IPPONグランプリの回答に見る設楽統のサド学論 | コントリーブログ
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2011-06-12 02:38:56

IPPONグランプリの回答に見る設楽統のサド学論

テーマ:Column
まずは、昨日放送されたIPPONグランプリにおける設楽統の回答を振り返ろう。

【一問目】母からの手紙「P.S.で書く事か?何が書かれてた?
・ P.S.とは、パンティー&ショーツなり
・ P.S.もうすぐ世界をなんとか出来そうです
・ P.S.割りばしでムカデをつかまえてガスコンロで焼きました
・ P.S.ハナの奥から鉄の臭いがします

【二問目】このストレッチ1年続けるとどうなる?(ヒジをカベにあてながらアキレス腱を伸ばすストレッチの画像)
・ 長袖、長ズボンがもらえる
・ ヒジとかデコとかよぉ…という会話が増える
・ 前のカベが上がって冒険の旅が始まる
・ 矢印はお尻にささる
・ 喜びも悲しみもこのポーズになる

【三問目】写真で一言(マラドーナがサッカーボールを抱えながら目をひんむいている写真)
・ 休けーい!
・ ヤロウども、あそこにもボールがあるぞぉ~
・ 甘いパンとしょっぱいパン買ってきてー

合計7本 7本/12回答 58%

 大喜利というのは、自らの指向性がとてもわかりやすい形で出る。それは、コントや漫才などのように他者との掛け合いがないのもなので、相手のキャラクター等を考える必要がないため、「自分が思いつく最も面白い方向性」を表現するのに優れているからである。(そのため常に一人でネタを考えているバカリズムが強いのは納得できる)IPPONグランプリという番組は、そうした芸人個体の「素材」の面白さを引き出す演出がなされている番組である。
 そして、昨日のIPPONグランプリの出場者であるバナナマン設楽統は、芸人界きってのSキャラである。しかしながら設楽統のSというのは、バナナマンのネタを見れば特に顕著にわかるが、いわゆるSと呼ばれるものではない。「サディスト」と一言に言っても、様々な種類が存在するのではないかと私は思う。お笑い芸人を例に出して考えてみると、ダウンタウンの浜田雅功のような最初から威圧的なSが一つ。極楽とんぼ加藤浩次のような、にじり寄るタイプのSもある。また、ナインティナインの矢部浩之が見せる愛情で包むように見せながら突き放すというSもあるだろう。様々な「S」がある中で、バナナマン設楽統のSというのは、精神面をえぐるようなSなのである。表面的にそれとわかるようなSではなく、深く突き刺さるようなものなのである。バナナマンでの役割によって、相方の日村勇紀が弄られる様子をよく見かけるが、それは日村勇紀が弄られ役だからというわけでなく、設楽統が生粋のSなため、日村勇紀がコントロールされているのではないか。今回のIPPONグランプリの設楽統の回答から、いかに内面に訴えかけるSを仕掛ける指向性のなのかを検証していこう。
 【一問目】での回答は、わかりやすく設楽統の指向性が表れているので割愛しよう。私が注目するのは、【二問目】の最初の回答である「長袖、長ズボンがもらえる」だ。この回答にSの要素があると思う人はおそらく少ないだろう。しかし、この回答は設楽統のSの指向性を最も表現した回答だと私は思う。この回答に至った経緯を考えると、彼の頭の中に「半袖、半ズボンは情けない」という美学がベースとしてあるのだろうと考えられる。そのため、その「情けなさ」を端的に際立たせるために「長袖、長ズボンがもらえる」という回答をしたのだろう。設楽統のSには常に「情けない」や「みっともない」がつきまとう。他者に『「情けないこと」や「みっともないこと」をさせる』ことが設楽統の笑いなのである。こうやって表現すると、非常に酷い人間ということになってしまうが、誤解しないでもらいたい。どういうことかというのは、次のパラグラフでまとめよう。
 設楽統のSには根拠があると私は思う。それは、『「情けないこと」や「みっともないこと」をしてはいけない。』という彼のハッキリとした美学である。設楽統は、「○○してしまうと、情けない」という考えを常に抱えている人間なのではないかと私は考える。そのため、自分は絶対にその情けないことをしないように自らを完璧に律している。自分のスキを一切排除しようという考え方で生きているのだ。こうして他者からの見え方だけでもスキをなくす事で、周りの人間のほんの一瞬のスキを指摘しやすくなる。普通の人では、指摘しても説得力がない事でも、設楽統が指摘する事によって妙な言葉の威力が生まれてくるのである。言う人が変われば、同じ事を言っていたとしても伝わり方が違うというのはみなさんもよく感じる事だろう。設楽統は『「他人から見てみっともないこと」を絶対にしない。』というブレない根拠があるため、言葉に説得力がある。それが、相手の内面をえぐり出すようなSとして表出されるのである。残念ながら今回のIPPONグランプリでは、そういった回答があまりなかったように思える。(特に三問目の「写真で一言」は写真のインパクトが強すぎたため、そこからあぶりだすような「情けなさ」を回答として出すのが難しかったのだろう)次回のIPPONグランプリにもぜひ出場者として出てもらいたいと願う。


P.S.
世界のナベアツは、落語家に本格転身したんじゃなかったでしたっけ?