加山雄三と江原達怡のこと
『メッセンジャー』には、かつての東宝青春映画の人気スター・加山雄三が、海外出演、特別出演を除き、八四年の『零戦燃ゆ』以来十五年ぶりにスクリーン・カムバックしている。警察官を定年退職し、〈トーキョー・エキスプレス〉の仲間に加わり、メンバーに無線でアシストをするナビ・島野役だ。
加山雄三といえば東宝青春映画の最高傑作シリーズ『若大将』シリーズが有名。『メッセンジャー』の監督・馬場康夫は『若大将』シリーズの大ファン。それで今回、直々に出演を依頼したとか。「加山さんで映画が撮れる、こんなにうれしいことはありません」とすっかりファンの心境になっている。
『若大将』シリーズでバリバリ活躍していた頃の自分の年齢のような若いスター、草なぎ剛や飯島直子、矢部浩之、京野ことみらに、良き兄貴のように、また理解ある父親のように、そして友情の絆で結ばれた仲間のように接する加山雄三=島野の存在は『メッセンジャー』の魅力の一つだ。
加山雄三を迎えた馬場監督はもう一つ粋な配役をみせてくれる。〈トーキョー・エキスプレス〉のメンバーの溜まり場となっているカウンター・バー「P's ダイナー」のバーテン役に江原達怡(えはらたつよし)を起用してくれたのだ。これは馬場監督と同じ世代、現在四0代のファンにとってはたまらなくうれしい、のだ!
加山雄三と江原達怡。この二人、慶應大学の後輩先輩、そして『若大将』シリーズの大学の同級生で、加山の若大将をいつもサポートするのが江原演じるクラブのマネージャー江口(シリーズ一作目の役名は田胡)という関係の二人なのだ。公私に渡る付き合い。馬場監督は加山の出演オーケーの返事をもらってすぐに江原の起用を思い立ったという。だから『メッセンジャー』は八一年の『帰って来た若大将』以来、十九年ぶりとなる加山&江原の名コンビ復活映画なのだ。若いファンだけではない。四0代ファンもいまから公開が楽しみなのだ。
二人が十九年ぶりに映画で顔を合わす場面の撮影の日、馬場監督は粋なことを思いついた。バーテン役に江原が扮することを加山雄三には内緒。いざ撮影開始のそのとき「バーテン役の江原達怡さんが入ります」と助監督に紹介させた。それを聞いて加山雄三が驚いたのは言うまでもない。「なんだよ~」と満面に笑み浮かべ喜んだ加山雄三の表情が印象的だった。
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