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〝負の遺産〟放置 他自治体に学ぶべし

2014年06月06日

論説委員 黒田高弘

閉園した農業公園「卑弥呼の庄」(桜井市倉橋)をめぐる裁判に勝訴するものの、1年半が経過した現在も、活用方法を見いだせない松井正剛市長に、市民や議会から「リーダーシップ欠如」の不満の声が出始めている。
 3年前の平成23年11月の市長選で圧倒的な得票で前市長を破った松井市長。市民らは前市長の失政脱却を託したはずだ。にもかかわらず、失政の上塗り状態が続く。 
 東京ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンの台頭により、全国的に農業公園やテーマパーク、小規模遊園地は閉鎖を余儀なくされ、その広大な跡地利用が課題となっている。
 広島県高田郡高宮町(現・安芸高田市)に平成2年7月、同町が誘致し開場した、高宮虹の家族村「広島ニュージーランド村」。運営に携わったのは「卑弥呼の庄」も手掛けた株式会社ファーム(愛媛県西条市)。
 開園当初は年間70万人が訪れにぎわったが、徐々に入園者が落ち込み、同20年に閉園した。そのほか、同社が手がけた「四国ニュージーランド村」(香川県仲多度郡)、「山口ニュージーランド村」(山口県美祢市)、「愛媛わんわん村」(愛媛県温泉郡)も休・閉園状態となっている。 
 そんな中、昨年6月、太陽光発電事業で国際最大手のウエストエネルギーソリューション(
広島市西区)が広島ニュージーランド村跡地にメガソーラー(大規模太陽光発電所)を建設することを発表。今年度中に操業予定で、市では再生可能エネルギーの導入が進むとともに、市の活性化にもつながると期待が高まっている。
 一方、こんな例もある。大阪市交通局の土地信託事業で平成9年に開業したものの、入場者の低迷が続き、わずか7年で380億円の負債を抱え経営破たんしたフェスティバルゲート。市交通局は21年、一般入札を行い、パチンコ大手のマルハンが約14億円で落札した。マルハンは当初、跡地に「韓流テーマパーク」の建設を計画していたが、先月8日、見直しを検討していることが明らかになり、パチンコ店になる可能性が高まった。
 土地売却時の契約では、5年間はパチンコ店などの風俗営業はできないとの項目が盛り込まれていたが、禁止期間が過ぎたため、出店が可能となった。まさに市の失政だ。今後、地元の反対なども予想され、マルハンの動きが注目される。
 塩漬け土地の解消に向けては近年、各自治体が公売やインターネットオークションを活用するなどして、積極的に取り組んではいるものの、なかなか売却は進んでいない実情がある。土地売却を促進するためには、自治体だけで検討していては前に進まないどころか、失政に次ぐ失政を繰り返しかねない。他自治体の跡地利用の失敗例なども参考にすればいい。
 思わぬ形で「卑弥呼」がクローズアップされる桜井市。卑弥呼は「日巫女」とも書き、太陽に仕える巫女(みこ)の意味もある。〝負の遺産〟を放置し続ければ、卑弥呼の里の名折れであるし、桜井市に希望という名の太陽は上らない。





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