10年後、とうとうあの惨劇が起きてしまうのだった
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■登場人物
NA:ナレーション。女性アナウンサー風(ストーリー上メイン)
警察官:男性中年。
検視官:男性初老。
ブランチャード:ジプシーの母。
ロッド:ブランチャードの元旦那。(現在、離婚中)
ジプシー:ブランチャードとロッドの娘(主人公)。
医者:男性中年。
血の海のベッドの上で死んでいる女の姿。
2015年6月14日の深夜、アメリカ・ミズーリ州のクローディーヌ・ディーディー・ブランチャードの自宅の寝室で、その家の主・ブランチャード、48歳の遺体が発見された
死んでいる女に近づく警察官
警察官「うわっ、これはひでぇな……」
遺体を調べている検視官
ブランチャードの遺体には、17か所もの鋭利なものによる刺し傷が残されていた
警察官と話をしている検視官
警察官「こりゃ、彼女に対して強い恨みを持つ者の犯行に間違いないな」
検視官「でしょうね、おそらく……」
発見した警察官が現場の部屋から出ていく。
しかし、隣の家の住人の通報を受けて駆けつけた警察官はあることに気づいた。
ジプシーの部屋と思われる部屋に行く警察官。
殺されたブランチャードには、24歳になるジプシーという名の車椅子に乗った難病の娘がいるはずなのに、彼女の姿がどこにもなかったのだ
部屋の真ん中で腕組みをして考える警察官
警察官「おかしいな。あの娘は難病を患っていて、車椅子じゃないと、どこにも行けないはずだが……」
ジプシーの部屋に空の車椅子があるのを見つける。
警察官「ん?車椅子がある」
テーブルの上の薬袋を手に取る警察官
警察官「それに薬も残されたままだ。もしかすると、ジプシーは犯人に誘拐されたんじゃあ?」
大きな眼鏡に帽子を被った少女が警察に保護される。
しかし翌日、ブランチャードの娘、ジプシーは自宅から遠く離れたウィスコンシン州で発見された。そして、さらに驚いたことがわかったのだ
ジプシー「母を殺したのは、私よ。間違いないわ。ふふふ」
手錠されるジプシー。
そう、ブランチャードを殺害したのは、実の娘のジプシーだったのだ
警察に促されて、自分の足で立ち、歩くジプシー
しかも、歩くことができず車椅子に乗っていたジプシーは、自分の足で立ち、歩いていたのだ
ブランチャードとジプシーが仲良く映っている写真。
これはアメリカで実際に起き、映画にもなった驚愕すべき母と娘の愛憎物語である
ハリケーン・カトリーナの被害の絵。
2005年8月、史上稀に見る巨大ハリケーン・カトリーナがアメリカ南部を襲った
破壊された公営住宅がれきの中を捜索する救助隊員。
中でも甚大な被害を被ったルイジアナ州の破壊された公営住宅の中から
ブランチャードとジプーシを抱えて、がれきから出てくる救助隊員。
シングルマザーのブランチャードとその娘で、髪の毛のない車椅子の少女・ジプシーが奇跡的に救助された
テレビカメラや新聞・雑誌社の取材を受けているブランチャードと車椅子のジプシー。
ブランチャード「娘のジプシーには知的障害があって、知能は7~8歳程度しかないの。そのうえ筋ジストロフィーと白血病を患っているのよ」
無表情で車椅子にいるジプシーの体を抱きしめ、涙ぐむブランチャード。
ブランチャード「かわいそうに……でも、私はこの子がいるから生きていけるよ。がんばれるの……」
テレビ、新聞、雑誌に掲載されているブランチャードとジプシー
そう話したブランチャードは、いくつもの難病を抱える娘を献身的に支えているシングルマザーとしてマスコミに大きく取り上げられたのである
真新しい一軒家の前に立つブランチャード、その横に車椅子のジプシー。
ブランチャード「ほら、ごらん、ジプシー。ここが我が家よ」
一軒家の中のスロープ付きの浴槽を見ているジプシーとブランチャード。
一躍時の人となった二人には、支援団体からスロープと浴槽が供えられた、小さいながらも瀟洒な一軒家をプレゼントされた
リビングいっぱいに荷物があふれている。
さらに、ブランチャードとジプシーの元には、莫大な支援物資と
大金を手にして、それを宙に笑い顔で舞わせているブランチャード。
ブランチャード「(狂ったように笑う)あっははは、あははは……」
募金が全米中から舞い込んだのである
車椅子のジプシーの顔に自分の顔を近づけて言い聞かせるブランチャード。
ブランチャード「これからもおまえは私の言うことに従っていればいいの。わかったわね」
ジプシー「うん。わかった」
車椅子のジプシーのもとに集まる人々。
ジプシーは多くの人々を虜にするほど魅力的な少女だ
ジプシーの細い体
身長150センチ足らずの小柄な体
笑うジプシー、口の中が見えるが歯がない
ほとんど歯のない口――
大きな眼鏡、その奥のつぶらな瞳
大きな眼鏡の奥にあるつぶらな瞳――
帽子をかぶっているが、毛がないことがわかる。
髪の毛のないことを隠すために被った帽子さえも、とてもよく似合うようにみえた。だが、それは同情がそうさせたのかもしれない
ジプシーに寄り添うブランチャード
しかし信じ難いことに、この難病を患っている娘、ジプシーが10年後、実の母親であるブランチャードを殺害するのだ
自分に寄り添うブランチャードに憎悪の目を向けているジプシー
果たして、この母娘の間にはいったい何があったというのだろうか?!
赤ん坊のころのブランチャード。
ジプシーの母親、ブランチャードは1967年、ルイジアナ州で生まれ――
大家族写真
8人の大家族の中で育った
店から物を盗むブランチャード。
ブランチャードは、幼いころから気が強く、自分の思い通りにならないことがあると、よく店で売られているものや――
友達のカバンからそっとノートを盗むブランチャード
友達の持ち物を盗む癖があったという
看護師姿のブランチャード。
二十歳を過ぎたころ、ブランチャードは看護師見習いをはじめた
ロッドと結婚するブランチャード。
ブランチャードは24歳の時に7年下のロッドと出会い、そして、結婚。
結婚パーティーの時のロッド・ブランチャードとお腹の大きいブランチャード
その時、お腹にいた子がジプシーである
ロッド、テーブルを挟んでブランチャードに真剣に話をしている。
しかし、ロッドはジプシーが生まれる前に離婚を切り出した
出ていこうとするロッドにおいすがるブランチャード。
ブランチャード「ねえ、お願いよ、ロッド。離婚するなんて言わないで」
ロッド「もう、俺は決めたんだ。そもそも、この結婚は間違いだったんだよ」
お腹の大きいブランチャードの元から去ってゆくロッド
そう言い残して、ロッドはブランチャードの前から姿を消したのだった
赤ん坊を産むブランチャード。
1991年7月27日、ブランチャードは実家があるルイジアナ州でシングルマザーとして女の子を産み、ジプシーと名付けた
赤ん坊のジプシーを酸素呼吸器に入れて、心配そうに見守るブランチャード
しかし、生後間もなく、ブランチャードのジプシーに対する態度がおかしくなっていく
医者に必死に頼み込むブランチャード
ブランチャード「先生、娘は“睡眠時無呼吸症候群”なんですよ。看護師をしていた私にはわかるんです。このまま放っておいたら、この子は死んでしまいます。なんかと助けてください、先生!」
医者と言い合うブランチャード。
医者「おかあさん、何度調べても娘さんにはなんの異常も見当たらないんですよ」
ブランチャード「そんなことない!この子は、産まれながら遺伝子に問題があるんですよ!」
祖父の運転するバイクの後部座席に乗っているジプー
そして、ジプシーが7歳のときのこと――
車と接触事故を起こし、後部座席から落ちてしまう幼いジプシー。
祖父の運転するバイクが車と軽い接触事故を起こし、ジプシーが膝に擦り傷を作ってしまった
ジプシーを車椅子に座らせるブランチャード。
すると、ブランチャードは、ジプシーに車椅子に乗るように言うのだ
幼いジプシーの言い含めるブランチャード
ブランチャード「ジプシー、こうやって車椅子に乗っていればケガはすぐ治るの。絶対に車椅子から降りちゃダメよ」
車椅子から降りようとするジプシー。
そして、ジプシーが少しでも車椅子から降りようとすると――
ジプシーを捕まえて叱るブランチャード
ブランチャード「ジプシー、どうしてママのいうことがきけないの、悪い子ね!!」
車椅子にジプシーを縄で縛り付けるブランチャード。
嫌がるジプシーを叩き、しまいには車椅子に縄で縛りつけるようになりました
泣き叫ぶジプシー。
ジプシー「ごめんなさい、ママ。もうしません、許してください……」
ブランチャード「いい?ママのいうことは絶対なの!!わかったわね!!」
車椅子のジプシーに栄養チューブで食事を与えるブランチャード。
NA「このころから、ブランチャードの中で、ジプシーはどんどん病が重症化していく。
例えば固形物が食べられないからと栄養チューブで食事を与えられ――」
ブランチャードによって、バリカンで髪を剃られてしまうジプシー。
なぜか髪の毛を剃られ、小学校二年生ころからは学校にも行かせてもらえなくなってしまうのである
近所の主婦たちが集まる場所で車椅子のジプシーを見せるブランチャード。
NA「そして、近所の人たちに、どうしてジプシーに学校にいかせないのかと訊かれると
ブランチャードは――」
車椅子のジプシーのそばで、主婦たちに涙ながらに語るブランチャード
ブラチャード「ジプシーは14歳なんだけど、生まれつき脳障害があってね。知的能力は7歳程度でしかないの。それだけじゃないわ」
みんなの前でジプーシの帽子を取り、髪の毛をがないことを見せて泣くブランチャード。
ブランチャード「これを見て。白血病と筋ジストロフィーに喘息という難病をいくつも患っているのよ」
そう公言するようになっていくのだった
ハリケーン・カトリーナが襲ってくる。
そして2005年、ハリケーン・カトリーナがブランチャードとジプシーが住むルイジアナを襲い――
テレビや新聞紙・雑誌社の取材を受けるブランチャードとジプシー。
ジプシーは、いくつもの難病を抱える悲劇の美少女
ジプシーを涙ながら抱きかかえるブランチャード。
ブランチャードは、そんな娘を懸命に支える母親としてアメリカ中に知れ渡り、一躍時の人となる
車椅子のジプシーを虐待するブランチャード。
しかし、悲劇の美少女・ジプシーはブランチャードが勝手に作り上げた虚像であり、ジプシーの中に徐々にブランチャードに対するどす黒い感情が渦巻いていき――
寝室で血の海の中で殺されているブランチャード。
10年後、とうとうあの惨劇が起きてしまうのだった――
この作品は実話をもとに製作されてます
「ディ-ディ-・ブランチャード殺人事件」
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