神奈川県の医師会がこう指摘するのにはワケがあった。
全国で新型コロナウイルスの感染が確認される中、SNSなどでは・・・
「熱が続いているのに検査をしてもらえない」
「肺炎と診断されたのに検査をしてくれない」
「他の国ではもっと検査しているのに」
など、陽性か陰性かを判断するPCR検査が受けられないとの声が相次いでいた。
こうしたことなどを受けて、一部のメディアではコメンテーターなどが「とにかく検査の数を増やすべきだ」という主張をしていたのである。
私自身も、なぜPCR検査が増えないのかは疑問に感じていた。
ちょうど知人からもこんな声が寄せられていたからだ。
「37度1分の熱が出たが、今の状態では検査してもらえないのは報道を見ていればわかる。でも不安だ・・・。同居家族もいるし、早く白黒をつけたい。誰でもPCR検査を受けられるようにもっと増やすべきではないのか」
私も知人の意見に同調した。この状況の中で発熱した場合、たとえ微熱であっても、誰もが自分の感染を疑って不安になる。そうした時すぐにPCR検査が受けられれば、少しでも安心できると感じたからだ。
まさに県医師会のメッセージは、「今すぐにPCR検査を増やすべき」と、世間の声が大きくなった時に掲載された。
PCR検査を何が何でも数多くするべきだという人がいます
医療関係者は、もうすでに感染のストレスの中で連日戦っています。その中で、PCR検査を何が何でも数多くするべきだという人がいます。しかしながら、新型コロナウイルスのPCR検査の感度は高くて70%程度です。つまり、30%以上の人は感染しているのに「陰性」と判定され、「偽陰性」となります。検査をすり抜けた感染者が必ずいることを、決して忘れないでください。
さっさとドライブスルー方式の検査をすればよいという人がいます。その手技の途中で、手袋や保護服を一つひとつ交換しているのでしょうか。もし複数の患者さんへ対応すると、二次感染の可能性も考えなければなりません。正確で次の検査の人に二次感染の危険性が及ばないようにするには、一人の患者さんの検査が終わったら、すべてのマスク・ゴーグル・保護服などを、検査した本人も慎重に外側を触れないように脱いで、破棄処分しなければなりません。マスク・保護服など必須装備が絶対的に不足する中、どうすればよいのでしょうか。次の患者さんに感染させないようにするために、消毒や交換のため、30分以上1時間近く必要となります。テレビなどのメディアに登場する人は、本当のPCR検査の実情を知っているのでしょうか。そして、専門家という人は実際にやったことがあるのでしょうか。
「かながわコロナ通信」より
県医師会は、こうした当初のメッセージを放置することなく、常に新しい情報に更新することも行っている。
現在は、「PCR検査の現状と将来のこと」と題して、現場で改善されるなどしたことも詳しく伝えている。
PCR検査の問題の二つを考えたいと思います。一つはPCR検査の精度の問題、つまり「偽陰性」のことをどのように考えなくてはならないかということです。もう一つは、感染が拡大する時期に、陽性患者さんをいかに早く診断し治療に結び付けなければならないかです。この一見矛盾したような二つの問題を前提に考えたいと思います。
新型コロナウイルス感染者が急増する中、追跡不能な感染者の急増を受けて、医療の対応も迅速な変化が求められています。今までPCR検査は疑わしき対象者に限定して実施されていました。現実に医療機関としても、もっと円滑に検査数の増加が見込めないかとさまざまな方法を計画しております。
では、PCR検査をどう考えればよいのでしょうか。新型コロナウイルスのPCR検査の感度は高くて70%程度です。つまり、30%以上の人は感染しているのに「陰性」と判定され、「偽陰性」となります。検査をすり抜けた感染者が必ずいることを、決して忘れないでください。つまり、検査は、病原体の非存在証明にはならないのです。「安心」を目標とする検査は有害です。あくまでも、個々の患者のケアと日本の感染拡大防止に役に立たねばならないのです。感染拡大の防止のためには、幅広く検査をしなければ、現状を打開できないことは当然です。医療者ももう少し円滑に進めたいと願っています。
そこで地域外来・検査センターや集団検査場を複数設置し、より多くの対象者に対して効率よく検査をして、陽性患者さんを早く治療現場へ誘導することが大切です。そして、検査を実施している衛生研究所のみならず、民間業者の力も借りれば、実施数を増やすことができます。神奈川県医師会は、多方面に働きかけ、県民の不安や不満の解消に少しでもお役に立てるよう活動しています。
ドライブスルー方式の検査があります。諸外国と同様に、速やかにドライブスルー方式の検査をすればよいという人がいます。韓国でも実際にドライブスルー方式のPCR検査をしたのは大邱でのメガクラスター関連で周辺地域のみに限定して行っていました。今では全体に落ち着いてきたので、重症者中心の検査で保健所に連絡して予約制にして、精度管理して確実な方法をとっています。それは当初手技が誤ると混乱することが分かったからです。普通であれば、原則手技の途中でしっかりと手袋を交換し、次の検査の人に二次感染の危険性が及ばないようにします。しかし、くしゃみや咳をした患者さんの検査をしたときは、すべてのマスク・ゴーグル・PPE(防護服・予防衣)などを、検査した本人も慎重に外側を触れないように脱いで、破棄処分をするようにしています。マスク・PPE(防護服・予防衣)など必須装備が絶対的に不足する中、慎重にしていかなければなりません。
また、神奈川県医師会ではドライブスルー方式の検査だけでなく、ウォークイン方式の検査をすでに一部の病院で始めています。検査スタッフは、PPE(防護衣)を装着しなくてもよいのです。シールドボックス(電話ボックスに似た形をとるのもあります)を作り、壁を隔て、マスクをして、手袋をして、検体を採取します。この方法であれば、シールドボックスの患者さん側のみアルコール消毒を確実に行えば、次の患者さんに二次感染の危険性が及ばないようになり、検査を行う医療者も手袋のみを交換破棄すればよいことになります。この方法であれば現在よりは速やかに検査が進みます。
PCR検査については、実施可能件数は増えていますが、医師が検査を必要としたもの全てが速やかに検査される状況には十分ではありません。各地域において、保健所以外の検査所の整備や、検体の搬送体制の整備など、検査体制を確立していかなければなりません。そこで、神奈川県医師会は県内地域の医療資源を有効に生かすことができるよう、また少しでも患者さんの利用がしやすいように、ドライブスルー方式かウォークイン方式かを選択し、地域外来・検査センター(市・町・医師会運営)で診療と検査を行える所を各地域に設置を進めております。
当初からPCR検査に対する測定機器や試薬や遺伝子臨床検査技師の不備は国の初動体制の誤認でした。そして、民間機関への権限の委譲を怠ってきましたが、ここにきてやっと測定環境が整ってきました。また、検査を受けていない患者さんが医療機関を転々としたり、仕事その他の社会生活を続けることで、感染経路不明の患者が更に増えるスパイラルに陥っています。治療法を模索中だからこそ、感染を拡大させないために検査と徹底した陽性患者の隔離が必要です。そして、陰性になったとしても、一定期間の行動抑制は必要なのです。
「かながわコロナ通信」より