戦法を得意としていたそうだ。
聞いた時はなんら恐ろしさがわからなかった。
しかし相対してみると身を持ってその脅威を理解する。
何度倒しても手応えがなく、本物かどうかも判別がつかない。
かくいう自分もこんなことの繰り返しでかなり疲れてきた。
弾も少なくなっている。
正直もうやめたくなってきた。
なんで啖呵切ってここまで来たのか・・・・
なんで不知火を煽ってしまったのか。
御主人様を使って煽ってしまったのが原因か、まるで嬲り殺しにされているかのようだ。
随分と嗜虐的じゃない?と心の中で苦笑する。
懐の再利用爆弾を握る。
「しぶといわね。まるでゴキブリみたいだわ。」
「ハッ、まさか娘と同じことを言うとはな!アンタの娘にもお前の不快指数はゴキブリ以上だって言われたもんだ。」
・・・・自虐するも、返事がない。
どうやら俺の返事にはあまり興味がないらしい。
「・・・・せめてなんか言ってくれない?すっごい虚しいんだけど。自虐ネタを拾わないのは人を傷つける行為なんだぞ!!」
静寂の中、一人虚しく叫ぶ。
「だったら虚しくならないように一思いに殺してあげるわ!!」
すると3人の不知火がこちらにクナイを投げる。
3人いるので明らかにこの中には本物は居ないだろう・・・ていうか本当に嫌になってきた。
クナイを避けるも、肩を掠る。
痛みが走る。
背中を向けて逃げる。
それを追おうとする3人の不知火。
しかし、何かが足元に当たる。
「なにが・・・・」
それは今もカウントダウンを続ける再利用爆弾だ。
カウントが0になり、不知火達は光に包まれて、爆音が周囲に鳴り響く。
「ざまぁみろ!分身なんか差し向けても俺を倒すことは不可能なんだよ!本物が来いや!頼むから!マジで!!」
分身を爆破して煽るも、後半から本音が出てしまっている。
「・・・確かにこのまま一方的なのも面白くないわ。」
背後から急に声がする。
振り返ると不知火が薙刀を蠢動させる。
防がなきゃ、そう思って警棒を出すが絡め取られて宙を舞う。
(パリィとか聞いてな・・・・あっ、死んだわ)
今自分は無防備だ。
瞬間、自分の死を理解する。
しかし薙刀は振るわれることなく、代わりに不知火の長くしなやかで綺麗な足が腹に叩き込まれる。
「うっ・・・げふっ・・・・」
まるで棒で弾かれたピンボールのように壁に一直線に蹴り飛ばされる。
そして壁に大きな音を立てて激突した。
骨が何本かいかれたかもしれない。
(超痛いんだけど・・・・マジで勘弁してよぉ。)
心の中で激痛が痛いと愚痴りつつ、なんとか立ち上がる。
「一思いに殺してやるとかハァ・・言っておきながら、ハァ、なんで薙刀使わない。もしかして・・・もう忘れちゃった?」
息も絶え絶えになりながらもなぜ薙刀を使わなかったのか聞く。
ていうかコイツは煽らなければ喋れないのだろうか?
不知火は鼻で笑って答える。
「覚えてるわよ。でもやっぱり気が変わったの。御主人様を愚弄した不心得者はじっくり時間をかけて、後悔させてから殺すわ。その方が爽快だもの。」
不知火は獲物を見定めるように舌なめずりしながら嗜虐的な笑みを浮かべる。
「随分と変わってしまったんすね。」
「ええ、変えて頂いたのよ。あの至高の方に。」
御主人様を思ってか、恍惚とした表情を浮かべる。
そうして薙刀を持ってこちらにゆっくりと歩いてくる。
「クソっ、ならせめて丸腰の俺に合わせて薙刀を放せよ!俺は警棒を持ってないんだぞ!!弱いものいじめして楽しいのかよ、楽しそうにしてたわ!畜生!!」
一人でセルフ突っ込みをしてしまうほどテンパってしまっている。
そんな孝太郎の様子を見て、不知火がクスクスと笑う。
「あらあら・・・ならお望み通り。」
不知火は薙刀を手から離す。
「あ、・・・な、なんだぁ・・・結構話分かるじゃん。いやー優しいなぁ不知火ママ。実は俺昔から憧れてたんすよ。本当に・・・・バカだなあなたはぁ!死ねやぁあああ!!!」
下衆顔を見せつけながら武器を放した不知火に対して拳銃を発砲する。
警棒がなくても拳銃を持っているのだ。
だというのに丸腰だなんて嘘をついて銃を丸腰の相手に撃つぐうの音も出ない畜生ぶり、恥ずかしくないのか。
しかし不知火はそれも分かっていたのか不敵な笑みを浮かべてこちらに走り寄る。
そして銃弾を最小の動きで避ける。
(・・・・避けた!?嘘だろ!!)
肉迫してくる不知火。
このままでは対応できない。
拳銃を手放して、構える。
しかし格闘技などを習ったこともない孝太郎が堕ちて弱化したとはいえ、実戦において名を轟かせた不知火に勝てるはずもない。
「ちょっ無理、ゆるし・・・がはっ・・・・かはっ・・・・・」
腕のガードを外されて腹、頬、顎と的確に拳をめり込ませる。
そして足払いを受けて、転倒して地面に転がった孝太郎の背中を踏みつけて、懐からクナイを取り出す。
「これで終わりよ。出てこなかったらやられなかったのに。」
孝太郎を踏みつけて、ぼそりと呟く。
孝太郎はそれに笑って答える。
相手は自分の命を奪おうとしている。
だというのに大きな心の波などはなかった。
もう無意識に生存を諦めてしまって居るのかもしれない。
「俺はアンタを逃したら帰れなかったけどな。アンダーエデンの全奴隷を解放しないといけないからさ。」
そう言うと不知火は嘲笑する。
「解放するとか言っているけれど、私はこれが幸せなの。頼んだ覚えはないわ。あの中の娼婦でも娼婦として生きて幸せを感じる女の子も居たかもしれないでしょう。それはあなたの勝手なエゴよ。そのエゴが故に今から死ぬの。」
不知火は殺す前に孝太郎の軸である奴隷解放の意志を揺るがせようとする。
目の前の死ぬ前の人間が意志の寄る辺を失い、絶望に流される表情を眺めるために。
調教は不知火の心すらも侵食し、変えていた。
しかし、何を今更と言わんばかりに表情を消して孝太郎は答える。
「相手がどうだろうがどうでもいい。安価が決めたことだ。俺はそれをなさなければいけない。自分に決めたことだから。」
動揺する様を見ようと思ったが、期待はずれの返答が返ってきて、不知火はつまらなさそうな表情を見せて、吐き捨てるかのように言い放つ。
「そう。アンカー、それがあなたを差し向けた組織の名前ね。おかしいと思ったわ。ただ志を持っただけの対魔忍がアンダーエデンにおいてあれほどの仲間を連れて来られるわけがない。第3勢力の存在・・・ありがとう。最後にあなたからとても有益な情報を得られたわ。さようなら。・・・本当は、ゆきかぜの幼馴染のあなたを殺したくなんてなかった。」
不知火は複雑な表情でクナイを近づける。
最後の最後で安価をアンカーという組織であると勘違いした不知火。
しかしもはやそんなことは死に行く孝太郎には関係ないことだった。
首に近づけられたクナイは彼の頸動脈を掻き切る。
彼の首からは血が吹き出し、体は段々と熱を失ってそのまま息を引き取る。
・・・・そのはずだった。
クナイを首元に近づけた瞬間、後ろから殺気を感じる。
振り返るとこちらにクナイが飛んでくる。
「____ッ!?」
不知火は孝太郎を踏むのをやめると飛び退いて距離を開ける。
孝太郎が顔を上げる。
そこにはトレンチコートを身に纏い、舞踏会の目を隠す仮面を付けた如何にも怪しい感じの妙齢の女性が歩いてきた。
「あらあら、アンダーエデンを荒らした男が居ると聞いて来てみたらまさかこんな坊やだったとはね。」
アンダーエデンのことを口に出す、ということはコイツは俺を狙って・・・
よろよろと力を振り絞り立ち上がり、仮面の女を睨みつける。
「フフッ、勘違いしないでちょうだい?私は別にあなたを殺そうとは今はしてないわ。ただ私は協力しに来たのよ。まぁあなたが拒むなら私はこのまま帰るけど。」
“今は”、ということはもし不知火をなんとかしても、この人と戦わなければいけない可能性がある。
だが、協力を断り、どこかに行けと言えばまたさっきと同じだ。
そんな迷いを察したのか、仮面の女は不敵な笑みを浮かべる。
「どちらかあなたが選びなさい。私と協力するか、それともこのままあの女に殺されるか。」
仮面の女は孝太郎に選択権を委ねる。
だが、実質孝太郎が選べるのは一つだけだ。
「一つだけ・・・教えて下さい。なんであなたは俺に協力してくれる?」
孝太郎の問を聞いて笑う女。
「そうね・・・ただの気まぐれよ。私は耳が良くてね。あなたの言葉を聞いたの。だから理由とすれば・・・私は他人がどうだろうとどうでもいいとか言える、そういうワガママな男の子は嫌いじゃないのよ。」
右耳につけてある小型の機械をコツコツと小突いて見せる。
なんだかよく分からない理由だが、協力してくれるというならそれで充分だ。
「じゃあお願いします。俺を助けてください。できればあの人も殺さずに。」
「生け捕りにしろっていうの?注文多いわね。」
苦笑いする仮面の女。
しかし孝太郎は頑として譲らない。
「俺の使命は奴隷解放だ。そしてあの人もそうなら・・・・」
「皆まで言わなくていいわ。でも気をつけなさい?・・・・この街で多くを他人に望むということは、多くを搾り取られても文句は言えないとね。」
耳元で仮面の女が囁く。
背筋が凍るかのような声。
彼女も不知火とは違うが、よっぽど実力者であると分かった。
「ひゃ・・・ひゃい・・・・・」
俺からすれば不知火の殺気よりも苦手な感触だ。
ちびりそうになった。
ていうかチビッた。
「フフッ、冗談よ。じゃあ私が先行するわ。あなたは支援をお願い。」
そう言ってトレンチコートを脱ぐ。
ぴっちりと主張の激しい体に張り付くような対魔忍スーツ。
そして2つのダガー。
頭の隅がちりちりとちりつく。
どこかで見たような・・・・気のせいか。
「でも俺は支援なんて・・・」
「これで援護射撃してくれればいいわ。それなら初めてでも出来るでしょう?」
足のホルスターに付いていた拳銃を投げ渡す。
しかし見たこともないデザインだ。
なんか近未来的。
「これはどういう・・・・」
聞こうとして顔を上げると既に仮面の女は不知火に向かって走り出している。
(なんで俺の周りの人は話を聞かないのか・・・・まったく・・・・。)
呆れたような表情を見せて、貰った銃と持ってた銃を2つ持つ。
自分も話を聞かないというのに都合の良いことである。
仮面の対魔忍の動きはかなり速く、またナイフによる斬撃はどれも急所を的確に狙っている。
加えて薙刀を手放したせいでクナイで応戦しなくてはいけなくなっている。
「くっ・・・いきなり何を、あなたが彼に付いても何も、・・・」
「衰えたものね幻影の対魔忍。それに私が誰に味方しようが私の自由でしょうっ!!」
調教によって弱化した不知火を嗤い、ナイフを蠢動させ、腕を斬りつける。
自身の不利を感じた不知火は一歩引いて、水分身を出す。
・・・が形成段階で何者かに壊される。
「おー、ヘッドショット。うわー拳銃で出来るとか自分が怖いわぁ〜」
銃を構えた孝太郎。
水分身を孝太郎に撃ち抜かれて壊されたのだ。
孝太郎はおどけた仕草で肩を抱く。
仮面の対魔忍を囲もうと思ったが、まさか今更彼に邪魔されるとは・・・・
まずは孝太郎から先に潰すか、そう考えた矢先、仮面の対魔忍に肉薄される。
「のんびり考え事なんて随分余裕じゃない!」
「くっ・・・・、はぁあ!!」
斬撃をなんとか防ぐも、二の腕や脇腹を斬られてしまう。
力技で蹴り飛ばし距離を空け、クナイを投げるも今度は孝太郎に撃ち落とされる。
「ぐぅぅうう、鬱陶しいのよ!!」
「うわっ、俺今日マジで調子良いわ、絶好調だわ。これもう今日の桂はただの桂じゃないよ。シューティングアサルトカツラか、スペースカツラだよ。いやー、一人で部屋でエアガン撃っててよかったぁー!」
後方射撃において未だかつてない活躍を見せる孝太郎。
もはや浮足立ち、調子に乗っている。
「調子に、乗るな!」
「坊やばかり見て、妬けてしまうわねっ!」
不知火が孝太郎に意識を向けた瞬間、仮面の対魔忍が斬り込みに行き、仮面の対魔忍の対処をしようとすれば孝太郎に邪魔をされる。
この短期間での仲にも関わらず、孝太郎と仮面の対魔忍は少なくとも不知火に対しては完璧な連携を見せていた。
(ここは分が悪い。離脱して淫魔王様との合流ポイントに急いで・・・・)
不知火は水分身を何体も生み出し、逃走を試みる。
「チッ・・・・邪魔ね。」
「ヒャッハー!!的がいっぱいだぁ!!」
仮面の対魔忍は舌打ちをし、もう一人のバカはなんか調子乗りすぎて世紀末なノリになっていた。
(連携が崩れた!今のうちに・・・・!)
不知火はこれ幸いに戦線を離脱しようとする。
しかし最早、時の運とやらは彼女を見捨ててしまっていたようだ。
「逃さない!狙い撃つぜぇぇぇええええ!!!!」
さっきまで世紀末ノリでトリガーハッピーしていたのに、何を思ったかいきなり目をがん開きにしてこちらを狙い始める。
そして自分が持っていた銃は弾が切れたのか、仮面の対魔忍にもらった近未来チックな見た目の拳銃を構える。
そして引き金を引くと、反動で体が仰け反ると同時に、パッチのような物が銃口から発射され、太腿に着弾、そして体中に電気が駆け巡る感覚を覚える。
「ぐぅぅがァアア!!」
電流の痛みから獣のような声を上げる不知火。
「無線式のテイザー銃よ。米連の作った鎮圧用の新装備でね。持続時間は短いらしいけど、まさかここまで効き目があるとは思わなかったわ。」
仮面の対魔忍は愉快そうに笑う。
欠陥があるかもしれない武装を孝太郎に使わせた辺り、この人も食えない女である。
「うぉ・・・なんかプルプルしてる。」
小学校の理科実験をしている小学生みたいな反応を示す孝太郎。
「それじゃ、私の脱いだトレンチコート、持ってきてくれる。」
「あっ、はい。」
孝太郎は言われるがままに、トレンチコートを投げ渡す。
「ありがとう坊や。じゃあ仕上げに取り掛かるわ。」
そう言うとトレンチコートの内ポケットから注射針を取り出す。
あれはたしかオークが一番効能が強くて使わせてくれなかった奴だ。
「それじゃあ、しばらくの間、おやすみなさい。」
「あうぅぅ、ぐうぅぅ、やめぇ・・・・。」
仮面の対魔忍は藻掻く不知火の髪を掴み、首に注射を差し込んだ。
するとしばらくして不知火の体の痙攣が段々となくなっていき、そして身動き一つ取れなくなる。
「これで終わりよ。まったく、殺すだけならもっと楽だったわ。」
「あ、ありがとうございます。そ、それでは・・・・」
孝太郎は逃げようとすると、肩を掴まれて止められる。
「待ちなさい。まだ話は終わってないのに逃げようとするなんて早計じゃない?」
「い、いや逃げたわけじゃ・・・・」
「嘘が下手ね。・・・・・この女は無力化した。そうなれば私との協力関係は解消。敵になるのを恐れて逃げようとしたのでしょう?」
誤魔化そうとしたが、既に意図に勘付かれてしまっていた。
「そ、そうだよ!なんだ、怖いものから逃げて何が悪い!アンタ米連なんだろ!なんか俺が米連の名前を騙ったみたいになってるし、このままじゃ始末されちゃうだろ!必殺仕事人みたいにっ!」
自暴自棄になってわめき散らす孝太郎。
そんな孝太郎を見て苦笑いを浮かべる。
「例えのチョイスがえらく古いわね。・・・別にあなたを殺すつもりはもうないわ。別にあなたは私達の害になるような力を持っているわけでもない。それに・・・米連といっても一枚岩ではないのよ。」
そう言われて、首を傾げる孝太郎。
仮面の対魔忍が言っていることを微塵も理解できていないようだ。
「えっと・・・つまりどういう意味?」
するとため息を吐くと、出来の悪い生徒を見るような目で孝太郎を見つめる。
「簡単に言えば、あなたのしたことで困る人間もいれば、あなたのしたことで助かる人間もいるということよ。これで米連の人事も再編となる。だから私はあなたを殺さないの。」
なるほど、つまりはなんか複雑な事情があってこの人には俺を殺すことはできないらしい。
「な、なら安心だ・・・・へっ、ざまぁみろ不知火さんよぉ!俺は今、ここに生きてるぞ〜〜〜っ!なんか覚悟してこいとか言ってたけど覚悟が必要だったのはお前の方だったなぁ!ぺっ、ぺっぺっ!」
お世話になったとはいえ、散々命を狙われた相手だ。
孝太郎は不知火が起きないのを良いことに煽り散らかし、唾を吐きかける。
行動がいちいち汚い。
親の顔が見てみたいものである。
「ねぇ。」
後ろから仮面の対魔忍に声を掛けられる。
「ん?なに・・・か・・・・?」
振り返ろうとした瞬間、顔を押さえつけられて首に注射器を刺される。
「安心、したわね。ダメよ、この街では・・・・少しの油断が命取りなのだから。フフッ、あなたが私に求めた分、搾らせてもらうわね。」
耳元で囁く仮面の対魔忍。
すぐに自分の単純さに後悔する。
この女の言うことを真に受けて、警戒を解くんじゃなかった・・・
体の感覚がなくなり、立っていられなくなる。
崩れ落ちそうな所を女は支える。
そして目の前も白くぼやけてきた時にまた彼女の声が聞こえた。
「殺しはしないわ。殺しは・・・・ね。」
(あぁ、意識が保て・・・・・・・)
沈みゆく意識の中、後悔しながら意識を闇に落とした。
「ほう、生き残ったか。やるじゃないか。」
仮面の対魔忍が孝太郎と不知火を両脇に抱えて歩いていると、路地裏の暗がりから女が出てくる。
「あら、態々来たのね。」
仮面の対魔忍が意外そうに言うと、女は笑う。
「まぁ俺が送ったというのもあって心配だからな。だがDSOの日本支部長さんがこんなことしていいのか?オレは米連の名前を騙る不届き者についてリークしたつもりなんだが。」
仮面の対魔忍が呆れた顔で女を見つめる。
「よく言うわ。行かないと言えば名前を出して私を駆り立てようとした癖に。名前を聞けば私がこうするって分かっていたのでしょう?」
すると女は苦笑いする。
「まぁな。でなければアンタに電話したりしない。奴には生きていてもらわなければいけない。死なれては困る。」
女は意識のない孝太郎を見てそう嘯く。
「あら、この坊やがどうかしたの?」
「この男は明確な才能がある。いずれはオレたちの目的に必ず役に立つ。オレはそう確信している。」
そう言われて、仮面の対魔忍は孝太郎を見る。
「彼がブラックに対抗する術になると?・・・私には到底そうとは思えないわ。この子は・・・ただの子供よ。」
仮面の対魔忍はどこか物憂げの表情を見せる。
そんな仮面の対魔忍を鼻で笑う女
「アンタから見れば子供にしか見えないだろうよ。・・・まぁ久し振りの再会とやらに水を差すわけにもいかないし、失礼させてもらおうか。幼少期、可愛がっていたんだろう?」
仮面の対魔忍は目を逸らす。
「なんのことを言っているか分からないわ。・・・だけど、これからも情報提供頼んだわ、門上司。」
「頼まれてやろう。じゃあな。」
司は虚空に手を翳すと、まるで空間に引き込まれるかのように消えてしまう。
仮面の対魔忍は再び歩み始めると、右腕に担いでる孝太郎を見て、まるで昔を思い出すかのような表情を見せて呟く。
「それにしても・・・・時が経つのって、結構速いものね。」
その呟きはまるで気づかぬ内に成長した子供に対する寂しさや嬉しさを滲ませて、暗いヨミハラの大気に紛れて消えていった。
今回はディケイド姉貴と仮面の対魔忍の出番が多いですね。
自分自身対魔忍RPGで仮面の対魔忍が結構好きなんで、出したかったんですよね。
なんかイッチと昔関わりがあるっぽいですね。なんやろなぁ(すっとぼけ)
またディケイド姉貴は役名と役者さんの名前を合体させたものです。
ジオウの時並みに暗躍させたいです。
北海道兄貴と樹海兄貴の設定を活動報告に追加したので是非見ていただければと思います。
コメントがありがたいことに多く来るため、今まてまのように全て返すのが難しくなってきました。
出来る限り全部返そうと頑張りますが、私も人間なので返せない場合があるかもしれません。
ご容赦下さい。