2006年10月28日

[学会報告内容]

10/28
■富山化学(4518)からは、T-705 の開発経緯やプロファイルについての説明があった。開発経緯では、抗インフルエンザウイルス薬の開発を目指した社内スクリーニングで見つけられたT-705 の母核となった化合物T-1105(フッソ基がないタイプ)は、インフルエンザウイルスに対して高い選択性と高ウイルス活性、低い細胞毒性を示したが、マウス、イヌ等で非常に代謝が早いことが分かり、このままではヒトに適用できないと判断して、新たに最適化合成を行ないフッ素基の付いたT-705 を得た。尚、T-1105 はブタ、羊の口蹄疫に非常よい活性を示し、動物衛生研究所が10 月16 日からの週にキプロスで開催された口蹄疫の学会でベストプレゼンター賞を受賞したことが紹介された。
T-705 のin vitro(試験管内)試験のデータでは、ソ連型インフルエンザであるA 型、B 型、C 型に加え、同社で確立したタミフル耐性株にも有効性を示している。また、耐性株が多く出現したことで欧米では、使用の推奨から外されたアマンタジンの耐性株にも有効性を示した。
細胞毒性については、増殖期の細胞に対する毒性を調べたが、毒性はみられていない。また、抗ウイルス効果をビジュアルで示すために、A 型インフルエンザウイルスをMDCK 細胞に感染させて、シャーレ内で培養、48 時間目、72 時間目のシャーレ内のウイルス増殖をみた。結果は、コントールは多数のウイルス増殖を見た。比較で置いたタミフルに暴露させたMDCK 細胞は、48 時間目には増殖を抑制したものの、72 時間目には細胞内でのウイルスの増殖を見た。しかし、T-705 を暴露した細胞では72 時間後も、増殖は見られなかった。
次に耐性ウイルスの出現をみるために、薬剤に暴露したウイルス感染細胞を継代培養して、薬剤への感受性をみた。タミフルでの継代培養株では5 回目の継代培養から薬剤感受性が落ちたが、T-705 は8 回目の継代培養でも感受性は落ちなかった。T-705 では、現在までこの継代培養試験を続けているが、20 代目になっても薬剤感受性は落ちていない。
次に、T-705 のin vivo 試験における体内動態は、経口投与も静脈内投与も血中薬物動態はほぼ同様で、非常に高い経口吸収性を示した。マウスの実験ではA 型インフルエンザウイルスを経鼻吸収させ、肺内のウイルス減少をみた。次に到死系のモデルで、マウスのサバイバル(生存率)をみたが、T-705 は200mg/kg、400mg/kgの2 日間経口投与で全例生存したが、タミフル投与群ではほとんど死亡した。
T-705 の作用メカニズムの解析では、T-705 は細胞の中に取り込まれると、臓器内のフォスフォリポジルトランスフェラーゼでリン酸化され、キナーゼで3 リン酸体となってRNA ポリメーゼ阻害活性を示す。C 型肝炎治療薬として知られるリバビリンもRNA ポリメラーゼ活性があることが分かっているが、同剤は1 リン酸化体でRNA ポリメラーゼ活性を示す。実験では、リバビリンの3 リン酸化体を作成してT-705 とのRNA ポリメラーゼ活性を比較したが、T-705 はリバビリンの10 倍以上の阻害活性を示した。
安全性については、GLP 試験を終了して急性毒性は非常に低いことが判明した。ラット、イヌの1 か月という実際には投与されないであろう(5 日間投与を計画)長期の経口投与の毒性試験は、リバビリンのような核酸系薬剤と同様の嘔吐や貧血様の症状が見られた。今後臨床試験を進めていく上では、このような副作用発現に注意して進めることが必要と思われる。
富山化学では、このような薬理試験、毒性試験等のデータを厚生労働省、FDA に開示して、臨床試験に開始に向けて指導を受けているという。
一方、米国NIH(National Institute of Health )の下部組織であるNIAID(国立アレルギー感染症研究所)より研究委託を受けたユタ州立大学のDr.Sidwell からは、実際のH5N1 型インフルエンザウイルスを用いたマウスによるin vivo 試験の様々なデータが開示された。同氏は、2006 年3 月20 日(現地時間3 月19 日)にハワイで開催された第8 回呼吸器ウイルス感染症国際シンポジウムにおいて「T-705 のインフルエンザA(H5N1)型ウイルスに対するin vitro、in vivo での阻害作用」と題して同様のマウス実験データを開示して
いるが、今回のデータでは以下のような新しい知見が加わった。即ち、マウスにおける投与量が10 分の1程度(30mg/kg/day)でもマウスのサバイバルレートはほぼ100%近く、投与回数も前回の1 日4 回投与から1 日2 回もしくは1 回投与でも同様のサバイバルレートを示した。このことは、同剤の安全領域が高いことを示していると思われる。様々な実験が報告されたが、インフルエンザウイルスA 型(H1N!、H2N2、H3N2、H5N1)、B 型、C 型にそれぞれ感染させたマウスに30~300mg/kg/day の用量でT-705 を投与、同じくタミフルを投与されたマウスとのサバイバルレートを比較したものや、ウイルス感染直後から最大96 時間経過後にT-705、タミフルを投与してそのサバイバルレートを比較したものが発表された。結論としては、T-705 は、30mg/kg/day を1 日1~2 回の投与でも感染マウスは生存し、ウイルス感染後96 時間(4 日後)にT-705 を投与してもほぼ全例生存が確認され、明らかにタミフルとの有意性が証明された。以下に発表データの一例を示す。
投与量では、1 日2 回投与で300mg/kg/day は10 匹中10 匹が生存(10/10)、100mg/kg/day(10/10)、30mg/kg/day(9/10)、3mg/kg/day(4/10)となっており、100mg/kg/day までなら100%生存している。また、同様の実験を1 日1 回投与でも行っており、1 日2 回投与とほぼ同等の結果を得ている。同社ではヒトでの投与量を300mg を1 日2 回(600mg/日)とみていた。しかし、今回のデータが出たことによって三菱UFJ証券では、減量の余地が出たとみる。ただ、抗ウイルス剤は一般的に早期にウイルスを致死させるために、最大許容量を投与する傾向があることから最大でも300mg 錠を1 日2 回投与という用法・用量の目安は現実
的と思われる。投与量の設定は、当然フェーズ1、早期フェーズ2 試験によって決定付けられるものである。
マウス感染後の投与試験では、24 時間後投与群の生存率は10/10、36 時間後で9/9、48 時間後で9/10、60時間後で10/10、72 時間後で9/10、84 時間後で10/10、96 時間後で8/9、120 時間後で3/10 であった。この実験は、H5N1 ウイルス感染後4 日迄にT-705 を投与すれば回復する可能性を示しているもので、タミフルが感染後48 時間以内(2 日以内)に投与しなくではならないのに比べて有意性が証明されたと言えよう。
質疑応答では、「鳥インフルエンザは肺の下部や腸で増殖するようだが、T-705 に臓器選択性はあるか」という問いに対して、同社では「T-705 はすべての臓器細胞の中で3 リン酸体に変化して抗ウイルス活性を現す。
血中には高い濃度で薬剤は出てきている。肺、腸への特に選択性はない」との回答。また、「代謝経路は腎排出か。腎排出だとアマンタジンのように腎疾患患者で薬剤濃度が急上昇するようなことを考慮する必要があると思われるが」との問いには、「T-705 は90%程度が腎排出である。御指摘のような患者には注意が必要になろう」との回答。最後にユタ州立大学のDr.Sidwell は「FDA、NIH とも同剤の開発には全面的に協力しており、富山化学のスタッフも両機関との密に会合を重ねており、臨床試験の準備を進めている。両機関とも
この薬剤に非常に関心を示している」と発言した。
同社では、GLP 試験が終了したことを受けて、12 月初めにもT-705 を日米で同時に治験申請(IND 申請)する予定にある。フェーズ1 の投薬は早ければ1 月初旬にも開始される予定。三菱UF 証券では、順調にいけば、2007 年の夏から秋にはフェーズ1 を終了し、冬には通常の季節性のインフルエンザ患者並びにH5N1 鳥インフルエンザ患者を組み入れたフェーズ2 試験が開始されるとみる。H5N1 患者での効果が証明されれば同社が言うように2008 年~2009 年の冬のシーズンに間に合うように政府備蓄向けに発売することが可能とみる。
綾小路 ブル麻呂 エヘヘ!

kabu69arai at 11:39│

ライブドアブログでは広告のパーソナライズや効果測定のためクッキー(cookie)を使用しています。
このバナーを閉じるか閲覧を継続することでクッキーの使用を承認いただいたものとさせていただきます。
また、お客様は当社パートナー企業における所定の手続きにより、クッキーの使用を管理することもできます。
詳細はライブドア利用規約をご確認ください。