- 1 :HAM ◆HAM.ElLAGo :2020/04/29(水) 20:52:49 ID:nPAva3e2
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オレの神様としての能力。
人間に「なにか」を与える。
その代わりに「なにか」を奪う。
与えたものと、同じ価値の対価をもらう。
その能力を使って、オレは人間に干渉すればいいらしい。
……別に干渉しなくてもいいらしい。
ヒマだし、人間はわりと面白いし、オレは度々人間に接触しては遊んでいた。
メスガキ妻「ざぁこ♥ざこ亭主♥薄給♥甲斐性なし♥」
マツコ「もう働くの嫌になってきちゃった。復帰するの無理かも」
25歳男、路上で寝ていたところ起こされてブチギレ暴行
上司「ミスタードーナツ買ってこい」 彡(^)(^)「おかのした」
一般人「アビガンか、1日1錠でええんかな」 医師「朝晩9錠ずつ計3600ミリグラム飲みなさい」
【悲報】 ラウンドワン「このままでは8月に資金が底を尽きる」
【悲報】 コロナ鬱で友達が12人自殺した男、現る
新入女性社員さん「ワイさんもLINE交換しましょ」 ワイ「あ、はい」 女「名前違うけどこれですか?」
【悲報】 岡村隆史さん(49)、チコちゃんに叱られる
【悲報】 会社のzoom飲み会を断る言い訳、存在しな
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- 2 :以下、名無しが深夜にお送りします :2020/04/29(水) 20:57:59 ID:nPAva3e2
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……
「動物に好かれる力が欲しい」
「なんだって?」
目の前に寝そべる少年。
なんだか、ただ物でない雰囲気があるけれど、願ったものは可愛らしいものだった。
「動物たちとね、会話がしたいの」
「そりゃあまた難しい願いだな」
会話か……動物が寄ってくる能力とはまた別物だ。
同時に二つは与えられない。
「会話がしたいか? それとも好かれたいか?」
- 3 :以下、名無しが深夜にお送りします :2020/04/29(水) 21:03:48 ID:nPAva3e2
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「んー」
少年はしばらく考えた後、「動物に好かれる力」を願った。近くの動物は寄ってくるようになる。
「会話できても、動物が寄ってこないと意味ないよね」
「ぼく、たぶん、動物に嫌われてるからさ」
「会話だけできても、悪口言われるだけかもしれないし」
確かに。
小さいのによく考えているやつだ。
「『よう人間の出来損ない! 俺様の視界に入るんじゃねえ!』とかネコに言われたら立ち直れないよ」
ああ、それはつらい。
泣くかもしれない。
- 4 :以下、名無しが深夜にお送りします :2020/04/29(水) 21:08:43 ID:nPAva3e2
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その能力に対して、オレが奪う対価は「足のにおい」だった。
つまり単純に、足が臭くなる。
「お父さんと同じ感じ?」
「お父さんが3日足を洗わなかったにおいが、常に足からする」
「うげ」
「まあ、しっかり靴を履けばマシになるんじゃねえか」
少年を慕って寄ってきた動物たちが、足のにおいに悶絶するのは可哀そうだ。
「靴……苦手だけどちゃんと履くことにするよ」
少年は裸足が好きだった。
いつも裸足で走り回っては、動物たちを追いかけ回していた。
だけどなぜか、動物たちは彼を避けていた。
それが今日から、変わるのだ。
- 5 :以下、名無しが深夜にお送りします :2020/04/29(水) 21:17:49 ID:nPAva3e2
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オレが手をかざすと、少年に「動物から好かれる」能力が与えられた。
と同時に、足のにおいが臭くなった。
地獄みたいなにおいが足元からする。
オレはとっさに呼吸を止めた。
「うぇっほ!! オエ!」
少年自身も自分の足のにおいに絶望していた。
「目に来る!!」
のたうち回っている。
においをマシにする草とか探してきてやろうか。
あれはさすがに可哀そうだ。
- 6 :以下、名無しが深夜にお送りします :2020/04/29(水) 21:25:02 ID:nPAva3e2
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と、ウサギが一匹、彼のもとへ近づいてきた。
口をもぐもぐさせながら、悶絶する少年に身体をこすりつけている。
「あ、あれ? どうしたの? 臭くないの?」
少年は自分のにおいに苦しみながら、初めての体験に嬉しさを隠せないようだ。
ウサギはなおも少年のそばを離れない。
試しに少年が足を向けてみたが、一向に離れていかなかった。
「あ、あはは、あははははは。嬉しい! こんな近くに動物がいるなんて!」
彼は心から嬉しそうな表情を見せてくれた。
オレはその顔を見て、満足することができた。
-
こうして、動物には好かれる一方、人間がまったく近寄ってこない少年が出来上がった。
逆のものを奪ったという点で、やはり「対価」と言える。
しかし少年はまったく満足そうだったし、オレはそれで十分満足だった。
オレは人間がなにを欲しがっているか、観察して、想像した。
予想通りのこともあれば、まったく見当違いのこともあった。
だがそれが面白かった。
人間は、オレを退屈させなかった。
- 8 :以下、名無しが深夜にお送りします :2020/04/29(水) 21:33:56 ID:nPAva3e2
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……
あるとき、欲しいものを尋ねたらこう答えたやつがいた。
「誰もが羨む野球の才能が欲しい。ただそれだけが欲しい」
その男は目をギラギラさせて、居酒屋でオレに語った。
小さいころから努力して努力して、血のにじむ努力をしてきた。
誰にも負けない情熱がある。野球を好きだという気持ちがある。
だけどそれだけじゃあどうにもならないのだ、と。
「でもアンタ、プロ野球選手になったんだろ? 才能、あるんじゃないか」
プロになれない人たちが、いったいどれほどいるというのか。
「なれただけじゃ、ダメなんだ」
男は大きく肩を落とした。
- 9 :以下、名無しが深夜にお送りします :2020/04/29(水) 21:39:46 ID:nPAva3e2
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「プロは化け物どもの世界だ。俺なんかが割って入れる余地はねえ」
「二軍ですら、俺の活躍の場がねえ」
「だから……他のなにを失ってもいい……野球の才能が欲しい……」
男はそう言って、酒をあおった。
「へ……今年の冬にゃあ戦力外だよどうせ……心が折れちまいそうだ……」
頭を掻きむしってうつむく。
まだ若いのに。
野球の世界は厳しいようだ。
オレはこの男に野球の才能を与えることにした。
- 10 :以下、名無しが深夜にお送りします :2020/04/29(水) 21:45:39 ID:nPAva3e2
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「野球の才能って言っても、様々だろう? 打撃、守備、走塁、投球」
「そっからさらに細分化されるだろう? 直球の質とか、コントロールとか、鋭い変化球とか」
「アンタはなにが欲しいんだ? そもそも守備位置は? ライバルに勝つには何の能力が必要だ?」
急に具体的な話になったものだから、男は多少訝しんでいたが、オレの質問に答えてくれた。
「俺は外野手だ。守備力は平凡。肩も普通。外野手が天下を取るためには、突出した打撃力がいる」
「ああ、まあ、走塁もありだが、俺が目指したいのは打撃の神様だ」
「パワーはないわけじゃない。だがバットに当たってくれないんだ」
「球が見えてないわけじゃないんだが、バットがきっちり当たらねえ」
- 11 :以下、名無しが深夜にお送りします :2020/04/29(水) 21:50:50 ID:nPAva3e2
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「そうだな、あえて言うなら、欲しいのは『コンタクト力』だな」
ボールにバットをぶつける能力。
簡単そうで、やはり難しいらしい。
「速い球、動く球、落ちる球、伸びる球……どんな球が来ても、きちんとバットに当てられる能力」
「そんな力が俺にあれば、打撃で天下を取ってやれるのに……」
面白そうだ。
この男が天下を取るところを見てみたい。
能力の成果をすぐに実感できるところと言えば……
「おいアンタ、今からバッティングセンターに行くぞ」
- 12 :以下、名無しが深夜にお送りします :2020/04/29(水) 21:55:42
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