1期4年の谷奥桜井市政 トップの資質を問う
2011年07月22日
主筆 藤山純一
「3度目の正直」で桜井市長に初当選した谷奥昭弘氏。念願の市長に無投票で就任し、5期20年の市議としての実績に市民の市政に対する期待は高まったが、1期4年を終えるにあたり、大きな〝失政〟が浮上してきた。
谷奥氏は4年前の市長選出馬表明で、桜井再生へのカギとして、人口増加対策▽邪馬台国ロマンと世界遺産登録▽総合大学誘致―を掲げた。そして「ロマンや希望の少ない桜井市なので、市民にそうした気持ちを持ってもらえるよう、長期的にやっていく必要がある」と語り、市内に多く残る邪馬台国の伝承を日本全国に発信し、宿泊型観光都市を目指すとともに、建築制限の緩和により駅前マンション建設を行うなど、市内の人口増加に努めたいとした。
さらに選挙当選直後には「この10年間、これ(市長選)ひとつでやってきて感無量。同時に責任の重さを痛感している。財政計画を精査し、自分のものにして改革を推し進めたい」と集まった支持者を前に、このように当選の喜びと抱負を語った。
こうして誕生した谷奥市政だが、スタートした途端、市有地(市土地開発公社所有地)での観光施設誘致で躓(つまず)いてしまった。この1期目の谷奥市政を、本紙先月10日付で市政全般にわたり詳細に検証しているが、人口増はままならず、観光予算は右肩下がり。行財政改革の一環の報酬削減問題でも、市議会議員よりも市長ら〝経営トップ〟の削減率が低いと、市議や市民から批判の声が上がっている始末。
そして、桜井市倉橋の農村公園「卑弥呼の庄」の訴訟問題では、業者との土地売買契約に絡み、土地代金と寄付金がセットで出てくるなど、不可解極まりない実態が浮き彫りになっている。
契約書では土地代金2億円が明記され、それとは全く別に「寄付採納について」と題する文書で、地域、観光などの振興で市に1億8000万円の寄付を約束。それも共に4、5回の分割払いとされ、ほんとうに支払う意思があるのかどうか、疑いたくなるような契約(約束)だ。
特に寄付の分割払いなど聞いたことがない。こんな寄付が確実に実行されるとほんとうに谷奥市長は思っていたのか、極めて疑問でならない。それも寄付を約束した文書を作成したのは、土地売買契約書を交わしてから8カ月後だ。
確か約2年前、高取町でも町土地開発公社の所有地を、同公社理事長でもある植村家忠町長が、自身と極めて親しい医療法人に随意契約で売却しようとした時、土地代金以外に1億円の寄付金が贈られることを明らかにしたことがあるが、これが「この医療法人ありきの売却」と大問題となった。
桜井市では結局、土地代金も寄付金も支払われず、訴訟沙汰になったわけだが、まさにこのような相手の資質も見極められず、ずさんな契約を結んだ市政のトップの谷奥市長の責任は厳しく問われなければならない。
さらにこの契約書で解せないのが連帯保証人が会社は違えども同一人物だったことである。言うまでもなく連帯保証人とはこの契約が契約書通り実行されない場合にそれを肩代わりするもので、同一人物では意味がない。なぜ谷奥市長はこれらを見極め、連帯保証人としてふさわしい人物を求めなかったのか、〝市政経営〟のトップとしてあまりにも見識と先見性がなさ過ぎるのではないか。
一事が万事。他の諸事業にも検証が必要だ。