第30回『本当は怖い漢字』から学ぶ「権力と民との怖ろしい関係―「三権分 立」の「司法」の「司」は「まつる、祠って神意をうかがう→つかさどる、神 事をつかさどる、つかさ→伺、覗と通じ、うかがう、察する、ようすをみる→ 嗣と通じ、つぐ」などを意味している
司法権の「司」は、〈●(し)※司から口を除い字+口〉を組み合わせた文
字です。口は祝祷を収める器の形を表し、神意を伺いみること、あるいは神の
啓示を受けることを司ることを意味しています。
すなわち、司は「まつる、祠って神意をうかがう→つかさどる、神事をつかさ
どる、つかさ→伺、覗と通じ、うかがう、察する、ようすをみる→嗣と通じ、
つぐ」などを意味しています。
明治憲法は、行政裁判所を司法裁判所のほかに認め、それによって
件についても訴訟的救済を多かれ少なかれ認める趣旨を明文で定め
た。これは、明治憲法が、フランスの「行政型」を採用していたか
しかし、日本国憲法には、行政裁判所に関する規定は、存在してい
これは、フランス型をやめて、アングロ・サクソンの「司法型」を
めです。司法権に関する規定である第七十六条で「すべて司法権は
所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」(
明記し、一切の法律上の争訟を裁判する作用を規定しています。
つまり、「司法権」は、法律上の争訟を裁判する国家作用、つまり
事の裁判作用です。民事裁判は、私人相互間における私法上の権利
る具体的な争いを裁断する作用であり、刑事裁判は、犯罪人に刑罰
用をいいます。さらに、行政事件の争訟も、当然、裁判所によって
は言うまでもありません。
司法権が、裁判所に属するというのは、これらの国家作用が訴訟手
り、裁判所によってなされることを意味しています。具体的には、
と刑事訴訟法という手続き法に基づいて行われます。
裁判官の「裁」は、戈に呪飾をつけて祓う形を表しています。帛を
せて衣とするので、裁制、裁察を意味します。「判」は、刀を加え
することを意味しています。契約書を両分してその一片を持つこと
ます。「万民の判を掌る」とは、婚約のことをいい、契約の是非を
とから、裁判の意味となります。
裁は「たつ、衣をたつ、したてる→みはからう、きりもりする、ほ
る→さばく、きめる→みわける、おさえる、はかる→才、纔と通じ
か」、判は「わかつ、わかれる→両分する→なかば、かたわれ、は
る→さばく、わきまえる、ことわる、あきらかにする→朕と通じ、
どを意味しています。
日本国憲法は、裁判官について第七十六条三項に「すべて裁判官は
心に従い独立してその職務を行い、この憲法及び法律にのみ拘束さ
定しています。
裁判官は、裁判所を構成している者をいい、裁判官の「官」は、明
代には、天皇の任命する官吏を指すときに使われていましたが、日
は、「官」の字にそういう意味はありません。
裁判官が、公務員として、どのような地位を有するかは、すべて法
るところです。「その良心に従い」とは、他からの指示に拘束され
く、良心に従い自分の自主的な判断にのみ従い、独立して職権を行
なわち、司法権の独立とは、職権の独立のことです。
しかし、良心とは主観的な宗教上・倫理上、または、政治上の意見
意味するものではありません。たとえば、死刑に反対、離婚に反対
の理由で、下級審の判断を破棄することは許されません。
刑事事件の「刑」は、首枷(かせ)を表しています。首枷を加え、
罰する意味です。
刑は「首かせを加え、首を切る、ころす、くびきる→つみする、罰
こなう→刑の法、のり、のっとる→ただす、おさめる→型と通じ、
におさめる、あらわれる→?と通じ、なべ」などを意味しています
日本国憲法第三十七条は、「刑事被告人の権利」について、以下の
している。
①すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公
受ける権利を有する。
②刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を十分に与え
又、公費で自己のために強制的手続きにより証人を求める権利を有
③刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼す
できる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国で
る。
この規定は、アメリカ合衆国憲法増補六条にならって、刑事被告人
を保障しようとするものです。
被告人とは、公訴を提起された者をいい、「公平な裁判所」とは、
の他において偏頗なき裁判所」を意味しています。「公平な裁判所
るため、裁判所職員の除斥および忌避の制度が設けられています。
後の刑事訴訟法は、「起訴状一本主義」や「当事者主義」を採用し
を一層強化しています。しかし、「サリン事件」にも代表されるよ
以上にも渡る長期裁判が多く、肝心な「迅速な裁判」は保障されて
実態です。
民事事件は、民の生活に関する事件、すなわち、私人間の法律関係
事項、あるいは私法上の法律関係に関する事項をいいます。広い意
権力と私人との法律関係に関する刑事や行政、あるいは非民事との
られ、この場合、商事を含んでいます。