【月光の神】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:クックダッセ
そして次はモンスターフィリアのお話と書いたんですけど、レフィーヤの過去を書いていたら筆が止まりませんでした。原作とのレフィーヤとは全く過去が違います。絶対こんな人生歩んでません。とりあえず見て貰えばわかると思います。では本編へどうぞ。
村が燃えていた。ゴゥゴゥと音を立てて燃えていた。どこを観ても赤色の景色で、綺麗な緑で囲まれていた村は形もあらず、まっかにそまっていた。匂いも木が燃える匂いだけではなく、人が燃えている匂いもした。はじめての匂いに嗚咽する。今まで隣を歩いていた友達やよく遊びに行くときに果物をくれていたおじさんが燃えていた。私は観てることしかできなかった。
レフィーヤが生を受けてから、8年がたった村の外れの場所に遊びに行った時に、炎龍が現れた。そう炎龍は別に強いモンスターではない。オラリオにいる冒険者ならばレベル3程度の冒険者ならば、一人でも倒すことができる。けれど神の恩恵は私たちにはない、大抵のモンスターなら出てきてもこの村の連携力ならば奇襲されたとしても、全て撃退することもできる。
けど炎龍は違かった。一瞬だった。連携する前に木の上で見張りが声を荒げる前に、燃やされ絶命した。絶命した人を見て叫び声さえも、叫声に変わった。連携がないエルフなど一瞬だった。燃やされ、爪で引き裂かれたものもいた。私は村はずれから帰ってくると、世界が変わっていた。全て私の視界が赤に変わった。現実を受け入れられなかった。
「は、ははははははっっ」
乾いた笑いが出た、こんな状況なのに笑っていた。なんで私は膝を落として、笑っているのだろう。なんで体は動かないのだろう。そんな笑っている自分が気持ち悪かった。喜んでいるのだろうか?感情がぐちゃぐちゃでわからなかった。そして何故か口元はしょっぱかった。
私のもとには希望ではなく絶望が現れた。炎龍だった。まだ死んでいない獲物がいるとこちらに向かってきた。死んだほうが楽なのだろうか、そんなことを心の中のどこかで思っていたからこそ、体は動かないし、心は言うこと聞いてくれない。
『ゴオオオオオオオオオオッッ!!』
「レフィーヤ!!!!」
「え?」
炎龍が飛びかかる前に、誰かが私を押した。体が跳ねて炎龍が私の体を通り抜ける。けれどグシャッと誰かの体が吹き飛ばされる音が聞こえた。そして、血だらけで宙に舞っていた同胞が落ちてくる。。誰だろうと朧げの目で見つめる。
父だった。私の一番身近にいた人だった。いつだって仕事に帰ると私の頭をゴツゴツの手で撫でてくれていた父だった。レフィーヤがもし結婚するときは、絶対私に紹介してくれと言ってくれていた父だった。孫の顔が見たいとぼやいていた父だった。
「お父さんッッッッッ!!!!」
「レフィーヤ!!走りなさい!!」
私が父の元へかけようとすると、聞き覚えのある声だった、母だった。私は「どこへ?」と尋ねると母は険しい顔で私に告げた。
「外に馬を止めてあるわ!それに乗ってラキアに向かいなさい!私の知り合いがいるの、きっと彼ならあなたを引き受けてくれるわ」
「なら、お母さんも早く。お父さんを背負って馬に乗ろうよ」
お母さんは私の顔を見て、唇をかみしめた。血が出るほど、噛み締めていた。お母さんはそのあと険しい顔をやめ、ゆっくり微笑んだ。
「レフィーヤ、前にも言ったでしょう。父さんと母さんはここで一生暮らしていくって、だから母さんはいけないよ」
「私一人で行くってこと?」
「ええ、レフィーヤはいい子でしょ?なんでも私のお願いを聞いてくれた。これが私の最後のお願い、生きて」
「いやだよ........」
「レフィーヤ......」
「いや.........」
「レフィーヤ......」
「そんなお願い」
「お母さんの最後のお願いなのよ、レフィーヤ」
「................それが最後のお願いなんだね、お母さん」
「ええ」
「うん、わかった」
「いい子ね、レフィーヤは」
私は何も持たずに駆け出した。なんでこんなお願い聞いたんだろうと今でもわからない。けれど逃げ出したかったんだと思う。きっと私は弱くて、お母さんの最後まで見てしまったらきっと私の心は立ち直れないから、私は生きる理由を与えてもらった。
ならば、ならば、私は生きなければ。
それで、ラキアに行ってそこで少し成長するの、それでオラリオに行くのもいいなぁ。冒険者になって強くなってまた村に戻ってくるの。それでこれだけ強くなったよって、村のみんなに自慢してチヤホヤしてもらうの。それでいい人がいたら、お父さん真っ先に紹介して、お母さんは「あらあら」とか言いながら、まじまじ見るんだと思う。
そんな想像をしながら、村の外へ向かっていく、後ろをふと振り向くと、夜空に炎龍が何か手足のようなものを口からはみ出しながら、去っていくのが見えた。
「あれは確か、お母さんのブレスレットだっけ?」
大きくなったらくれると、私に言ってくれてたものだった。それも炎龍にとられてしまった。私は無表情のまま、村の外に止めてあった馬に乗る。4回目くらいの騎乗だが、難なく走ることができた。少し走ったあと、喉が渇いたので私は泉に止めて、喉を潤そうと泉に近づく。
水面に移ったのは、目が腐った女の子のエルフだった。
「気持ち悪い」
私はそう言って足元に落ちていた、石ころをそのエルフが映る水面に投げ捨てる。そのエルフは消えることなく、ただ水面が波紋を立てるだけだった。しばらくするともとに戻った汚いエルフの完成。
「ねえ、そこにいるエルフさん。なんであなたは逃げてきたの?お母さんとお父さんと村の人を置いて逃げてきたの?..........ねえ?............ねえ?.............答えてよ!!!」
そのまま、崩れ落ちた、声を荒げながら泣いた。
******
「そうか、彼女が生きろと言われたからここにきたのか」
コクリとレフィーヤはうなずく。お母さんの知り合いとはエルフの男性だった。彼は一人暮らしをしていて、鍛治職人だった。ラキアの中心部に位置する彼の家は、外観も立派の家で、すごい家なんだろうとレフィーヤは感づいていた。そして、お母さんに言われた通りにラキアの人に彼の名前を言って、ふらふら彷徨いながらラキアについてから、2時間ほどで彼に出会った。
「そうか、大変だったな。私がこれから面倒を見ることになるがそれでもいいか?」
「はい、こんな私ですけど、よろしくお願いします」
彼はレフィーヤを最初はかわいそうだと思った。けれどレフィーヤの話を聞いて、彼は生きてほしいと思った。彼女は1日で家族と故郷を失った。そして母親に生きてほしいと願われたから、その願いを果たそうと動いている。こんな小さな子なのによく絶望せずに、ここまで来れたとむしろ称賛している。
「私はね、レフィーヤ。君に生きる目的を持ってほしい」
「私は、お母さんに生きてと言われたから私は生きるんです」
「違うよ、それは君の意思ではない。答えを与えてもらった事に過ぎない、ただの過程なんだよ」
「過程、ですか?」
「ああ、君のお母さんは君に生きる目的をくれる過程に過ぎない。だからこれから探していくんだ。ゆっくりでいい。足掻いて、苦しんで、悩め。きっと君の心のどこかに、まだ生きる理由が眠っている。そうでなくては、体は、心は動かない」
彼はレフィーヤの手を握った。まるでレフィーヤの心に熱を灯すように。レフィーヤは目に少しだけ光が生まれた。まだ私には私が残っていると、肯定してくれた人がいたからだ。まだレフィーヤは生きていると教えくれたからだ。
「冒険者になるでもいい、私の鍛治師としての技術を受け継ぐでもいい、どこかの王子様と結婚するでもなんでもいい。見つけるんだ、いや探せレフィーヤ。その答えは君の心の中にある」
そして彼はゆっくり彼女を抱きしめる。腐った目をして、絶望に悶え苦しんでいる彼女を。
「今は泣いてもいい、だって君は女の子なんだから」
彼は耳元で囁いた。そしてレフィーヤもギュッと彼の大きい背中に手を回して、力を込めた。
「私、私逃げちゃったんです!!お母さんとお父さんと村の人を置いて!私だけ助かった、なんで私だけなの?なんで......なんで!!」
彼はうんうんと相槌をしながら、泣きじゃくる彼女を壊れないように抱きしめる。
そして泣き止んだレフィーヤを抱きしめるのをやめて、彼は顔をゆっくりと見る。そしてにっこり笑い、洗面台にある手鏡を持って、彼女に見せる。写っていたのは、少しだけ目に光を宿した女の子だった。もう完全に腐ってはいなかった。
*******
レフィーヤはラキアを納めている主神に恩恵を刻んでもらい、剣の稽古始めた。彼が鍛治師であることもあるが、彼は昔オラリオで冒険者をしていた。けれど自分には剣の才能がないからと、やめてしまったのだと言う。そしてレフィーヤには才能があった。それを見て彼は君ならいい剣士になれると言われて、レフィーヤは訓練を始めた。
剣を振っていくうちに何か掴める気がしたから、彼女は剣を振り続けた。もちろん故郷で習っていた魔法も忘れずに。そして4年目でレフィーヤは念願のランクアップを果たした。さらに3年がたったある日、レフィーヤは義父にあることを伝えた。
「お義父さん、お話があるんです」
レフィーヤは朝ごはんの準備をしている、彼に話しかけた。レフィーヤは食卓に座り、真剣な眼差しで彼に話しかける。
「うん?なんだい?可愛いレフィーヤのためならなんでもしちゃうぞ!何がほしいんだい?お菓子かい?それとも玩具かい?なんでも買ってあげちゃうぞ!」
「お義父さん、私を好きなのはわかりましたから!!ちょっと落ち着いてください!!」
レフィーヤは顔を赤く染めながら、叫んだ。彼は振り返って、レフィーヤの真剣な顔を見て、彼はゆっくり食卓に座った。
「それで?話ってなんだい?」
「はい、お義父さんは私の生きる理由を見つけてほしいと言ってくれました」
「うん、確かに言ったね」
「はい、それで決めました。私はオラリオに行きます」
彼はちっとも驚かなかった。初めて彼女の生きる目的を知ったのに、まるで知っていたかのように、彼はうんとうなずいた。
「それがレフィーヤの答えかい?」
「はい、私は冒険者になります。お義父さんと剣の訓練をしました。それを生かして冒険者になってきます」
彼はクスッと笑い、レフィーヤの目を見た。彼は笑顔だった。
「それがオラリオに行く理由かい?」
レフィーヤはふるふると首を横に振る。目を瞑り深呼吸してから言葉を紡ぐ。
「あの炎龍はわたしの亡き故郷で移住していると聞きました。あのモンスターを一人で倒すことがわたしの生きる理由です」
「そうか、君の生きる理由を聞けて満足だよ」
彼は立ち上がり、奥の工房へ入っていく。そしてとても大きな古い木箱を持ってきた。それを下に置き、ちょいちょいとレフィーヤを手招きする。レフィーヤも従うように、食卓から離れて彼の真正面に座る。
「これは?」
「わたしの家に代々伝わる、代物だよ」
古い木箱を開けると、白銀の剣が出てくる。古い木箱から、そんなものが出てくると思っていなかったレフィーヤは驚いた顔をする。金色の装飾をされた剣の柄に、窓から差し込む太陽にキラキラ白く反射する宝石のような、白銀の刃。
「これを持って行きなさい」
「え!?これはだって代々お義父さんから伝わるものだって、大事なものなんですよね?」
「ああわたしの命よりも大事なものだ、毎日これだけは風邪になっても、腕が骨折しようとも毎日手入れはしていたさ」
「だったらなおさら!?」
「けどねレフィーヤ君は一つ勘違いしてる」
レフィーヤはその言葉の意味がわからなかったので彼の顔を見る。彼は優しい笑みでレフィーヤにこう言った。
「命よりも大事なものがもう一つ増えたんだよ?」
「おと、う、さん」
レフィーヤは涙を目にためていた、声も上ずり、うまく言葉を出せなかった。けれど彼には伝わっている、レフィーヤの気持ちが。
「レフィーヤ、行ってきなさい。そして炎龍を倒したあと、私に聞かせてくれ、次君が何をやりたいのかを」
彼の目が光ってるようにレフィーヤには見えた。けれどこれは自分が流している大粒の涙のせいかもしれないと思っていた。レフィーヤはその差し出された剣を受け取り、彼に深々と頭を下げる。
*******
「忘れ物してないかい?」
「うん!大丈夫です!このレフィーヤ・ウィリディスに限って忘れ物なんてありませんから!」
「うんうん、レフィーヤはそうでなくっちゃ!」
「..........お義父さん今までありがとうございました」
「違うよ、そんな言葉は許さないよ」
「え?」
「またね、レフィーヤ」
「ッ!!!........またね!お義父さん!!」
「あっ、ちょっと待った、レフィーヤ」
「え?なんですか?忘れ物でもありました?」
「うん、ほらこれ」
彼が持ってきたのは7年前の手鏡だった。それして手鏡に映し出されていたのは、レフィーヤだった。そして7年前見た顔は酷く淀んでいて、今にも死にそうな顔をしていた。けれどそこにいたのは、綺麗で山吹色の髪を一つに束ね、決意に満ちた綺麗な目をしていたエルフだった。
「いい顔になった」
そしてレフィーヤはオラリオに向けて一歩歩き出した。もうあの頃絶望していたレフィーヤはいない。昔のように理由を与えられて生きていたレフィーヤではない。これが彼女。正真正銘のレフィーヤ・ウィリディスが誕生した。
これが彼女の過去です。少し重いでしょうか?家族は殺され、復讐者とならなかったのは彼女の根っこにある優しさだと思います。けれどモンスターによる恨みは絶対にどこかにあると思っています。だからこそ敵討ちという選択肢が出ました。そしてベルと出会います。彼女はベルという少年に出会って何か変わるでしょうか、きっと変わると断言していいですね。
そして今作のレフィーヤは原作とのレフィーヤとは性格が違います。根っこはおなんじですが、臆病な性格はなく、ぐいぐい強気で行ける女の子です。そんな彼女は僕は見てみたいと思い、こんなお話にしてみました。
そして次回はちゃんとモンスター・フィリアに行きます。前半後半にわかるでしょう。多分更新日は未定です。お待ちいただいたら幸いです。ではまた会いましょう。
今後について
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リリはやっぱり原作通りで!
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リリはオリジナル展開で!
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オリジナルの女の子出せ!
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ダンジョンより都市外で!
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アルテミスとラブコメ日常回で!