【愛知】日本人の少年、韓国籍義母に嫌悪感　苦労聞き考え方に変化　「あの人にも自分の知らない苦労があったんだ」

自分の過去と向き合うため家族構成などをホワイトボードに記す日本人の少年＝愛知県瀬戸市の瀬戸少年院で



　少年（１８）は瀬戸少年院（瀬戸市）のグループワークに参加した唯一の日本人だ。少年には韓国籍の義母がいる。

　小学校低学年の時、突然父から再婚を告げられて一緒に住むことになった。しつけに厳しい人で、今まで当たり前のようにしていたゲームを禁止され、反抗すると殴られた。自分もかっとなりやすい性格。毎日けんかが絶えず、１４歳のとき、耐えきれなくなって家を飛び出した。

　日銭稼ぎのため工事現場などを転々とし、友人の家やスーパー銭湯に寝泊まりした。１８歳のころ、職場の先輩をかっとなって殴り、肋骨（ろっこつ）と鼻を骨折させて瀬戸少年院に入った。

　「外国にルーツのある子だけで共感し合うのではなく、日本人も外国人を理解する必要がある」という教官の思いからグループワークに誘われた。参加した当初は、韓国にも義母にも悪いイメージしかなかった。それでも、グループワークで外国人の少年らの経験を聞くにつれ、義母への考え方が少しずつ変わっていった。

　幼いころに来日し、いじめを受けながらも一生懸命、日本語を勉強したフィリピン人の少年の話を聞いた時、義母のことを思った。「初めて会ったころから、当たり前のように日本語をしゃべっていた。でも、本当は彼と同じように大変な思いをしたんじゃないかな」

　ブラジル人の少年は、小学校の運動会の日、母親が作ったお弁当が地味で、色とりどりのお弁当を食べる日本人の友達と比べてしまい、恥ずかしい思いをしたという。話を聞いて、台所に隠れて韓国料理を食べていた義母の背中を思い出した。

　グループワークが進むにつれ「あの人（義母）だったらどう思うだろう」と考えるようになった。そして面会に来てくれる義母から、はじめて日本に来たときの話を聞かせてもらうようになった。

　「あの人にも自分の知らない苦労があったんだ」。性格の不一致はあるが、今は悪い印象は薄れているという。

　グループワークに参加してもう一つ変わったことがある。「『外国人』と言っても、いろんな人がいる。ひとくくりにするんじゃなくて、一人の個人として接したい」。退院してもこの気持ちを忘れずにいたいと思う。【高井瞳】

毎日新聞 2020年5月6日
https://mainichi.jp/articles/20200506/ddl/k23/040/047000c?inb=ra