日本で初めて新型コロナウイルス感染者が確認されてから3日後の1月19日、中国・武漢から関西空港に到着した60代女性に疑わしい症状があったのに、診察した病院からのPCR検査要請を厚生労働省が受け入れていなかったことが6日、りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)への取材で分かった。
女性は関西地方を旅行し帰国。3月末になって冷蔵保存していた女性の鼻やのどの検体を検査すると陽性だった。
当時は37・5度以上の熱と呼吸器症状が検査実施の条件。女性には熱はあったがせきがなく、検査に至らなかった。厚労省結核感染症課は「当時の知見や国内外の感染状況を踏まえての対応だった」としている。同センターの倭正也感染症センター長は「中国から人が押し寄せる春節前に現場の声を受け止めてくれたら、もっと早く対策を打ち出せたかもしれない」と話した。
センターによると、女性は武漢からの直行便で関空に到着。空港検疫所では37・6度の熱と鼻水などの症状が確認された。センターで診察すると、38度超の熱と肺炎の兆候もあった。センターは府を通じて厚労省に検査を要請したが実現しなかった。
センターはエックス線撮影での確認を打診したが、女性は「ただの風邪だ」と主張、医療費負担が高いとして拒否した。京都や大阪、神戸などを観光し、1月28日ごろに帰国したとみられる。関西で初の感染者が確認されたのは1月28日、奈良県在住のバス運転手だった。(共同)