【神社&仏閣が危ない!】(07) 八幡宮の総本宮で前代未聞の大騒動…『神社本庁』の強権支配に反旗
全国4万社超の八幡宮の総本宮である『宇佐神宮』(大分県宇佐市)で、地元住民が宮司の罷免を求める事態が起きている。住民らの怒りの背景にあるのは、地元を無視した『神社本庁』の強権支配だ。

「これは完全に神社本庁による乗っ取りだ。本庁から送り込まれた宮司が、宇佐神宮を政治利用して、地元との関係を断ち切っている」――。大分県宇佐市のある神職はそう憤る。神職だけではない。今年1月には、市民団体が宮司の退陣を求める異例の署名運動を始め、既に5000筆以上が集まった。宇佐市の人口は約5.6万人。全人口の約1割が賛同した格好だ。宇佐の神職や氏子らがこぞって怒りの矛先を向ける宮司こそ、神社本庁の前総務部長である小野崇之氏である。小野氏は、田中恆清総長や『神道政治連盟』の打田文博会長に仕えた“子飼い”の部下。本庁時代に疑惑の不動産取引に加え、本誌が7年前にスクープした『伊勢神宮』からの震災被災地支援米の一部を神社本庁職員に配布した“猫ババ事件”を主導したとされる。左図に示すように、宇佐神宮では約10年前から宮司人事を巡る混乱が続き、代々宮司を世襲する到津家による訴訟沙汰にもなっている。その間隙を突く形で、小野氏が神社本庁から送り込まれてきたのは、一昨年2月のことだ。小野氏は着任早々、地元の県神社庁宇佐支部との協力関係を断絶。支部側が神宮内にあった事務所を別の神社へ移す異常事態が今も続く。氏子らの寄付金の取り纏め役だった支部の協力が得られなくなり、神宮では神事等の資金集めに支障を来しているという。その不足分を補う為か、小野氏は着任以降、様々な手口で自前の“財布”を確保する動きを見せている。その最たる例が、昨年、神宮の所有地に建設した有料駐車場だ。この駐車場により、参拝客が商店街を通りながら神宮へ向かう既存駐車場の動線が崩れ、ある商店主は「客足が遠退いて、売り上げが2~3割減った」と嘆く。更に今年、市に無償貸与していた宇佐神宮球場グラウンドの貸借契約を解除し、賃料を徴収する方針を通告。また、境内のトイレも有料化するという徹底ぶりだ。問題は、こうした方針変更を、地元関係者との事前協議も無く、一方的に通告する点にある。

署名運動の発起人である元市議会議長の久保繁樹氏は、「地元が神宮を支え続けた共存共栄の歴史を蔑ろにしている」と憤る。地元との軋轢が深まる先月14日、宇佐神宮の責任役員である会社相談役の男性が、体調不良を理由に役員職の辞任を申し入れた。神宮の責任役員会は4人で構成され、代表役員である宮司を除く3人が事実上、宮司の任免権を持つ。関係者によると、この男性は小野氏の宮司就任に当初は反対を公言していたが、東京の神社本庁に呼び出された後に賛成に転じた。これにより、責任役員の過半数が本庁人事に賛同し、小野氏が神宮に送り込まれたという経緯がある。だが、自らが承認した宮司の罷免運動が地元で展開される事態となり、男性も責任を痛感していたようだ。親しい知人は、「(賛成派に転じたことは)『土下座しても謝り切れない』と悔やんでいた。神宮と地元の板挟みとなり、苦しんでいた」と明かす。男性の辞任は同月20日に受理され、責任役員の1枠に欠員が生じることになった。その代務者を選ぶのは、氏子の代表5人で構成する総代会である。神宮側の対応は素早かった。同月26日に総代会を招集し、代務者に神宮ナンバー2の権宮司を提案したのである。この権宮司は、田中総長が宮司を務める『石清水八幡宮』から送り込まれた“乗っ取り”の一味と地元で目される人物だ。極め付きは、神宮側が責任役員になれる条件に“宮司が推薦する者”という一文を加えた内規策定も提案していることだ。その意図は明らか。責任役員の過半数が小野氏の罷免に転じれば、宮司としての立場が危うくなる。その前に、自身の意に沿う者しか責任役員になれない仕組みを作り上げようという狙いが透ける。ところが、総代会はその日の回答を保留し、神宮側の提案を拒否する方向で調整中だ。総代の1人は、「内規を受け入れれば責任役員が責務を果たせなくなる。神宮側の提案はおかしい」と明かした。“宇佐の乱”の結末はどうなるのか? 本誌の取材に、小野氏側は期限までに回答することはなかった。
2018年3月24日号掲載
「これは完全に神社本庁による乗っ取りだ。本庁から送り込まれた宮司が、宇佐神宮を政治利用して、地元との関係を断ち切っている」――。大分県宇佐市のある神職はそう憤る。神職だけではない。今年1月には、市民団体が宮司の退陣を求める異例の署名運動を始め、既に5000筆以上が集まった。宇佐市の人口は約5.6万人。全人口の約1割が賛同した格好だ。宇佐の神職や氏子らがこぞって怒りの矛先を向ける宮司こそ、神社本庁の前総務部長である小野崇之氏である。小野氏は、田中恆清総長や『神道政治連盟』の打田文博会長に仕えた“子飼い”の部下。本庁時代に疑惑の不動産取引に加え、本誌が7年前にスクープした『伊勢神宮』からの震災被災地支援米の一部を神社本庁職員に配布した“猫ババ事件”を主導したとされる。左図に示すように、宇佐神宮では約10年前から宮司人事を巡る混乱が続き、代々宮司を世襲する到津家による訴訟沙汰にもなっている。その間隙を突く形で、小野氏が神社本庁から送り込まれてきたのは、一昨年2月のことだ。小野氏は着任早々、地元の県神社庁宇佐支部との協力関係を断絶。支部側が神宮内にあった事務所を別の神社へ移す異常事態が今も続く。氏子らの寄付金の取り纏め役だった支部の協力が得られなくなり、神宮では神事等の資金集めに支障を来しているという。その不足分を補う為か、小野氏は着任以降、様々な手口で自前の“財布”を確保する動きを見せている。その最たる例が、昨年、神宮の所有地に建設した有料駐車場だ。この駐車場により、参拝客が商店街を通りながら神宮へ向かう既存駐車場の動線が崩れ、ある商店主は「客足が遠退いて、売り上げが2~3割減った」と嘆く。更に今年、市に無償貸与していた宇佐神宮球場グラウンドの貸借契約を解除し、賃料を徴収する方針を通告。また、境内のトイレも有料化するという徹底ぶりだ。問題は、こうした方針変更を、地元関係者との事前協議も無く、一方的に通告する点にある。
署名運動の発起人である元市議会議長の久保繁樹氏は、「地元が神宮を支え続けた共存共栄の歴史を蔑ろにしている」と憤る。地元との軋轢が深まる先月14日、宇佐神宮の責任役員である会社相談役の男性が、体調不良を理由に役員職の辞任を申し入れた。神宮の責任役員会は4人で構成され、代表役員である宮司を除く3人が事実上、宮司の任免権を持つ。関係者によると、この男性は小野氏の宮司就任に当初は反対を公言していたが、東京の神社本庁に呼び出された後に賛成に転じた。これにより、責任役員の過半数が本庁人事に賛同し、小野氏が神宮に送り込まれたという経緯がある。だが、自らが承認した宮司の罷免運動が地元で展開される事態となり、男性も責任を痛感していたようだ。親しい知人は、「(賛成派に転じたことは)『土下座しても謝り切れない』と悔やんでいた。神宮と地元の板挟みとなり、苦しんでいた」と明かす。男性の辞任は同月20日に受理され、責任役員の1枠に欠員が生じることになった。その代務者を選ぶのは、氏子の代表5人で構成する総代会である。神宮側の対応は素早かった。同月26日に総代会を招集し、代務者に神宮ナンバー2の権宮司を提案したのである。この権宮司は、田中総長が宮司を務める『石清水八幡宮』から送り込まれた“乗っ取り”の一味と地元で目される人物だ。極め付きは、神宮側が責任役員になれる条件に“宮司が推薦する者”という一文を加えた内規策定も提案していることだ。その意図は明らか。責任役員の過半数が小野氏の罷免に転じれば、宮司としての立場が危うくなる。その前に、自身の意に沿う者しか責任役員になれない仕組みを作り上げようという狙いが透ける。ところが、総代会はその日の回答を保留し、神宮側の提案を拒否する方向で調整中だ。総代の1人は、「内規を受け入れれば責任役員が責務を果たせなくなる。神宮側の提案はおかしい」と明かした。“宇佐の乱”の結末はどうなるのか? 本誌の取材に、小野氏側は期限までに回答することはなかった。
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