要注意!子どもに絶対言ってはいけないひと言

オールアバウト / 2020年5月3日 22時15分

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虐待は体罰ばかりではありません。言葉での虐待も含まれます。ここでは、もっとも頻繁に起こりうる心理的虐待にフォーカスを当てていきます。

児童虐待の中でもっとも多い「心理的虐待」とは?

最近、ニュースで聞かない日はないほど、児童虐待が深刻化しています。ニュースで見るのは、ほとんどが身体的な虐待のため、その暴力性に目が行きますが、暴力だけが虐待ではありません。言葉での虐待、いわゆる心理的虐待も含まれます。ここでは、身体への虐待よりもずっと頻繁に起こりうる心理的な虐待について見ていきたいと思います。

虐待には4種類ある

児童虐待防止法では、児童虐待をその特徴から、4つに分類しています。これらは単独ではなく、重複して現れることもあります。

・身体的虐待
・性的虐待
・ネグレクト
・心理的虐待

はじめの3つは、ニュースなどで頻繁に耳にすることもあり、どういうことを指すのかが想像できますが、この中で一番あいまいなのが、心理的虐待ではないでしょうか?

厚生労働省の児童家庭局によれば、心理的虐待とは、

・言葉で脅したり、脅迫すること
・子どもを無視したり、拒否的な態度を示すこと
・子供の心を傷つけることを繰り返し言うこと
・子どもの自尊心を傷つけるような言動をする
・他の兄弟とは著しく差別的な扱いをすること
・配偶者への暴力や暴言を子供に見せること

としています。

言葉が強すぎるのも、逆にまったく言葉をかけないのも、心理的な傷になるということです。

これを見てどう思われましたか? 意外と身近に起こりうる危険性があると感じた方も多いのではないでしょうか?

身体的な虐待と心理的な虐待の違い

虐待のニュースを見るたびに、「なんてひどい」「よくもこんなことを」とだれもが思います。でもそういうとき、それを外側から見ている自分がいます。なぜなら、ニュースに取り上げられるのは、暴力性の強い身体的な虐待がほとんどだからです。しかし、心理的な虐待、とくに言葉の虐待に関していえば、決して対岸の火事ではありません。

たとえば、子供がいつまでも言うことを聞かないとき。怒る声がだんだんと大きくなり、最後には感情的に怒鳴ってしまうこともあります。「絶対に手だけは上げない」と誓っている人でも、言動や態度は脱線しやすく、思わず傷つけるようなことを言ってしまったり、完全に無視してしまうというケースはよく見られます。

身体的虐待は、叩くか叩かないかで明らかな線があるのですが、心理的な虐待はその線がないか、少なくとも見えにくいため、叱っている途中で、そのエリアに踏み込んでしまいかねないリスクがあるのです。

・どこまでならOKで、どこからがダメという範囲が分かりにくい
・そのため繰り返され、積み重なりやすい
・日々の中でじわじわと広がっている可能性がある

言葉による虐待は、そんな特徴を持っていると言えるでしょう。

こんな発言に気をつけたい、子供を傷つける言葉の特徴とは?

先ほどご紹介した法律でも、4つのタイプは単独とは限らず、重複して現れることもあると明記されていますが、心理的な虐待は、4つの中でももっとも頻度や割合が高く((1)心理的虐待(54.0%)、(2)身体的虐待(24.8%)、(3)ネグレクト(20.0%)、(4)性的虐待(1.2%)2017年度の児童相談所での虐待相談の内容別件数より)、他の虐待と重なっていることも非常によくあります。

また、初めは口頭で叱っていたのに、言うことを聞かないから暴力をふるうようになったというように、言葉の虐待から、他の虐待へとエスカレートしていくケースも多いと考えられます。つまり、言葉での虐待をきっかけに悪化していく可能性は高く、逆に言えば、そこを食い止められるかどうかが、エスカレート防止に大きく絡んでくるわけです。

では、具体的にはどんな言葉が子供の心を傷つけるのでしょうか。

たとえば、

・言葉で脅迫する
「○○しないと、外に出すからね」「いいかげんにしないと、どうなるか分かってるよね」

・自尊心を傷つける
「○○なんて生まなければよかった」「もううちの子じゃない、どこか行っちゃいなさい」

・兄弟との差別
「お兄ちゃんは本当にいい子」「それにひきかえ、○○はどうしようもない」

全体に共通しているのは、その子の存在自体を否定する物言いです。

多くの場合、これらの言葉は、親の怒りの最後に出てくる言葉であって、いきなりこのような暴言を吐くのではなく、その前の段階から言葉が徐々にエスカレートしていくことが大半です。それを踏まえると、これらの言葉を言ったらアウトというのではなく、ここにつながる言葉にもそのリスクがあることを忘れてはいけません。

親の言葉は盾にもなるが、ときに剣にもなる

言うことを聞かせたいと思うとき、何度言っても聞かないのなら、その声を強めるしか方法はない、そんな気がしてしまうかもしれません。でも、実際には、むしろ強く激しく言うことで事態は悪化していきます。

私は子育て心理学を普及する活動をしていますが、その中で、親が言葉の使い方を意識することで、子育てがガラッと変わる実例を多く見ています。親の言葉は、子どもの心を支える盾にもなりますが、使い方を間違えば、心に刺さる剣にもなりうるのです。良くも悪くも、影響力が非常に大きい、それが親の言葉です。

言葉のエスカレートを防ぐためのポイントとしてあげられるのは、次の2つです。

ファーストリアクションに注意する

毎日、無数に繰り返している、親の言葉⇒子供の反応⇒親の言葉⇒子供の反応……。多くの場面で、初めのひと言がカギを握っています。大事なのは、ファーストリアクションです。初めにどんな言葉をかけるかで、その後の流れが大きく変わってきます。

つまり、いいスタートはいい結果を生みます。悪いひと言は、悪い方向へエスカレートします。叱るときは、子供の行動に目を向け、その子の存在を否定するような言葉を禁句にしましょう。

ルール違反だけに目を向けない

しかし、実際には、事が起こったときに対処するだけでは不十分です。問題が起こってから、言うことを聞かせようと大声で叱っても大した効果はありません。効き目がないから、子供が言うことを聞くまで怒鳴り続けることになってしまうのです。

親は子どもが“ルール違反” をしたときに、「それダメでしょ」「約束と違うよ」と飛びついてしまいがちです。

一方で、ルールを守れている時間は、見逃してしまいます。子供は、起きている間中、色々なことをしていますが、100%悪いことばかりをしている子はいません。どんなに言うことを聞かないと手を焼いている子でも、穏やかにしていたり、笑ったりする瞬間も、少なからずあるはずです。

言葉のエスカレート、ひいては虐待を防ぐには、叱る場面以外で子供の心に触れるような行動を取るのが有効です。たとえば、スキンシップをする、遊ぶ、一緒におやつを食べる。このような、子どもが「嬉しいな」と思うことを盛り込んで、心に触れていきます。すると、反抗したり、すねたりする数が減り、親が言葉を荒げる頻度も改善されていくのです。

国会では、親による子供への体罰の禁止を児童福祉法や児童虐待防止法などに明記する改正案が閣議決定されました。ただ、体罰だけを禁止しても、その前座に出やすい言葉での虐待から取り組まないと、虐待の大幅減にはつながらない気がします。

はじめのささいなひと言が、あれよあれよと膨れ上がり、言葉の虐待、そして、身体的な虐待へと変貌するリスクを踏まえ、「これくらいなら」という思いをなくすことがやはり大事なのだと思います。
(文:佐藤 めぐみ(子育てガイド))

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