とんねるずも輩出『お笑いスター誕生!!』を語ろう

コロッケ×中尾ミエ×赤尾健一
週刊現代 プロフィール

10週勝ち抜き直後に逮捕!

コロッケ 確かにあの番組には、ミエさんを中心とした家族的なつながりがありましたよね。

勝ち残れず、その週に出番のない芸人も、楽屋に弁当食べに来てましたから。貴明&憲武(現とんねるず)にネタ見せの場を紹介したのもミエさんなんですよね?

中尾 赤坂のナイトクラブね。当時は、半分アマチュアみたいな芸人さんたちがネタを披露できる場がなかったですから。今思い返してみると、結構面倒を見ていましたね。

コロッケ 僕なんて、まだ仕事がない時期にミエさんのお口添えでドラマにまで出させてもらってますからね。『お笑いスタ誕』にずっと出演されていたミエさんから見て、特に印象的だったことは何ですか?

 

中尾 う~ん、色んなことがありましたけど、やっぱり大木こだま・ひかりさんの件ですよ。10週勝ち抜いて、楽屋でのお祝いが終わったあと、すぐに警察が来て私の目の前でひかりさんが逮捕されちゃったんだから。

赤尾 実はあれ、本番直前に警察から俺に連絡が来てたんだよ。「大木ひかりを覚せい剤取締法違反容疑で逮捕します」って。

でも大事な10週目だったから、「ごめんなさい、グランプリが獲れるかどうかは分からないけど、結果が出るまではやらせて欲しい」ってことを頼んだら、警察も話の分かる方で待機しててくれたんだ。

そして、こだま・ひかりは見事グランプリを獲った。でもひかりはすぐに警察に連れて行かれたんだ。本人からしたら、まさに天国から地獄だよね。あれはドラマの1シーンのようだった。

中尾 私は残されたこだまさんが気の毒でね。そしたら、新しい相方と組んで、テレビに出てきたので本当に嬉しかった。

コロッケ 大木こだま・ひびきさんは今もご活躍されてますよね。というか、今の芸能界の主流を占めているような人たちは、ことごとくこの番組から出ている。とんねるず、ウッチャンナンチャン、シティボーイズ。

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中尾 挙げたら、錚々たる顔ぶれよね。イッセー尾形、でんでん、小柳トム(現ブラザートム)と言った、今はお笑いとは別の世界で活躍している個性派も輩出してますしね。

生き残ってる人が多いのは、あそこで厳しさを叩きこまれたからじゃないかしら。

コロッケ 僕が、なんとかしなきゃと思って必死で声帯模写を習得したのも、いまだに新ネタを作り続けているのも、あの番組のおかげです。そういえば、ダウンタウンも出てたんですよね?

赤尾 そうそう。番組後期のオープントーナメントサバイバルシリーズに出ていたんだけど、彼らの漫才は完璧だったね。オーディションでネタを見て、何も言うことがなかったのは彼らだけじゃないかな。

「何にも問題ないよ。むしろ、たった今俺は君たちのファンになったよ」って伝えたら、言われて当然って感じで全然喜ばないんだよ。それにもびっくりしちゃったね。

コロッケ 当時から、今と変わらなかったんですね(笑)。出場はできなかったけど、デーモン小暮も、オーディションを受けてたそうですね?

赤尾 何度受けても落とされたから、お笑いを諦めたらしいんだよ。オーディションでは素顔だったんだと思う。だけど彼はその後ずっと白塗りだろ? 彼が誰だったのか、オーディションで何をやったのか、いまだに分からないんだよ(笑)。

中尾 審査員も豪華でしたよね。赤塚不二夫さん、タモリさん、桂米丸さん、京唄子さん、鳳啓助さん。あらゆるお笑いジャンルの第一人者が、かなり厳しくジャッジしてた印象がありましたね。

赤尾 審査員は大物ばかりだったけど、威張るような人はいなかったし、みんな協力的で真剣だったね。赤塚さんは、独特の感性を持ってる人だから他の審査員と意見が違うこともあったけど、赤塚さんの思う通りにジャッジしてもらってたよ。

コロッケ かなり豪華なメンバーが揃っていた『お笑いスタ誕』ですが、放送していたのは6年と意外と短いんですよね。やっぱり視聴率が落ちてきたんですか?

赤尾 ピークに比べたら落ちたけど、思ってたよりは落ちなかった。それよりも、人材が出尽くしてしまったというのが大きい。

新たなタレントの供給ができずに、マンネリになっていったから終わりにしたんだ。ただ、番組出身者のその後の活躍は嬉しかったね。

中尾 近いうちに、ぜひ同窓会やりましょうね。

コロッケ ぜひ!

赤尾 俺そういうの苦手なんだよな(笑)。

コロッケ
'60年熊本県生まれ。'80年『お笑いスター誕生!!』に出演し、芸能界デビュー。その後、ものまね四天王の一人として一世を風靡。レパートリーは300種類以上
中尾ミエ(なかお・みえ)
'46年福岡県生まれ。'61年『可愛いベイビー』で一躍人気歌手に。現在もコンサート、バラエティ、ドラマと幅広く活躍。『5時に夢中!』(MX)に出演中
赤尾健一(あかお・けんいち)
'38年千葉県生まれ。'62年慶大文学部を卒業し、日本テレビに入社。'74年に独立し、制作会社・日企を設立。『お笑いスター誕生!!』、『びっくり日本新記録』などを演出

「週刊現代」2018年3月31日号より