「始まりはいつも些細なことで」
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光あるところに闇ありとはよく言ったものである。
私達が普段生活している周りにも闇はすぐそこに潜んでいるのだ。
ただ今の世界に光がありすぎて闇が出れないだけなのである。
そしてそのバランスが保たれているおかげで私達は平和に暮らしていけるのだが…
そのバランスがもし崩れたとしたらどうなるのだろうか?
たちまち光は闇に覆われ、この世に異形の者達が溢れるに違いない。
そう、それはたった些細なことでだ。
「よいしょっと……、まだこんなに…」
とある神社の倉庫で整理をしている巫女装束の女は、武智鈴香(たけち すずか)。
高校を卒業して大学へ行く気もなければ就職するわけでもなく、バイトをしながら
1人で生活をしていた。しかしそんな鈴香にも転機が訪れる。求人募集の広告に巫
女さんの仕事を見つけてやってみると、意外にも鈴香に合ってる仕事で、そのまま
続けることにしたのだ。今日は、神主の指示で朝から倉庫の整理しているのだが、
物が多くてなかなか作業が進まない。そして作業をしていると、アクシデントだっ
て起きることもある。
- 「あっ!」
ガシャーン!!
「ど、どうしよ…。」
無残に床に散った壷は、古い壷のようで壷には奇妙なお札が貼られていた。そして
幸い中身は空っぽだった。何も入っていないことに少し安心した鈴香だが、割った
ことには変わりはないので、あとで神主さんに謝ることにして、割れた壷を端っこ
に集めた。そして小さな破片を箒で掃いていたその時…。
「ねえ、あなた。」
「ひゃあぁっ!」
突然後ろからした声に振り向くと、そこに立っていたのは20代くらいの女性で、
なぜか裸だった。
「だ、だれですか!? いつからそこに?」
裸だけでもおかしいのだが、体中に青色の奇妙な形をした刺青を施しており、目は
猫のような縦長の瞳孔に金色の虹彩で、どう見ても人間の目ではなかった。そして
後ろからは蝙蝠ような大きな翼と、漫画で見るような先っぽがハート型の黒い尻尾
が見えていた。
「いつからって…、今だけど。
先に私が質問したいんだけどなー、
まあ、私を出してくれたお礼として教えてあげる。
私は夢魔のデライラ。よろしくね♪
ところで今は何年かしら?」
(む、むま? 何を言っているの?)
どう見ても頭がおかしい人だと思った鈴香は、この女を刺激しないよう今は聞かれ
ていることに答えることにした。
「い、今ですか? 今年は…2009年ですけど。」
「に、2009!!!!
そんな、まさか…、ああ…………」
その言葉と同時に鈴香の方に倒れこむ女。
「わわっ! ちょ、ちょっと!」
気を失った女を大事に抱え込むと、鈴香の目に黒い翼が飛び込んできた。
(でかっ! この羽、よくできてるなー。いくらなんでも作り物だよね。)
ここに置いていてもしかたないと思った鈴香は、女を自分の寝床へと運んでいき、
人助けだと思って様子を見ることにした。とてつもないことに巻き込まれてると
も知らず。
- 「……………………ん、…………ここは?」
ゆっくりと目を開けたデライラは、自分が布団の中で寝ていることに気付いた。
「あ、大丈夫ですか? 急に倒れるなんてびっくりしましたよ。」
「ここはどこなの?」
「ここは私がお世話になってる神社です。
たまたま今は神主さんがいないから本当に良かったですね。」
「…………そうだったの。ありがとう。
そう言えばあなたの名前を聞いてなかったわね。
良かったら聞かせてくれる?」
「私の名前ですか? 鈴香って言います。」
「すずか…………。
ねえ鈴香、少し頼みごとしてもいいかしら?」
「頼みごと…ですか。何でしょう?」
途端にデライラは起き上がると、鈴香の両手を掴んで顔を近づけた。
「そのままじっとしてるだけでいいの。すぐに済むから。」
そう言うとデライラは鈴香を強引に抱き寄せ、
「え、何!?」
鈴香の口を自分の口で塞いだのだ。
「んんんー!!」
突然のキスにパニックになり、本気の力でデライラを引き剥がそうとするが、
凄い力で私の頭と体を押さえておりびくともしなかった。
すると私の体に変な感覚が走る。
(あ…れ? 力が……抜けていく。
手も足も…力が入んない。
それになんだろ……、頭がボーっとして………。)
体中から力が抜けていき、心地よさが鈴香の体を包んでいく。
次第に眠気も襲い、このまま身を任せようと思った瞬間だった。
すると、デライラの力が緩んでいき、鈴香の口から離れたいったのである。
「うふふ、美味しかった。
ありがとう、鈴香。おかげで……ん?
ちょっと鈴香、大丈夫?
ほら、しっかりして! ちょっと!!…」
その時はまだ不思議な出来事としか思っていなかった私だが、
後に大変なことになるとも知らないで、そのまま眠気に身を任せるのであった。
- 「…………………う…………あ…………ん。」
しばらくして気が付いた鈴香は、今度は私が布団で寝ておりその隣にデライラが
いた。もちろん裸のままで。
「よかった心配したわ。まだ死なれちゃ困るもの。」
「えっ?…………………あ、そうだ!
デライラさん! いきなりキスするなんてどいうことですか!!」
「あはは♪ ごめんね。
久しぶりの精気だったから吸いすぎちゃった。」
「………………………………」
(今度は精気……。
突然、私の前に現れて倒れたと思えば、いきなりキスをしてきた。
そしてキスをされた時のあの虚脱感。この人……、本当に人間じゃない?)
鈴香はいまさらだがデライラが人であるかを疑問に思った。
「もしかして…、本当に人間じゃないんですか?」
「えー、だから最初からそう言ってるじゃない。」
それから少し落ち着いた鈴香は、デライラからいろいろな話を聞いた。デライラは、
戦国の世に生まれた西洋の悪魔らしく、日本でいうと妖怪の類だとか。なんで西洋
の悪魔が日本にいるのかというと、間違って魔界から降りた所がどうやら日本だっ
たらしい。そして法師に封印されて今にいたるのだと。この世に魔界やら妖怪を信
じていない鈴香だが、精気を吸われても、いきなりそんな話を信じられなかった。
そして話を進めていくと、鈴香はある重要なことに気が付いた。
「そういえばデライラさんって封印されてたとか言ってましたよね。
どうしてそんなことに?」
「どうして? そんなの簡単じゃない。
私は夢魔。悪魔であり、人々の煩悩の象徴でもあるのよ。
人の欲望を叶えたり、悪魔に変えることだってするわ。
だから人は私達のような者を危険だと思ったんじゃないのかしら?」
「えっ!? 人を悪魔にですか?」
「そうよ、人を悪魔に。あれ? どうかしたの? 顔色悪いわよ。
そっか、私が精気吸いすぎたせいだよね(笑)」
(この人、やっぱりおかしい。
もしかして私、大変なことに巻き込まれてるんじゃ…)
鈴香は、勇気を振り絞って最後の質問をしてみた。
「あの……人を悪魔にするってのはどういうことですか?」
その話を聴いた瞬間、デライラの顔が妖しく微笑む。
- 「気になるの? ふふふ…それはね……。
私達の魔力を人に与えるの。
そうするとあっという間に変わるのよ。
私達の同族にね。」
(どう…ぞく? やばい、この人、いやこの悪魔は本物だ。)
「そ、そう…ですか…。
わたしちょっと飲み物持ってきますから…。」
そう言うと鈴香は布団から出て、ふらふらと台所に向かおうとした。
(人を悪魔に変える?
もしそれが本当ならさっき言っていた言葉も…)
【「よかった、心配したわ。まだ死なれちゃ困るもの。」】
(もしかして……私を悪魔に?)
鈴香は一刻も早くこの部屋から、いやこのデライラから離れようとしていた。
飲み物を持ってくるという嘘をつき、神主を呼びに行くために。
(人を悪魔に変えるなんて信じてはいないけど、さっきのこともある。)
そして鈴香は障子に手を掛けて、横に引こうとするが…。
「ん………? ふんっ…………あれ? 立て付けが悪いのかな?
それならこっちの障子を…あれ、こっちも?
んーーー! あれ? どうして? どうして開かないの?」
鈴香がいくら横に引いても、どの障子も開かない。
いつもなら簡単に開く障子が、どれもいきなり開かなくなったのだ。
開かないというより、元から動く気配がないのだ。
そして障子の紙の部分が手に触れた時、変な感触が鈴香を襲った。
「えっ……堅い?」
紙の部分は、まるで壁を押しているのかのようで破ける気配はない。
続けて起こる異常な現象に、不安と緊張で体中から汗が滲み出てくる。
そしてさっきまでなかった鈴香の後ろでする妙な音。
ヒュッ………、ヒュッ………
まるで紐を振り回しているようなその音は、鈴香のすぐ後ろからしている。
(なにかいる!?)
さっきまでなかった後ろの異様な気配。
どう感じてもその気配は人間のものではない。
幽霊や妖怪を信じない鈴香にとって、初めての経験だった。
まるでカエルが後ろから蛇に睨まれている様に。
そしてゆっくりとデライラがいた方向へ振り向くと…。
「えっ・・・」
-
そこにいたのはデライラなのだが、背中に生えていた翼は見えず、変わりに何十本
もの触手が覗いていた。
「ふふふ……、どこへ行こうというのかしら?
私たち夢魔はね、人間の心が読めるのよ。
だから今あなたが飲み物を取りに行くなんて嘘でしょ。
悪いけど部屋には結界を張らさせて貰ったわ。
出ることもできないし誰も入ってこれない。
もちろん私達の声も聞こえないのよ。」
鈴香はその光景に声が出ないまま立ち尽くしていた。
デライラが何を言っているのかも耳には入ってこない。
「大丈夫? すごい汗よ。
まあ、今から濡れちゃうから関係ないんだけどさ。」
そしてそれは起きた。
風を切るようなスピードで、1本の触手が迫ってきたのだ。
「ひゃあ!」
触手は鈴香の袴へと入っていくと、太ももへと触手を這わせた。
その触手は生暖かく滑りを帯びており、私に嫌悪感だけを与えていく。
「最初はね、あなたが気絶してたところをやっちゃおうかなーって思ってたの。
だけどいきなりじゃやっぱりかわいそうだから、話をしてからにしようと思っ
たの。悪魔にするって言ってもね、痛くもないし、とっても気持ち良いのよ。
きっと気に入ってくれると思うわ。」
そして他の手足にも触手が絡みつき、あっという間に身動きが取れなくなった。
「いやぁ…離して……、お願いだから…」
鈴香は恐怖と嫌悪感で、とうとう涙を流してしまった。
「あらあら泣いちゃった。そんなに嫌がらなくても…。
あなたには感謝してるのよ。
封印をといてくれて、そのうえ精気まで頂いたんだから。
お礼にあなたを私の妹にしてあげる。」
そう言うとデライラはいくつもの触手を操り、私の体中に触手を絡ませていく。
「いやぁ、そんなこと………。ひゃんっ」
「うふふ、随分と可愛い反応するのね。
じゃあここなんてどうかしら。」
2本の触手が私の胸に這っていくと、乳首を中心に撫でまわした。
「ひっ! いやあぁぁぁっ!
ああっ、そんなとこ……触らないでぇ…。」
すると鈴香の中である感覚が襲った。
ドクン…
-
(どうして…こんなことに……、
あれ……なんだか…体……火照ってきたの?)
今度はいくつかの触手が鈴香の秘所へと近づいていく。
「えっ? そっちは、ああっ、やめてぇぇ! それだけはぁっ!」
デライラはニヤリと微笑えむと、触手を秘所へと…
ズプッ
「いっ! いやあぁぁぁっ!!」
鈴香も年頃の女なので自慰行為だってする。
しかし秘所に指以外のものを入れたことはない。
まだ男のモノも知らない鈴香には、異物が入った感覚と痛みしかしなかった。
「痛い痛いっ! 誰かぁ! 誰か助けてぇ!!」
痛みで本能的に助けを呼ばずに入られなかった。
助けを呼べば誰か来る、そんな気持ちしか今の鈴香にはなかった。
もちろんその声も外には聞こえず、誰も来ないが。
「あら、あなた処女だったのね。
私の触手で処女喪失なんて、あなたは光栄ね。
変な男に奪われるよりはよっぽどましよ。」
「うぅ……、お願いだからぁ……許して。」
しかしデライラは鈴香の頼みを無視し、触手を上下に動かした。
「痛っ!! ああああぁぁぁぁ!!
いたい! だれかぁ! たすけ、ああぁぁぁっ……!? 」
強烈な痛みしか感じないその動作は、鈴香の精神を大きく削っていく。
しかしそれは突然起きた。
さっきまでの強烈な痛みがスッと引いていき、変わりに快感が走ったのだ。
-
「それが魔の快楽よ。気持ち良いでしょ。
私達の触手から滲み出てる液体はね、人間を墜落させる成分を含んでるの。
その液体を飲んだり塗られたりしたら、たちまちその快楽の虜ってわけ。
ほら、もう痛みなんて感じないでしょ。あとはその快楽に身を任せれば良いの。」
「でも、そんなっ!
ああっ! きもち…いいわけ、ああんっ!」
もちろんそれは嘘である。
痛みは完全に快感へと変わり、鈴香の傷ついた精神を急速に回復させていく。
「うふふ、我慢しないで感じ続けなさい。人間は欲望と快楽に弱いんだから。
もうちょっとで私のほうも出るわよ。魔力をたっくさん含んだ私の体液がね♪」
「ひぃっ! いやぁっ! お願いだから出さないで!
私、悪魔になんかなりたくない!!」
「無理よ。もう出してるもの。」
「えっ!?」
そう、デライラの体液は触手を流れ、鈴香の子宮へと向かっていた。
「いやあぁぁっ!! 抜いてっ! 抜いてよ!
お願いだか…うっ……、あぁぁぁあぁ……いやぁ………………。
私の……お腹の中……何か…入ってる……、
うっ、あぁぁぁああぁぁぁぁ…………。」
デライラの体液は触手を通って鈴香の子宮へと流れて入った。
それはとても熱く、悪魔の魔力が込められたものだ。
「うあぁぁああぁぁぁ……………。」
(いやぁ……わたしが……悪魔に……。)
「あぁぁああぁ…………。」
(悪魔に……なる………………いや。
……………………なんで嫌なの?
悪魔は悪い奴。昔からそうだと聞かされた。
……………………悪魔が何かしたの?
よく分からないけど、悪の魔物って呼ばれるくらいだし。
……………………なんで悪魔になったらいけないの?
別に悪いわけじゃない、逆にこんなに気持ちが良い。
え? 気持ちが…良い?
……………………そうだよ……こんなに気もちが良いのに……。)
-
「あぁぁ……。」
自分が自分でない者にされる感覚、誰かに支配される感覚、
しかしそんな感覚と一緒に快楽という波が鈴香の心を変えていった。
「どう? 私の体液。
あなたの体液もじきにそうなるのよ。
嬉しいと思わない?」
(嬉しい? 私、喜んでるのかな……。
でも、気持ち…良い……。デライラさんの体液……きもち……いい………。
ふふ……ふふふ…………なんだかすっごく楽しい気分になってきた。)
鈴香の子宮壁から体中へと流れていくデライラの体液。
その体液は鈴香の心だけでなく、体も変えようとしていた。
「あっ、ああぁぁぁぁ!! な、なにか…くる…。」
すると鈴香の体中に奇妙な青色の刺青が浮かび上がっていく。
デライラと少し違う形だが似たような刺青だ。
(な、なにこの模様……。
私の体中に……………………ふふふ…なんだか素敵♪
ん? 今度は背中が……。)
続けて背中から何かが出てくる様な感覚が鈴香を襲う。
「うっ、わ…あ……いやぁぁぁぁっ! せなかっ! せなかがぁっ!」
すると背中に2つのすじが入り、中からデライラと同じ漆黒の翼が生えてきたのだ。
「うぅぅぅぅぅ…………………………、あ、なに…これ? はね?」
新しく生えたその翼を、思い通りに動かしてみると。
「これ、私の思い通りに動く……。
ふふ……それにとっても綺麗だわ♪」
序所に変わっていく体を受け入れていった鈴香。
いつの間にか人間だった頃の目はデライラと同じ、縦長の瞳孔に金色の虹彩に変わ
っており、鈴香をより悪魔の姿へと近づけていった。
「うふ……ウフフ………………」
デライラの体液は枯れることなく、鈴香の子宮に流された。
心も体中の体液も、完全な悪魔へと変えるために。
そして最後に、お尻からあのハート型の尻尾が生えると、
鈴香の人間だった時は心は砕け散った。
-
(あはは♪ きもちがいいわぁー……)
完全に変貌を遂げた自分の体を魅入る鈴香。
尻尾も翼も、体から溢れてくる魔力もどれも新鮮な感覚で、
鈴香に悪魔の喜びを植えつけていく。
(フフッ……ウフフ、悪魔になるの…なんで嫌だったのかしら?
昔の私って本当に馬鹿ね。こんなに美しい体になれるのに…………。
あ、そうだ。デライラ姉さんにお礼を言わなきゃ。
あれ? 私に姉なんていたっけ? ま、いいや。固いことはなしなし。)
そしていつの間にか触手を引っ込めたデライラは鈴香に近づいた。
「どう鈴香、夢魔になれた感想は。」
デライラが鈴香の顔を覗き込むと、顔は無表情で生気を感じるさせるような物では
ない。不安になったデライラは、鈴香に呼びかけてみた。
「ねえ、大丈夫? あれ? どうしちゃったのかな。
もしかしてやりすぎて心が壊れたんじゃ…」
すると鈴香の肩がピクッと動くと、突然飛び上がった。
「きゃあっ!」
「あはっ♪ 引っかかった引っかかった♪ 楽しい♪
姉さんの言ったとおりだったわ。
ほんと、悪魔になるのって気持ちが良いのね♪
ああん♪ はやく誰かを犯したいー。」
「もーう! 脅かさないでよー。本当に心配したんだから。
ま、いいわ。ようやくあなたも目覚めてくれたのですから。
それじゃあさっそく人間達を…………。
うふふ♪ ねえ鈴香、この神社に近づいてくる者がいるわよ。」
「あ、ほんとだ♪
私より年下の女の子みたい。」
夢魔となった鈴香は、デライラどうよう人間の心を読む能力が備わり、近づいてく
る者の位置と心を読めるようになったのである。こうして鈴香は夢魔となり、闇が
光を支配する手助けをするのであった。
終
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