映画監督・大林宣彦は永遠に…戦争体験から生まれた「夢」と「死」の世界観<ザテレビジョンシネマ部>
2020/05/07 07:00 配信
どの作品にも「死」のにおいや回路が組み込まれている
快活で能動的な「生」の魅力にあふれる大林映画だが、実はどの作品にも「死」のにおいや回路が組み込まれている。生死は究極的な真実の表裏一体だ。故に死に恐れず向き合うことが、健やかに生きていくためのヒントにもなる。そんなことも教えてくれる大林フィルモグラフィ全体が最高に豊穣な「キネマの玉手箱」だ。
彼はいつも“キャメラ”とともにいた。幼少期から活動写真機やセルロイド製のフィルムに親しみ、誰よりも早く日本で自主映画を撮り始め、実験映画からCMディレクター、劇映画へと越境していった大林宣彦。
ベテランになっても初期衝動のエネルギーを失わず、無双のテクニックを持つ“映像の魔術師”が、子どもに戻ったような自由奔放さでスクリーンというキャンバスを埋めていく。その筆致に宿るのはピュアな遊び心。芳醇なエロスとタナトス。
コロナ禍を新たな世界大戦だとする論説が広がっている現在。もしこれが未曽有の「戦争」であるのなら、その渦中だからこそ、「夢」の力を確かめるために大林ワールドの扉を開けよう。いつも笑顔の映画小僧がそこに待っていてくれる。