海外FXの税金は多少少なく申告してもバレないのでは。そう思っている方は非常に危険です。
国内海外にとわず、FXで利益を上げた場合は必ず確定申告をしなければいけませんし、利益を出している以上ほとんどの方が確定申告をしなければいけません。
今回はなぜ海外FXで税金がバレるのか。ということを理解するとともに、脱税した場合のペナルティを解説します。
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海外FXの利益はなぜバレる
税務署の目が光る国内FXとは違い海外FXは日本の法律が届かないからといって海外FXで得た利益は税務署にバレないと思っていたら痛い目を見ることになります。
海外FXで得た利益は雑所得に該当するため総合課税(累進課税)の対象となります。その税率は15%〜55%と稼げば稼ぐほど税金が高くなっていく仕組みですが、日本国内に居住している以上日本の法律の対象となるため海外FXを使っているからといって税金を払わなければペナルティを食らうことになります。
近年マネーロンダリング撲滅に世界中が躍起になっていることもあり数十年前までは可能だった脱税も今やほとんどすべてが無謀の策略になっています。
CRSによる情報開示
CRSは、外国の金融機関に保有する口座を利用した国際的な租税回避を防止するために、経済協力開発機構(OECD)が策定した、金融口座情報を自動交換する制度です。
現在、日本を含む100以上の国・地域がCRSに参加し、参加各国に所在する金融機関は、管理する金融口座から税務上の非居住者を特定し、当該口座情報を自国の税務当局に報告する必要があります。報告された情報は、各国の税務当局間で相互に共有されます。CRSは、参加各国の国内法に組み込まれ、現地法令として適用されます。
CRS(Common Reporting Standard=共通報告基準)の略称で2015年(平成27年)から施行されています。
CRSは諸外国の金融機関と日本の金融機関が相互に情報交換をし合い、脱税やマネーロンダリングを撲滅するためにOECDが策定した日本を含む100以上の国々で締結されている制度になります。
例えばもし海外の銀行口座を保有しているとしても日本の国籍を保有している限り、税金は日本の税率が加算されることになります。
海外の銀行口座を保有していてもCRSに加盟している以上、自動的に日本の税務署に口座の残高や名義などの情報が送られるので脱税やマネーロンダリングをすることはできません。
国外送金等調書による税務署の把握
金融機関などを通じて国外へ送金したり、国外からの送金などを受領したりする場合、当該金融機関に対して告知書を提出しますが、それを受けて金融機関が作成し、税務署長に提出する書類を国外送金等調書といいます。適正な課税の確保のための制度で、調書には送金者、受領者、本人口座番号、取次金融機関、金額、送金目的などが記載されます。なお、100万円以下の国外への送金、本人口座からの振替による国外送金、国外からの送金等の受領にかかる為替取引などについては、調書の提出が免除されています。
私たち海外FX利用者は必ずどこかの金融機関を通じて海外FXへと入金しています。その際に金融機関は海外送金の場合100万円以上の送金に対しては税務署へ国外送金等調書という書類を通じて報告する義務があります。
その書類には
・送金者(海外FX入金者)
・受療者(海外FX業者or収納代行)
・銀行口座情報
・取次金融機関
・目的
・金額
などが明記されています。過去に100万円未満の送金であればこの調書は税務署に通達されないと見越した人間が100万円未満の金額を複数回に分けて海外FXに入金していたケースもありましたがもちろん税務署には通達が行きます。
100万円未満の送金は税務署への報告義務はないものの金融機関の取引履歴にはしっかり残っていますし、金融庁の管轄下にある日本のすべての金融機関は情報を提示しろと言われたら提示せざるを得ないのです。
税務署から金融機関へ『国外送金等に関するお尋ね』の通達が金融機関に入ればその人が確定申告をしているのか、どのような取引をしたのかが一発で明確になりますので安易な根拠で脱税をしようとするのは無謀です。
国外送金等調書まとめ
・国内外の資金の流通を明確にするため
・金融機関は税務署に海外送金や海外からの入金の報告の義務がある
・国外送金等調書を下に脱税かどうかを判断する
脱税した場合のペナルティ
海外FXで利益を得たにも関わらず確定申告をしなければそれ相応のペナルティが課されます。
ペナルティとしては
・無申告加算税
・重加算税
・延滞税
・脱税起訴
の4つがありますが中での脱税として起訴されると実刑判決に及ぶ可能性もありますので確定申告は必ずしましょう。
重加算税
重加算税とは附帯税の一種で国税通則法68条に規定されているペナルティです。
第65条第1項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する
重加算税の税率は追加本税の35〜40%になります。
重加算税に該当するのは
・利益を過少申告した場合
・本来存在しない経費を水増し計上した
などの意図的な隠蔽に対して加算される税金です。ポイントはうっかりではなく『意図的に』やったと判断された場合に課されるペナルティです。
うっかりミスなどでも意図的にと判断されてしまう可能性も十分にありますので特に海外FXでの利益額が大きな人は確定申告をする際には税理士や会計士などを雇って間違いのないように申告をする必要があります。
無申告加算税
こちらも重加算税の1つになります。
無申告とはその言葉の通り期限内に確定申告をしていないことです。
確定申告は例年1月1日から12月30日の損益を翌年2月16日〜3月15日の間に税務署に申告して税金を納めることですが、この期限を過ぎても確定申告をしていない場合には無申告加算税となってしまいます。
しかし確定申告をしていないからと言って3月16日に税務署から通達が来るということはありません。翌1ヶ月の間に自主的に確定申告をすれば無申告加算税の対象とはなりません。
確定申告をしていなかったからといって『ま、いっか』とはしないで必ず翌月中に確定申告をしに行きましょう。
2020年の確定申告はコロナウィルスの影響で2020年4月16日(木)まで延期となりました。
国税庁HPより
無申告加算税の税率
納税金額 | 税率 |
---|---|
50万円以下 | 15% |
50万円を超える金額 | 20% |
これらの税金は納税金額に対して加算されるため仮に本来100万円の納税金額があった場合
50万円×15%=75,000円
51万円×20%=98,000円
合計:173,000円
これらのお金は本当に無駄なお金なので税務署の調査の前に確定申告をしていない場合には自主的に確定申告をしに行きましょう。
上記の無申告加算税はあくまでも税務署などの調査によって確定申告をしていないことがバレてしまった場合ですが自主的に確定申告をしに行けば税率は5%にまで下がります。
5%であれば仮に納税金額が100万円だとしても5万円で済みますので確定申告をしていない年に思い当たりのある場合には必ず自主的に確定申告をしに行きましょう。
延滞税
延滞税とは本来納めるべき日時までに税金を納めなかった場合に発生する税金です。
延滞税=納めるべき税金×税率×(延滞した日数/365日)
確定申告終了の3月15日までに税金を納めていなければ延滞税が適用されることになりますので無申告の方は延滞税が同時に発生しているということです。
延滞税は100万円を3ヶ月延滞しても12,000円程度にしかなりませんが長引くほどそれだけ税金も高くなるので確定申告をしていない人は無申告加算税と延滞税の両方を食らうことになります。
早めの申告と納税をするようにしましょう。
延滞税の計算方法は複雑なのでここでは割愛しますがもし気になる方がいればこちらの国税庁HPをご覧ください。
脱税認定で起訴される場合
納税は日本国憲法第30条に定められている通り国民の義務です。個人であれば所得税法違反であり、法人であれば法人税法違反になります。脱税罪という罪はありませんがこれら2つの税法違反には刑事罰も予定されています。
脱税と租税回避は似ているようで違います。脱税と租税回避の違いは『嘘偽りやその他不正行為』かどうかがポイントです。
例えば海外FXで利益を出しているのにも関わらず経費の水増し計上や過少申告などを意図的に、故意に行なったと認定されれば追加で税金を請求されることになり、最悪の場合には脱税(税法違反)として刑事訴訟を受ける可能性もあります。
脱税には時効がありますが督促状が届き次第新たな時効の開始になりますので時効はあってないようなものです。
基本的には10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科(両方)が科せられることになります。
金銭だけであれば問題なく、かつ保釈金を払えば懲役免除になる方もいるかもしれませんが実際に懲役ともなってしまえばそれだけの機会損失の方がマイナスになってしまいます。
脱税認定をされる前に必ず確定申告をするようにしましょう。
過去に脱税してペナルティとなった事例
海外FXで4億円を脱税した主婦
池辺雪子さんという3人の子供を持つ主婦は650万円の元本を元にわずか4年間で4億円の利益を上げました。
しかし2006年12月に国税庁の調査が入り4億700万円に対する追加支払額は3億1900万円に登りました。
彼女は当時証券会社に税金に関して聞いたところ『為替なのでこれで税金を払っている人はいません』と言われ、半信半疑のまま万一のため税務署に申告をした翌日に国税に摘発されてしまいました。
当時はFXに対する税金の法律が曖昧だったということもあり意図的に脱税を試みたわけではないものの、国税局からしても大手柄になる人物だったことは間違いありません。
せっかく稼いだ4億円も税金によって水の泡になりました。
現在はFXに関する税金は明確なのでこのような事例はありませんが意図的に脱税しても帰ってマイナスになることになるということですね。
4億5000万を所得を隠した元ヒルズ族
磯貝清明さんは2000年代前半の円安の風潮を受けて当時『日本一ポンドを持つ男』として知られていました。当時は六本木ヒルズに居住していましたが2008年10月、東京国税局査察のマルサが強制捜査をしました。
合計4億5000万の所得を隠蔽していた磯貝氏は1億6000万円の税を免れたとして摘発された。
2008年といえばリーマンショックの年であり、磯貝氏の残高も一時10億円を超えていたが数千万円まで減少していた矢先に
1億6000万円の納税と重加算税6500万円、刑事罰として課された罰金3500万円、利息にあたる延滞税7000万円
合計3億3000万円の負債を負うことになってしまいました。
1億4000万円の脱税で逮捕されたFX自動売買の販売屋
溝田耕治氏はなんと2年間で3億6800万円の利益をFXの自動売買で稼いだというのですから驚きです。
逮捕容疑はパソコンを使ったFX取引で得た2009~10年分の所得約3億6800万円を申告せず、約1億4千万円を脱税した疑い。
地検によると、溝田容疑者は当時同県伊豆の国市に居住し、10年12月にシンガポールに住民票を移した。名古屋国税局が昨年、強制調査(査察)に着手していた。
関係者によると、溝田容疑者は取引に十数人の知人名義の口座を使用。数万円の謝礼を支払って口座を譲り受けた疑いも持たれている。地検は溝田容疑者が当初から利益を隠蔽する狙いでこれらの口座を使い分けていたとみている。
溝田容疑者は親族が代表の自動車部品製造会社(伊豆の国市)で専務を務め、三島市内にある同社の倉庫にパソコンを複数台置き、自動でFXを売買できる投資ソフトを使って取引をしていたとみられる。利益は海外の口座に送金するなどしていた。
所得税法は国内に住所がないか、1年以上居住していない人を「非居住者」と規定し、日本の課税が限定される。ただ日本に住んでいた際の所得については、その後海外に住所を移しても日本で課税される。
当時はFX会社に致命的な欠陥がありそのバグをついたのがこの自動売買でした。
アービトラージを基本としていましたが1回の取引で1.5%の利率が出ることから月間利率33%と驚愕の数字です。
溝田氏はシンガポールに移住し住民票も移したもののお金を稼いだ場所が日本であったため日本国内の法律が適用されるため名古屋国税当局に強制捜査されて逮捕されました。
結果的に懲役1年6ヶ月(執行猶予4ヶ月)と罰金3000万円の判決を受けることとなりました。
海外のペーパー会社を利用した脱税事件
小玉昭彦氏は2003年〜2005年までの2年間で得た7億円のうち2億数千万円の所得を隠したとして所得税法違反として起訴されました。
シンガポールに保有する自分名義の口座で取引していたから安心だと思っていたと語った小玉氏はバージン諸島に設立したペーパーカンパニーにも運用益を隠していたたこともあり懲役2年(執行猶予3年)と7500万円の罰金の有罪判決を受けています。
海外FXの脱税に関するまとめ
海外FXで得た利益は必ず確定申告をするようにしましょう。タックスヘイブンや外国だからといって税金を支払わなくていいかといったらそうではありません。
海外に法人を建てたとしても実際に日本国内でお金を使わなければ意味がありませんので出金する際に必ず足がつきます。
脱税と節税は紙一重ですので曖昧なところは専門の税理士や会計士と随時相談しながら経費計上が可能かどうか。損益通算が可能かどうか。慎重に行っていく必要があります。