安倍晋三首相は、大叔父・佐藤栄作自由党幹事長が造船疑獄で逮捕されそうになった際、犬養健法相が、検事総長に指揮権を発動、逮捕を免れさせた実例を応用しようとしているのか?

2020/01/22 ブログ
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安倍晋三首相の政治は、母方の祖父・岸信介元首相と大叔父・佐藤栄作元首
相の2人を模範としている。岸信介元首相は、改憲論者として知られる。具体
的には、米国からの自主独立論に立つけれど、安全保障政策は、大日本帝国陸
海空軍の再建にある。要するに戦争ができる武装ということだ。戦後、GHQ
にA戦犯として捕らえられ、米ソ冷戦が始まる、米CIAから潤沢な資金を提
供されてスパイとして使われる。佐藤栄作元首相は、「人事の佐藤」と言われ
て、自民党政権内で人心掌握術により政権の求心力を維持し、人事権と衆院解
散権を駆使して、長期政権を続けた。また、情報収集能力が高く「早耳の佐
藤」と呼ばれた。安倍晋三首相は、8年の長期政権の果てに、「桜を見る会」
に選挙区(山口4区=下関市、長門市)の有権者を毎年、多数招待して、事実
上「公職選挙法違反(有権者買収)」を犯してきた。東京地検特捜部の捜査を
免れるため、検察庁が1954年4月20日当時、造船疑獄事件に関わった与党自由
党の佐藤栄作幹事長を第3者収賄罪容疑により逮捕する方針を決定した際、犬
養健法相が21日、重要法案(防衛庁設置法と自衛隊法)の審議中を理由に検察
庁法第14条による指揮権を発動し、佐藤藤佐検事総長が逮捕中止と任意捜査を
指示し、佐藤栄作幹事長は逮捕を免れて、後に首相に登り詰めた。安倍晋三首
相は、この実例を応用して逮捕を免れようとしているかに見える。さて、この
奥の手は、いまでも通用するのか?


 造船疑獄事件とは、第2次世界大戦(大東亜戦争と太平洋戦争などの複合的
戦争)後の1954年1月に強制捜査が開始された。政界・財界・官僚の被疑者多
数が逮捕され、吉田茂内閣が倒れる発端となった。計画造船における利子軽減
のための「外航船建造利子補給法」制定請願をめぐり発生した贈収賄事件であ
る。
 東京地検特捜部の河井信太郎捜査主任検事が、海運、造船業界幹部を逮捕し
たことから始まった。捜査は政界・官僚におよび、大野伴睦の取り調べからは
じまり有田二郎ら国会議員4人の逮捕などを経て1954年4月20日、検察庁は佐藤
栄作を第3者収賄罪容疑により逮捕する方針を決定した。しかし、佐藤栄作幹
事長は当初、指揮権発動を中々行わない犬養健法相を罷免して、新法相に指揮
権発動させるよう吉田茂首相に要求していたという。後任の加藤鐐五郎法相は
国会閉会直前の6月9日に「4月21日の法相指示は国会閉会とともに自然消滅す
る」と佐藤藤佐検事総長に通知。検察は贈賄側が保釈されていることで収賄罪
の容疑を裏づけることは困難として国会閉会後に佐藤幹事長の逮捕をすること
はなかった。
 参議院本会議は4月23日、指揮権発動に関する内閣警告決議を可決。衆議院
は9月6日に決算委員会を開いて証人喚問を行い、佐藤検事総長は「指揮権発動
で捜査に支障が出た」と証言。また、衆議院は吉田茂首相の証人喚問を議決し
たけれど、吉田茂首相は公務多忙や病気を理由に拒否。その後、衆議院は拒否
事由が不十分として議院証言法違反で吉田茂首相を告発したものの、不起訴処
分となった。

 拙メルマガの1月1日配信記事で、「『桜を見る会』で安倍事務所が一括でホ
テルに払っている領収書が出てきていて、東京地検特捜部がすでに押さえて捜
査の手が及んでいるのに、安倍晋三首相は、まだ気づいていない」という見出
しをつけて、以下のように報じた。
 「桜を見る会」で、安倍事務所が選挙区である地元山口県4区の下関市、長
門市の後援会の人たちを呼んで、ホテルニューオータニで1人5000円の会
費で開いたという前夜祭が公職選挙法に抵触しているのではないかと問題に
なっていたけれど、参加者が個々に参加費を支払い、ホテルニューオータニの
領収書を個別に渡したとしていたのが、ここへきて、安倍事務所が一括でホテ
ルに払っている領収書が出てきていて、それをすでに東京地検特捜部が押さえ
ているという。安倍晋三首相は、国会が終わってホッとしているのか、毎晩の
ように飲んでいる。東京地検特捜部捜査の手が及んでいることは、まだ気づい
ていない。その情報が野党にも伝わっている。
 2012年12月16日の総選挙により政権復帰した自民党・第2次安倍内閣は2013
年秋の臨時国会に内閣人事局を新設する法案を提出することを指示し、2013年
6月の国家公務員制度改革推進本部の会合で、安倍晋三首相は2014年の設置を
明言。11月5日、国家公務員制度改革関連法案が閣議決定され、内閣人事局の
人事対象を審議官級以上の幹部職600人とし、局長には内閣官房副長官を任命
することが決定した。11月22日に法案が衆議院に審議入りするが、民主党・日
本維新の会・みんなの党が「行政機関が増え機能不全になる」と批判し、事務
次官廃止を柱とする幹部国家公務員法案を共同提出して政府案に対抗。自民党
は野党との修正協議を行ったけれど、合意出来ず、28日には臨時国会での法案
成立を断念し継続審議とし2014年の法案成立に方針を転換した
 自民党・公明党・民主党は12月3日、国家公務員制度改革関連法案の修正に
合意。合意文書を交わし、2014年の通常国会での法案成立について確認した。
これを受けて、2014年1月24日に稲田朋美公務員制度改革担当相は内閣人事局
を5月までに設置する方針を示した。3月、法案が可決されたことを受け、5月
30日に内閣人事局が発足した。当初、初代局長には官僚の杉田和博が内定して
いたけれど、人事変更は政治主導を推し進めるために菅義偉官房長官が主導し
て、直前に撤回され加藤勝信衆院議員が任命された。この結果、どうなった
か。
 各省庁の人事権を首相官邸が握ることになったため、官僚は、「平目状態」
になり、安倍晋三首相の顔色や意向を過度に忖度するようになっている。これ
は、法務省・検察庁ばかりでなく、最高裁を頂点とする裁判所も同様である。
最高裁長官まで首相に出向いている有様だ。安倍晋三首相は、この地位を悪用
しているかに窺える。
 安倍晋三首相に近い民放記者が、女性の告訴状を受理した警察署が逮捕状が
発付された際、警視庁幹部の判断で逮捕が中止となった件は、まさにその実例
の1つと受け止められている。