【月光の神】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか   作:クックダッセ

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遅れて申し訳ないです。
少し長めにやってるので、よろしくどうぞ!


いい話が二つ

「あの子素晴らしいわね」

 

葡萄酒を片手に王座にいるのは、絶世の美女。この姿を見るだけで、男であろうがましてや女であろうが、魅了される絶世の美女である。引き引き締まった体に、出るところは出て、まさに理想の女性。肩まで出ている、銀髪は美しい。

 

この女性は固執する男性はいなく、退屈な日常を過ごしていた。けれど退屈を凌げる白き魂を携えた男の子を見つけた。その女性の名はフレイヤ。美の女神である。

 

「主神はアルテミスね。少々厄介だけど、必ずあの子を私がもらうわ」

 

フレイヤは葡萄酒を一口のみ、全てを魅了する笑みを浮かべた。

 

******

 

「うわああああッッ!!」

 

悪夢でも見ていたような気がして、叫びながら僕は起きる。体は完璧に治っている。少々筋肉痛になっているが、動けない程ではない。

確か僕は豊壌の女主人から抜け出して、悔しくてダンジョンに向かって、それから自暴自棄になって確か。

 

「起きましたか!アルテミス様!起きましたよ!」

 

目の前で笑顔で迎えてくれるのは昨日話したはずの、レフィーヤさんだった。辺りを見回すとやっぱりここは僕たちのホームだった。あの後記憶が曖昧で覚えてないんだよね。確か『ウォーシャドウ』を倒したところまでは。

 

******

 

見た目は影。全身がくまなく真っ黒である。十字の形の顔をしている影である。新米殺しと言われるモンスター。

ベルは短刀を引き抜き、ウォーシャドウと対峙する。怯えを押し殺し一歩足を前に。こんな場所で立ち止まってる場合じゃないと一歩前に。

 

「ああああああああああッッッ!!」

 

突撃する。ウォーシャドウの攻撃は長い腕にある鋭利な鉤爪状の指である。その攻撃にまともに触れれば今のベルでは四肢はバラバラになるだろう。触れたら終了(ゲームオーバー)そんな闘いを挑もうとする。

 

鋭利な敵の腕をしゃがんで避け、短刀で急所を突く。一体ウォーシャドウを倒すことに成功する。だが一体、それだけなのだ今視界に映るだけでも20は超えてる。これを一人で処理するのは流石にきついと苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

「【バーナス・レーベル】!!」

 

詠唱が鳴り響いた。その瞬間ベルの体は軽くなり力が溢れてくる。まるで自分の体じゃないみたいに。ベルは詠唱の声が聞こえた方に振り向くとそこにはレフィーヤ・ウィリディスがそこにいた。ベルはモンスターに向き直し短刀を構える。

 

「行きなさい!ベル・クラネル!」

 

声が聞こえた、目の前にいるモンスターに勝てと、冒険者という名前に恥じない闘いをしろと。彼女は目に涙を溜めながら叫ぶ。彼の戦いに打ち震えながら彼女は叫ぶ。

 

「はい!」

 

地面を粉砕し、爆速する。

 

******

 

「お願いですから手を出さないでください!」

 

「え?」

 

レフィーヤはベルから目を離さずに後ろにいるアイズとリヴェリアに話しかける。アイズから疑問がこぼれ落ちる。それもそうだ、今の状況はベルが劣勢負ける可能性のほうが高いのだ。ましてや冒険者になって日が浅い駆け出し冒険者、アイズやリヴェリアは分かっていた。

 

「見てわからないんですか!?あのヒューマンは強くなりたくてここまできてるんです。酒場の時の話を聞いて、彼は悔しそうに唇を噛み締めてました」

 

レフィーヤはけれどと付け足した。

 

「彼はあの狼人(ウェアウルフ)の言葉に悔しがってたのもありますが、一番は何もできなかった自分です。弱い自分が許せなくて彼は今ここに立っています」

 

アイズとリヴェリアは見る。男をかけて戦う冒険者を。命を賭して戦う冒険者の姿を。そんな冒険者はそうそういない。危なければ逃げるし、死ぬ可能性があるなら生きる可能性に下がりつく。そんな冒険者が大半だろう。そんな姿をレフィーヤは過去実際に(・・・・・)見てきた。そんな冒険をする人の目的は全てひとつである。

 

【今の自分を超える】

 

すなわち強さ。強くなりたくて、誰かを守りたくて強くなる。強さを手に入れたいから。

 

「なんだかわかる気がするな」

 

アイズがベルの死闘を見ながらそう呟いた。レフィーヤもリヴェリアもその顔を見て驚いたが、リヴェリアだけはふっと笑いベルとレフィーヤに背を向ける。

 

「帰るぞ、アイズ。その男は彼女に任せとけ私達の出る幕ではない」

 

「うん、そうだね。えっと.......」

 

アイズが彼女の名前を呟こうとしたときに、彼女の名前がわからずに戸惑っていたところ、レフィーヤはベルから一向に目を離さずに、こう答えた。

 

「レフィーヤ・ウィリディスです、これから彼のファミリアに入る偉大な一員です」

 

「そっか、じゃあ彼のこと頼んだよ、レフィーヤさん」

 

「はい、任されました。アイズ・ヴァレンシュタインさん」

 

「こんのおおおおおおおおおッッッ!!」

 

アイズとリヴェリアがダンジョンから去るなか、ベルはモンスターを着々と倒し進めた。レフィーヤは彼に支援魔法が切れないように、効果時間(インターバル)を見極めつつ、彼にかけ直す。レフィーヤはただベルに勝ってくれと願うばかりだった。

 

******

 

「ずいぶんと長いお休みだったみたいだな、ベル」

 

「神様」

 

昨日のことを思い出そうと、考えていると神様が部屋から現れた。神様はいつも通りの服装ではなく、ドレスに着替えていた。あの服はいつも神様が奮発して買った服。「どうだ、これでパーティーに呼ばれたときに困るまい!」とキメ顔しながら、ぼくに自慢してきた服だ。

 

「いい報告が二つある」

 

神様は指を二本立てながら、僕に近づいてくる。僕は神様の顔が近くなってくるので、自分の布団からパッと抜け出して、食卓に座る。レフィーヤさんは元々食卓に座っていた。僕が隣に座ってきたことで、顔が赤くなっていた気がするが、気のせいだと思う。それを見てアルテミス様が頬を膨らませて、若干機嫌悪くなった気がする。

アルテミス様は僕の目の前の食卓の椅子に掛ける。

 

「まずひとつ目だが、眷属が一人増えた」

 

「ええッッ!?」

 

衝撃的な発言で、ひっくり返る。レフィーヤさんに「大丈夫ですか?」と心配されるが、そんな場合ではない!一人僕たちのファミリアが一人増えたんだとそう言われた。僕はすぐ椅子を立て直し、嬉しくなり前なりになって話を聞く。

 

「そこのレフィーヤというエルフの女性だ。レフィーヤもファミリアを探していたみたいでな、こちらに入りたいと志願してきてな私も拒む理由はないし、むしろ団員が増えることはいいことだ」

 

僕は仲間になってくれたレフィーヤさんを凝視する。神様が「女性の団員が増えてモヤモヤする」と何か僕に聞こえない声で呟いていたみたいだった。僕は新たに増える団員、レフィーヤさんの手を握る。

 

「レフィーヤさん!これから、このファミリアを大きくしていきましょうね!」

 

「は、はい。あ、あの手が.......」

 

「ご、ごめんなさい!?」

 

慌てて僕が手を離し、火照ってる顔を伏せる。レフィーヤさんがエルフっていうことでも恥ずかしいし、女の子の手ってこんなに柔らかいんだということでも顔を赤面していた理由だった。

 

「おいベル何赤面してるんだ!」

 

「は、はい!すいません!?」

 

「それにレフィーヤまでなんで赤面してるんだ!」

 

「し、してません!してません!?アルテミス様も悔しいからって八つ当たりしないでください!」

 

「く、悔しいって何がだ!私は別にく、悔しくなんて、悔しくなんて!!」

 

レフィーヤさんと神様が大きく言い合いを始める。レフィーヤさんはギュと自分の片手剣を握りながら、強く言い返し。一方神様は、神様らしくなくって、レフィーヤさんに指を指しながら文句を言っていた。

 

「くっ、あはははははッ!!」

 

神様もレフィーヤも言い合いをやめて僕の方を見て首を傾げた。何を笑っているのかとそういう目をしていた。僕はみんなの疑問を晴らすために神様たちに向き直って、言葉を口にする。

 

「僕たちのファミリアも一歩前進したなって思ってすごく嬉しくて、僕と神様だけだとこんな言い合いもできないから、一人増えてこんなに変わるんだってそう思って嬉しくなっちゃったんです」

 

神様は納得したようで、レフィーヤさんは目を伏せ笑顔でうなずいていて、神様は笑顔で僕をしっかり見つめてくれた。その瞳は海原のように透き通っている蒼目をしていて、とても優しい目だった。

 

「ああ、そうだな私たち二人の時は考えられなかったことだ。けれどまたいつか一人一人増えて、前へ前へ進んでいくんだろうな、こうしてファミリアが大きくなっていく」

 

神様は僕の手を握り優しく微笑んでくれる、まるでその姿はまるで聖母のようで、僕の母親のようだった。

 

「きっとこの先も何かにぶつかって苦しいことや逃げ出したくなる時や絶望することだってあるだろう。そんな時は私を思い出してほしい」

 

僕の手を両手で神様は包み込んでいたが、左手を僕から離しレフィーヤを今度は包み込む。レフィーヤさんも手を握られて改めて実感したと思う。僕たちはファミリアなんだと

 

「私はお前たちの帰りを待っている。だから必ず帰ってきて優しい子供達」

 

「「はい!アルテミス様!」」

 

僕たちはこの日本当のファミリアというものに触れることができた気がする。きっとこの先も僕が死ぬまでこの光景を忘れることはないだろう。

 

「そうだ、あと一つの朗報だが」

 

神様は僕たちから手を離し人差し指と薬指を立てる。

 

「ヘファイストスから武器を作ってもらえることになった」

 

「「へ?」」

 

「えええええええええええええッッ!!」

 

僕が大声で騒ぐと、神様は耳に手を当て不快そうにしていて少し罪悪感があったが、そんなことは気にしてられなかった。だってヘファイストス様の武器といえば、超がつくほどの高級品で第一級冒険者が使うような武器のものを僕が手に入れるなんて......

 

「レフィーヤ私のファミリアに急に入ってきたから、用意できなかったすまない」

 

「気にしないでください、突然入ってきたんですから用意されてなくて当然です。私にも立派な武器がありますから」

 

レフィーヤさんはそう言って自分の左の腰に下げている剣の鞘を触る。レフィーヤさんのその剣は前から持っていて、大切なものということが改めてわかった気がする。

 

「ヘファイストスが武器を用意して待っている。ヘファイストスのところに行くぞベル、レフィーヤ」

 

「「あ、はい!」」

 

僕と声がさなった方を見る。レフィーヤさんも僕の方を見ていた。そうだった【アルテミス・ファミリア】には団員一人ではなくて、僕は家族が一人増えたことを改めて実感して、レフィーヤさんと目があってしまって僕もレフィーヤさんも吹き出してしまっていた。

 

******

 

「ふーんこれがアルテミスの眷属ね〜」

 

「あ、はい!ベル・クラネルと言います!あ、あの僕のために武器を作ってくれてありがとうございます!」

 

「あぁ〜それはもういいのよ、アルテミスから何度もお願いされたからね」

 

「ヘファイストス!あまりそのことを思い出せないでくれ!」

 

僕たちはヘファイストスの工房に向かい、今現在ヘファイストス様が出迎えてくれている状態だった。工房は鍛冶屋独特の鉄の匂いがして、部屋にはヘファイストス様が作ったのであろうか剣やら防具などが飾ってある。薄暗い部屋であったがここで作業する部屋ではないと感じた、鍛冶に必要な竃がなかった。

 

「それで肝心の武器なんだけどね」

 

僕が期待を膨らませ、ごくりと喉を鳴らすとヘファイストスは後ろ机に置いてある紫色の袋を持ち上げる。その袋の大きさから見て剣だろうかはたまた違う武器だったり、とそんな考察しているとヘファイストス様が僕に手渡ししてくれる。ずっしりとした重みで僕はどんな武器なんだろうと期待がもっと膨らんだ。

 

「見てごらんなさい」

 

「はい」

 

僕は紫の包みを床に置き、僕は正座して開封する。紫の包みを凝視しながら包みを開ける。そこに入っていたのは刃から柄まで漆黒の剣だった。よく見ると刃の方に色々な筋が入って僕は不思議に思った。

 

「その剣はね、あなたと共に成長する武器なの」

 

「僕と一緒に成長.......」

 

「そう、あなたが強くなればなるほど、その武器も強くなるの。まあ鍛冶師からしたら邪道だけどね」

 

ヘファイストス様が僕に視線を向けていたのを外し、チラッともう一人の眷族レフィーヤさんのことを見つめる。レフィーヤさんはヘファイストス様と目があって少し緊張していて、その姿を見て少し微笑んでしまった。

 

「ふーん、もう一人眷族できたのね、アルテミス」

 

「ああ、私の二人目の眷属レフィーヤ・ウィリディスだ」

 

「ってちょっと待って!その武器見せて!」

 

「え、あ、はい」

 

ヘファイストス様が慌てた様子でレフィーヤさんの剣を抜刀して、隅から隅まで見る。その武器は美しい銀色に輝いていて、柄の部分は金色で装飾されており貴族が使うような武器で、僕の武器よりは軽装な剣だった。

 

「これすごい業物ね、誰が使ったの?」

 

「誰っていうのは私にはわからないんですけど、これ義父のものなんです。オラリオに行くなら持って行けって代々から受け継がれているようなんですけど私がそんなものもらっていいんだろうかって思ってるんですけどね」

 

レフィーヤさんは苦笑いで誤魔化していたが、少し表情が悲しそうだった。ヘファイストス様はレフィーヤさんに剣を返してレフィーヤさんは、剣を鞘に収めた。

 

「ベル、その武器の名前なんだけどね」

 

「あ、はい!」

 

「『黒幻(こくげん)』それがその武器の名前よ」

 

「『黒幻』」

 

「まあ、うちの某鍛冶師が呟いた名前を改名した名前なんだけどね、最初に名前聞いた時は黒ピョンとか言ってて、驚いたけどね」

 

ヘファイストス様は思い出し笑いしたみたいに、クスクス笑っていた。でも流石にこの武器が黒ピョンって名前だったらすごく残念であんまり愛着持たなかったかもしれない.......

 

「帰ったらアルテミスの恩恵刻みなさい。そうしたらその武器はあなたと共に成長していく武器になるわ」

 

******

 

「ベル、まだダンジョンから帰ってきて、まだ恩恵を刻んでなかったな帰ったら武器と一緒に刻もうか」

 

「はい!お願いします!」

 

僕と神様とレフィーヤさんでヘファイストス様の工房を抜け、ホームに戻っていた、僕の背中には『黒幻』があり、落とさないように肩に紐でぶら下げていた。僕はホームに帰ったらレフィーヤさんに聞きたいことがあることを思い出していた。

 

豊壌の女主人について、皆さんははエプロンをして忙しそうにしていた、夜に向けての開店準備もあるのだろう、神様も夜からバイトに入るらしい。ホームに着いて僕はレフィーヤさんに問う。

 

「レフィーヤさん」

 

「はい?何でしょう?」

 

「前に豊壌の女主人で聞きそびれたことなんですけど、相談って何だったんですか?」

 

「ああ、そのことですか、いい神様を知らないかっていう話でした」

 

「でもラキ.....とか言っててその続きが妙に引っ掛かったので本当にそれだけでした?」

 

「そうですね、聞いてくれますか?」

 

レフィーヤさんが真剣な眼差しで食卓に座ると、僕と神様もレフィーヤさんの対面の食卓に座った。

 

「私はラキアにいたんです」




ベル・クラネル
Lv.1
力 : I 82→G 212 耐久 : I 20→H 184 器用 : 73→G 207 敏捷 : H 127→F 342 魔力 : I 0
《魔法》
【】
《スキル》
【憧憬一途リアリスフレーゼ】
・早熟する。
・懸想おもいが続く限り効果持続。
・懸想おもいの丈により効果向上。

原作よりも多くの敵を倒したので、経験値が多めです。そしていよいよ怪物祭ですね。
次回はレフィーヤの過去と怪物祭です
レフィーヤの過去はそんな大層なことは考えてません、次回は怪物祭がメインの話になります。
ちょっとしたことを考えているので、2話構成になる予定です。
次回もいつになるかわかりませんが、よろしくお願いします。

今後について

  • リリはやっぱり原作通りで!
  • リリはオリジナル展開で!
  • オリジナルの女の子出せ!
  • ダンジョンより都市外で!
  • アルテミスとラブコメ日常回で!

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