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ディクトグロス

リスニングの練習にどうせ時間をかけるのなら、同時に文法や語彙も鍛えてしまおうというトレーニングが「ディクトグロス(dict-gloss)」と呼ばれる方法で、このところ大変注目されています。
ごく簡単に言うとディクテーションをペアあるいはグループで行う活動です。ディクテーションについては別記事でも紹介しましたが、英文を聞いてそれを書き起こしていくという伝統的なリスニングのトレーニング法ですね。
では、このディクテーションを複数名で行うとはどういうことなのでしょう。手順を確認してみます。

苦手だった英語でほぼ満点を取って国立千葉大学医学部に現役合格した話。
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ディクトグロス(dict-gloss)の方法

まずはリスニングを行います。はじめは普通に音声を流し、全体像を把握しようとします。
集中してきいてください。
もう一度リスニングを行います。今度は、キーワードになりそうなことを英語でメモしながら聞いていきます。

TOEICではリスニング中にメモをとることは許されていませんが、英検ではメモを取ることが可能です(TOEFLでは2015年にメモが解禁されました)。メモを取りながら英語を聞き取るのは初めは難しいものです。ですが、聞いたことをすべて覚えておくのも、それはそれで難しいものですので、聞きながらメモをとる技術もここで身につけておければ良いですね。

2回のリスニングが終わったら、メモを見ながらインプットの内容を再生します。

複数で行う活動なので、それぞれの聞こえ方に差がでてくるかもしれません。違う文のように聞こえていたり、聞き逃しや単語のずれもあるでしょう。その差をうめるように、話し合いを行いながら文を完成させていくのです。
メンバーの文法力や単語の知識をすべて使い、メモに残されたヒントも参考にしながら、完成を目指しましょう。

そのプロセスでは、「うまく聞き取れなかったけれど、文脈的におそらくここは進行形だろう」とか「ここは不定詞だと思うので、動詞は原形のはずだ」とか、相手の発言によって自分では見落としがちなことに気がついたりすることもでき、楽しく学べる時間になるはずです。
このディクトグロス、上級者になると参加者どうしの話し合いもすべて英語で行われます。より負荷の高いトレーニングになりますが、その分効果の高い活動です。

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ディクトグロスの効果

そもそも「言語を聞いて理解する」と言うとき(それが母語であっても)、純粋に音だけですべてをキャッチしているわけではありません。文脈や状況、文法的な知識を使いながら音を補う形で理解を進めているはずです。その意味では、知識の使われ方がわかるこの活動はとてもおもしろいものだと言えるでしょう。
ある研究によると、ディクトグロスを通してリスニングの力だけでなくライティングの能力にも向上がみられたということです。
英語4技能が注目される中、今後広まっていく可能性のある方法ですね。

監修:田浦 秀幸
シドニー・マッコリー大学で博士号(言語学)取得。大阪府立高校及び千里国際学園で英語教諭を務めた後、福井医科大学や大阪府立大学を経て、立命館大学大学院・言語教育情報研究科・教授。伝統的な言語手法に加えて脳イメージング手法も併用することで、バイリンガルや日本人英語学習者対象に母語や第2言語習得・喪失に関する基礎研究に従事。その研究成果を英語教育現場に還元する応用研究も行っている。


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