政府が国民に一律10万円を支給する「特別定額給付金」のオンライン申請が5月1日から順次始まった。7日に受け付けを始めた自治体も多く、連休明けから本格スタートを切った格好だ。記者が住む都内の自治体も受け付けを始めたので早速ネット申請を試みたが、PCやスマートフォンの操作に不慣れな人にとっては難しいだろうと思う場面もあった。
具体的な手順は特設サイトで解説されているが、実際に申請してみて分かった気を付けたいポイントをまとめた。
●申請に必要なものは?
給付金のオンライン申請にはマイナンバーカードが必要だが、実はカードがあれば申請を完結できるわけではない。実際のオンライン申請で用意するものは次の通りだ。
PCから申請する場合
・マイナンバーカード
・カード作成時に登録した「署名用電子証明書の暗証番号(英数字6〜16桁)」
・希望する振込先の銀行口座情報
・銀行口座の確認書類(通帳やキャッシュカード、ネットバンキング画面の写し)
・対応WebブラウザをインストールしたPC
・PC用ICカードリーダーもしくは近距離無線通信「NFC」を搭載する対応スマートフォン
・(カード読み取りにスマホを使う場合は)専用アプリ「マイナポータルAP」(iOS/Android)
スマートフォンから申請する場合
・マイナンバーカード
・カード作成時に登録した「署名用電子証明書の暗証番号(英数字6〜16桁)」
・希望する振込先の銀行口座情報
・銀行口座の確認書類(通帳やキャッシュカード、ネットバンキング画面の写し)
・近距離無線通信「NFC」を搭載する対応スマートフォン
・専用アプリ「マイナポータルAP」(iOS/Android)
●PC・スマホの動作環境を確認
オンライン申請では、ICカードリーダーかスマホを使ってマイナンバーカードを読み取る。スマホを使う場合は、自分の持っている機種が対応しているかを一覧で確認しておこう。iOSはiPhone 7以降、Androidスマホはおおむね2016年後半以降に発売された機種が対応している。特にAndroidスマホの場合は事前に設定でNFC機能を有効にすることを忘れないようにしたい。
PCで申請する場合、対応するWebブラウザは「Internet Explorer」「Microsoft Edge」「Google Chrome」「Safari」のみ。例えばマイナポータル自体の対応Webブラウザには「Firefox」も含まれるが、特別定額給付金の申請には使えないので要注意だ。記者は気付かずにFirefoxで申請を進めていたが、途中で表示される「動作環境の確認」画面で非対応と表示され、進めなくなった。
●申請で注意するべきポイントは?
紙の「マイナンバー通知カード」は使えない
マイナンバーカードは、今回のオンライン申請で使う公式Webサービス「マイナポータル」内の電子申請機能「ぴったりサービス」で必須となる。紙のマイナンバー通知カードではなく、ICチップ搭載のプラスチックカードが必要だ。発行には平常時でも約1カ月以上かかるため、現時点で手元にない場合はオンライン申請を諦めたほうがいいだろう。
マイナンバーカード作成時に設定した暗証番号を覚えているか? そもそも設定しているか?
そしてオンライン申請を失敗する大きな原因となりそうなのが、マイナンバーカード作成時に登録する「署名用電子証明書の暗証番号(英数字6〜16桁)」の存在だ。
マイナンバーカードは、作成時に幾つかの暗証番号を設定する必要がある。特別定額給付金のオンライン申請には、そのうちの署名用電子証明書の暗証番号(英数字6〜16桁)が必須となるが、入力を5回以上間違えるとロックされてしまう。ロックされた場合は市区町村の窓口に出向いて初期化を依頼することになる。日頃からパスワードをしっかり管理しておく必要があるだろう。
オンライン申請が本格スタートした7日、Twitter上では「暗証番号の変更手続きで役所に行列ができている」という声が相次いでいる。
この暗証番号にはさらにわながある。署名用電子証明書の暗証番号(英数字6〜16桁)は、マイナンバーカード作成時に設定することが必須とされていない。編集部のある記者は、マイナンバーカードを用意してオンライン申請を心待ちにしていたが、この暗証番号を作成時に設定していなかったのでオンライン申請が叶わなかった。
ちなみに、申請時に申請者の氏名や生年月日、性別、住所などを手入力する場面があるが、ここで「券面事項入力補助用(数字4桁)」を入力してマイナンバーカードを読み取ると自動入力できる。
銀行口座の確認書類を用意 ……通帳がない場合は?
申請では希望する振込先銀行口座の確認書類の写しをアップロードする必要がある。確認書類の写しとは、口座番号や片仮名氏名などが分かるキャッシュカードや通帳の写真、ネットバンキング画面のスクリーンショットのこと。PCとスマホのいずれも、カメラやスキャナーを使えば問題ないだろう。
最近は紙の通帳を廃止している金融機関も多いが、例えば三菱UFJはネットバンキングで通帳の表紙イメージを表示できるサービスを用意している。スクリーンショットを撮影してアップロードすればいいが、操作に慣れていない人は戸惑うかもしれない。
●オンライン申請、使いこなせれば便利
特別定額給付金の申請は、新型コロナウイルスの感染を防ぐため、郵送方式かオンライン方式での申請となった。今回の特別定額給付金におけるオンライン申請は、マイナンバーカードの存在感が示された初の事例となりそうだ。
複雑な暗証番号や、PC・スマホの操作方法など、慣れない人にとってはとっつきにくい部分や注意すべきポイントもいくつかあるが、ネットを使った行政サービスとして評価できる面も多々ある。今後もさらなる使い勝手の進歩を期待したい。