[新型コロナ] GW 田植え共助で対応 帰省自粛呼び掛け コロナ禍の自治体、JA
2020年05月01日
配達する苗の生育を確認する山崎さん(広島県東広島市で)
大型連休が始まる中、各自治体やJAが、田植えの手伝いで例年、帰省していた農家出身の都市住民らに「今年は帰省しないでほしい」と呼び掛けを強めている。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためだ。自治体や専門家は、人手の確保へ地域での話し合いや、作業委託などの対応を呼び掛ける。
大型連休は水稲の苗準備や田植えと重なり、子や孫が帰省し手伝うことが多い。「平時ならば帰省してほしいが、今回は命を守る活動を優先してほしい」(島根県の普及指導員)。山形県の農業法人代表は「田植えは恒例行事で帰省をしてくれると地域が盛り上がるが、今年は我慢してほしい」と話す。
滋賀県や新潟県は、田植え帰省の自粛を特別に呼び掛ける。滋賀県はインターネット交流サイト(SNS)で発信し、県内農家らには田植えに支障を来さないよう集落の営農組合などで助け合うことを要請。それでも難しい場合は普及指導センターが相談に応じる。
新潟県も帰省や来県を自粛するよう、JAなど県内100の農業関係団体に通知した。JA新潟中央会はすぐに県内23JAに伝え、JA役職員や農家と情報共有する。
労働力不足も懸念され、農業法人や担い手らが乗り出す地域もある。広島県東広島市で40ヘクタールの米を作る「農事組合法人重兼農場」は、苗を100戸の農家に配達する中、周辺農家が困っていないか声掛けする。
代表の山崎拓人さん(31)は「困るという話はまだないが、いつも声を掛けている。田植えができない場合は急きょでも受ける。農村には共助の力がある」と話す。インターネットの接続など困り事相談にも応じている。人と会う機会が減り寂しい高齢者らの安心感につなげたい考えだ。
5月は全国各地で田植え作業が本格化するため、地域内での人材確保が重要になっている。
近隣の集落営農組織に頼むなど地域内で情報共有し人材を確保してほしい。実家にとどまり手持ち無沙汰な学生がいることが想定される。農家でなくても、そんな若者が農業に関わる意義は大きい。最初は慣れなくても少しずつ役立つと思う。地域で話し合って考えてほしい。
大型連休は水稲の苗準備や田植えと重なり、子や孫が帰省し手伝うことが多い。「平時ならば帰省してほしいが、今回は命を守る活動を優先してほしい」(島根県の普及指導員)。山形県の農業法人代表は「田植えは恒例行事で帰省をしてくれると地域が盛り上がるが、今年は我慢してほしい」と話す。
滋賀県や新潟県は、田植え帰省の自粛を特別に呼び掛ける。滋賀県はインターネット交流サイト(SNS)で発信し、県内農家らには田植えに支障を来さないよう集落の営農組合などで助け合うことを要請。それでも難しい場合は普及指導センターが相談に応じる。
新潟県も帰省や来県を自粛するよう、JAなど県内100の農業関係団体に通知した。JA新潟中央会はすぐに県内23JAに伝え、JA役職員や農家と情報共有する。
労働力不足も懸念され、農業法人や担い手らが乗り出す地域もある。広島県東広島市で40ヘクタールの米を作る「農事組合法人重兼農場」は、苗を100戸の農家に配達する中、周辺農家が困っていないか声掛けする。
代表の山崎拓人さん(31)は「困るという話はまだないが、いつも声を掛けている。田植えができない場合は急きょでも受ける。農村には共助の力がある」と話す。インターネットの接続など困り事相談にも応じている。人と会う機会が減り寂しい高齢者らの安心感につなげたい考えだ。
5月は全国各地で田植え作業が本格化するため、地域内での人材確保が重要になっている。
潜在する労力地域で確保を
東京農業大学の鈴村源太郎教授の話
近隣の集落営農組織に頼むなど地域内で情報共有し人材を確保してほしい。実家にとどまり手持ち無沙汰な学生がいることが想定される。農家でなくても、そんな若者が農業に関わる意義は大きい。最初は慣れなくても少しずつ役立つと思う。地域で話し合って考えてほしい。
おすすめ記事
米大統領選へ半年 「一国」「協調」選択問う
11月3日の米国大統領選挙まで半年余りとなった。トランプ大統領に、民主党のバイデン前副大統領が挑む構図だ。「米国第一主義」対「国際協調主義」とも言い換えられる。結果次第では、同国の通商政策の転換も想定されるだけに注視したい。
好景気と低失業率のまま大統領選に突入し、再選を目指す。そうしたトランプ氏の選挙シナリオは、新型コロナウイルスの感染拡大で大きく狂った。そこで戦術転換し、「新型コロナとの戦争に勝利する」と、国民に強い指導力をアピールする「戦時下の大統領」を印象付ける。
約90年前の大恐慌以来という世界的危機の中でも米中の覇権争いは続く。こうした中、トランプ氏は世界保健機関(WHO)への拠出金停止を表明。国内での政権批判をかわすため、WHOと中国の関係に不満の矛先を向けるのが狙いとみられる。だが巨額な拠出金停止はワクチン開発など国際協力に支障を来す。さらに多くの命が奪われ、不況も長引きかねない。そこには世界の先導役を担ってきたかつての米国の姿はない。
世界を主導する国が存在しない「Gゼロ」時代を見通した国際経済アナリストのイアン・ブレマー氏は、コロナ・ショックに見舞われている現状には①脱グローバル化②一層のナショナリズムの台頭③存在感を増す中国の行方──の三つの潮流があると分析する。米国大統領選は、これらの潮流を受けながらの論戦となるだろう。
バイデン氏は、民主党のオバマ政権で副大統領を務めた。上院外交委員長など要職をこなし、中央政界で44年間活躍した政治実績は大きい。ただ、大統領に就任すれば過去最高となる78歳の年齢がネックとされる。
今後のバイデン氏の政策に関心が集まる。中道穏健派だが、大統領候補の指名を争った急進左派・サンダース氏の国民皆保険制度や学費無償化、気候変動対策強化といった主張をどこまで取り入れるかが焦点になる。両者は経済、教育など6重要政策で協議に入った。トランプ陣営はバイデン氏に「急進左派」のレッテルを貼り攻撃を強めるだろう。
米大統領選の行方は、国際政治と世界経済の今後を左右する。日本農業にとって最大の関心は経済、特に通商政策だ。広域経済連携の行方と関係する。環太平洋連携協定(TPP)はオバマ政権下で推進され、トランプ氏が大統領に就任した途端に離脱した。自由貿易を支持してきたバイデン氏がTPP復帰に言及するか注目したい。
対中政策を巡る両氏の論戦にも注意を払いたい。経済覇権争いを念頭に中国に厳しい姿勢で臨むのは同じだ。ただトランプ氏と違い、バイデン氏は制裁関税などの手法には慎重とされる。日本は習近平主席の訪日などで対中関係改善を目指している。両者の対中政策が、日本の中国接近の動きに影響してくる可能性もある。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年04月26日
河合雪之丞さん(俳優) 食べ方見直して体づくり
好きな物を好きなだけ食べて飲んで……という生活をずっと続けてきました。
若い頃は全然太らなかったですからね。先輩の役者さんから「お前、腹の中に虫がいるぞ。虫下しを飲め」と言われたほどです。でも歳を取っても続けたら、体にひずみが出るのも当然ですよね。
体重が増えました。女形の役者として、これは良くないわけです。歌舞伎ですと全員が男の人ですし、衣装も大きいので、少々横幅があっても大丈夫です。でも新派の舞台では隣に女優さんが並んだりしますし、衣装も現代のもので体の線が出てしまいます。
体の中も良くありませんでした。2年半前に健康番組に出演した時、中性脂肪が通常の5倍と言われました。いつ脳梗塞になってもおかしくなかったそうです。
それであわてふためき、食生活を変えました。
我慢ではなく…
空腹を我慢するのは嫌なので、食べる量は減らしません。食べるものの種類と食べ方を変えたんです。最初に野菜をたくさん取り、それからタンパク質を。これで十分に満腹感を得て、最後に炭水化物を少量いただくようにしました。これを2カ月ほど続けたことで、体重が13キロも減りました。
一人暮らしの私は料理がおっくうなので、常に外食です。
お店でメニューを見ると、まず野菜は何があるかをチェックします。温野菜よりもサラダの方が、得られる満腹感は大きいんですね。生の野菜の方が水分を含んでいる分だけ、おなかが膨らみます。それでたっぷりのサラダを。
カロリーのことだけ考えるとノンオイルのドレッシングを選ぶべきでしょうけど、ストレスをためたくありません。その時に食べたいドレッシングでおいしくいただきます。サラダに飽きたら、温野菜。メニューに「キャベツの酒盗炒め」なんて見つけて食べたいと思ったら、注文します。
苦手だった野菜
実は私は、昔は野菜が苦手でした。食べられないものが多かったんです。というのも、母が野菜を苦手としていたからです。食べられる野菜は5種類しかなく、それしか食卓にのらなかったんです。私が若い頃に食べられなかった野菜は、子ども時代に食卓にのらなかったものだったんですね。
でも母は料理が上手。おいしい料理を作ってくれました。外で働いていて、仕事を終えて帰ってくると、真っ先に兄と私の夕食を素早く作ってくれました。それを終えてから、着替えて、お化粧を落としていました。
母は好き嫌いが激しく、肉も一切食べられませんでした。でも肉料理は食卓にのりました。さすがに息子2人に肉を出さないわけにはいかなかったんですね。
ただしとんかつを揚げるのだけは嫌だったみたいで、私が肉屋に買いに行かされました。母はてんぷらが大好きで、よく作っていました。油は1回揚げた後でも取っておいて次に使いますよね。たぶん、とんかつを揚げて肉の匂いがついた油でてんぷらを揚げたくなかったんじゃないでしょうか。
そんな母も、なぜか50歳を過ぎた頃からいろんな野菜を食べられるようになりました。私も、大人になってからいろいろ食べられるようになったわけです。
食生活を変えてから、体の中の方も良くなりました。それまでは健康診断で基準値よりも数値が高い「H」の印がいくつも並んでいたんですが、今では全て基準内。野菜のおかげだと感謝しています。(聞き手・写真=菊地武顕)
かわい・ゆきのじょう 1970年、東京都生まれ。88年、国立劇場第9期歌舞伎俳優研修を修了、三代目市川猿之助(現二代目市川猿翁)に入門し、春猿を名乗る。2000年、名題昇進。17年、劇団新派に移籍し、河合雪之丞と改名した。5月3~31日、大阪松竹座「藤山寛美歿後(ぼつご)30年喜劇特別公演」に出演予定。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年04月04日
地域運営組織5000超す 暮らし守る活動担う
総務省は28日、農山村の住民を中心に地域の課題解決につながる事業などを展開する「地域運営組織」が2019年度、5236件(742市区町村)になったと発表した。18年度から449増加し、統計を取り始めた15年度以来初めて5000件を突破。高齢者交流サービスなど、住民の暮らしを守る活動を担っている実態も分かった。
同組織は、地域交流や見守り、防災訓練、農産物の直売など、行政の手が届きにくいところを住民が主体となって補完する地域コミュニティーで、主に小学校区の単位で活動している。
地域運営組織が「ある」と回答した市区町村は、有効回答総数1694のうち742(43・8%)だった。
742市区町村の活動内容は複数回答で、高齢者交流51%、声掛け・見守り41%、体験交流事業34%だった。設立の効果を調査したところ、「地域内の話し合いにより、今まで取り組まれなかった課題に取り組むことができるようになった」が79%で最多、次いで「地域コミュニティーの活動がやりやすくなった」(60%)が続いた。
一方、活動上の課題は「担い手の不足」(83%)、「リーダー人材の不足」(55%)など人口減少や若者の東京一極集中による人材不足が目立った。続いて「当事者意識の不足」(48%)、「資金不足」(47%)などの問題点が浮かび上がった。
農水省の新たな食料・農業・農村基本計画でも「地域運営組織」の形成の重要性を明記。地域運営組織の活動を農地の利用や管理に広げる方向性を示した。政府は、地域運営組織数を20年度に5000とする目標を掲げていた。前倒しで達成したことから、24年度までに7000を次の目標とする。
<ことば> 地域運営組織
農山村などを中心に、暮らしを守るために住民が主体となって形成される自治組織。政府は地域運営組織をまち・ひと・しごと総合戦略の重要方針に位置付け、JAの協力も呼び掛ける。
商店、GS…自ら守ってきたけれど 地域運営組織 知恵と努力に限界感
地域運営組織が5236に上り全国で続々と設立される一方で、発足から10年近くたった組織からは「活動を継続させることこそが難しい」との声が上がる。再生可能エネルギーや農泊の法人設立といった新たな経営に挑戦するなど、民間企業が撤退した経営を地域住民が持続させる取り組みを模索している。
地元産の特産品を手に、新たな運営を話し合う(右から)皆木さん、小椋さん、田辺さん(岡山県津山市で)
農泊と再エネ「存続」を模索 岡山県津山市阿波地区
山に囲まれた岡山県津山市の過疎の村、阿波地区。市中心部からは車で1時間弱。人口は500人を下回り、高齢化率は5割だ。地区にたった一つ残った「あば商店」。日用品が購入できるだけでなく、毎日のように地域の女性や高齢者たちが集まる“サロン”でもある。
商店まで来ることができない高齢者らのためには、移動販売車も各集落を回る。広島県出身で、13年に移住した田辺高士さん(32)が店長を務める。「商売が成り立ちにくい過疎地域だけど、売買だけでないお客さんとの結び付きが温かい」と、移動販売車の存在を重視する。
あば商店は、合同会社「あば村」が運営。同社は、撤退が決まったガソリンスタンド(GS)なども引き継ぐ。地区の暮らしは、2008年に全住民で立ち上げた地域運営組織「あば村運営協議会」が守ってきた。出資金543万円で14年度に発足したあば村も、協議会の一員だ。
地区で唯一のガソリンスタンドの運営、自治会のイベント、防犯、交流など、農地の保全や農産加工品の開発など、協議会に属する五つの組織がさまざまな事業を手掛ける。買い物や医療、福祉、交流の場、金融機関など生活に必要なサービスを集め、地域の暮らしを守る「小さな拠点」を運営し、全国から視察が相次ぐ地域運営組織だ。
しかし、発足から10年たち、協議会は経営難に直面する。そもそも経営が厳しいためにガソリンスタンドが撤退しただけに、住民が知恵を出して経営を維持することは難しいのが現実だ。そこに補助金削減が追い打ちをかけた。
協議会はこれまで事業収入の他、市から年間300万円などの助成を受けて経営していた。しかし、19年度に補助金が終了。「経済的自立」という位置付けとなり、経営は一気に厳しくなった。「過渡期を迎えている。どの事業も収益が上がらない」と、協議会事務局長の皆木憲吾さん(62)は厳しい実態を明かす。
このため協議会は20年度内に、農泊と再生可能エネルギーに取り組む2組織を会社化することを目指す。6月に施行される、人口が急減する地域の職場や作業場に事業協同組合が若者を“人材供給”できる「特定地域づくり事業協同組合制度」を活用する考えだ。
協議会会長の小椋道典さん(70)は「もうかる事業がない。地域運営組織はどこも継続が厳しいだろう。いつか切れる補助金頼みでは生き残れないので、持続可能な経営ができるようにいろいろな知恵を出し合うしかない」とみる。
資金や人材 行政関与を
総務省が28日発表した地域運営組織数は、5年間で3500以上増えた。しかし、設立から10年以上たつ組織はどこも経営の持続に悩む。
住民が日用品を取り扱う店舗などを運営する、高知県四万十市の大宮産業。設立から10年以上が過ぎ、高齢化率は10%以上増えて56%、人口は100人以上減って236人となった。会長の竹葉傅さん(75)は「住民がボランティアで何とか守っている。妙案はなく、このまま続けていくしかない」と言う。
07年に発足しスポーツクラブや学童保育など多角的に事業を進める地域運営組織、山形県川西町のNPO法人「きらりよしじまネットワーク」の高橋由和事務局長は「地域運営組織が持続するためには、行政が組織に運営を丸投げするのではなく、資金や人材確保、育成など多様な面で関わる必要がある」と指摘する。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年04月29日
68年前のきょう、戦後日本の〈かたち〉が動きだした
68年前のきょう、戦後日本の〈かたち〉が動きだした。吉田茂、白洲次郎という傑出した2人の尽力が大きい▼2月末に放映されたテレビ東京開局55周年特別番組「アメリカに負けなかった男~バカヤロー総理 吉田茂」は、戦後復興への道を人間ドラマで描いた。吉田役は笑福亭鶴瓶さん、側近の白洲役は生田斗真さんで、迫真の演技が印象深い▼1952年4月28日に先の大戦での西側諸国との講和条約、サンフランシスコ平和条約が発効した。その7カ月前の51年9月、サンフランシスコで吉田は歴史に残る条約受諾演説を行う。日本語で、しかも日本人らしく巻物に墨で書いた文を堂々と読み上げる。長さは何と30メートルも達したという。ドラマでは白洲のアイデアとされる▼あすは「昭和の日」。元々は昭和天皇の誕生日だが、激動の日々を経て復興を遂げた昭和の時代を振り返る日でもある。同条約発効で日本は主権回復を果たすが、同時に北方領土や沖縄基地問題など今に至る難題も抱えた。きょう、あすは戦後日本出発の歴史を再び考える日と重なる▼天皇からの贈り物を巡り「日本は戦争に負けはしたが奴隷になったわけではない」とマッカーサーGHQ最高司令官を一喝した白洲。〈従順ならざる唯一の日本人〉の“胆力”には胸がすく。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年04月28日
感染防止と事業継続を 本支店、直売所…模索続く
新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出され、JAの事業にも大きな影響が出ている。外出や人との接触をなるべく避けながら、本支店での業務や外勤、直売所、高齢者福祉への対応などで、感染防止と事業継続を模索する動きが広がる。
外勤自粛や交代勤務 東京・JAマインズ
東京都のJAマインズは、新型コロナウイルスの感染防止のため、職員同士の接触機会を減らす対策を徹底している。職員は出勤と在宅でグループ分けして業務に当たる他、急ぎでない会議の延期や中止、渉外活動の自粛などに取り組む。
JAは府中市と調布市、狛江市が管内。職員は約330人で、本支店など管内に19拠点を構える。出勤・在宅のグループ分けは、勤務経験などを踏まえ、業務に支障が出ないように配慮。出勤と在宅をどう交代するかなどは、各部署で判断して決めるという。
急ぎではない会議は延期や中止とし連絡はメールや電話を活用する。会議を行う場合は、広い会議室で人と人の距離を開け、換気しながら行う。府中市にある本店では食堂での密集を防ぐため、会議室を開放。職員間の距離を開けて食事を取れるよう配慮した。
職員は3月中旬から職場で体温を計測し、毎日記録している。37度以上の熱があったり、体調が悪かったりする場合は、上司に報告し、帰宅する。
地域農業の担い手に出向くJA担当者(愛称TAC=タック)やライフアドバイザー(LA)、営農指導員や渉外担当者は、外勤を原則自粛。担い手や組合員への対応は電話などで行う。やむを得ず外勤する場合は、感染予防を徹底できるよう消毒液などを各支店に用意した。
入店制限の整理券を受け取り、店内に客を誘導する職員(右)(熊本県菊陽町で)
整理券配り入店制限 熊本・JA菊池
JA菊池は、新型コロナウイルス感染防止対策として、農産物直売所の入店制限を始めた。店での感染を抑え、利用者に安心して買い物をしてもらう。事前に整理券を配布。一度に入る客数を20人程度に決め、店長が状況を見ながら入店案内する。消毒液やレジの保護シート設置、換気の徹底も続ける。
入店制限を導入したのは菊陽町にある農産物市場「きくちのまんま」菊陽店。4月に入り、飲食業の休業や外出自粛などの影響で自炊用の食材を買い求める客が増えていた。開店の午前9時前に多くの客が並ぶ姿もあった。感染を防ぐソーシャルディスタンス(社会的距離)を確保するため、入店制限を開始。込み合う午前9時から同11時ごろまでを対象にしている。
熊本市内から買い物に来たという80代の男性は「妻と買い物に来たが、このような対策があり、安心した。皆が危機感を持って行動する意識にもつながると思う」とマスク越しに話した。
JAの三角修組合長は「直売所は安全・安心の食を提供する場、地域の人の胃袋を満たす場だ。万全の対策をしながら、新鮮な農畜産物を提供していきたい」と話した。
4・5月の土、日曜日、5月の大型連休には職員が交代で出勤。入店制限の対応に当たる。
電話で組合員に助言を行う職員(三重県鈴鹿市で)
介護予防 電話で助言 三重・JA鈴鹿
JA鈴鹿は、高齢者のフレイル(虚弱)防止に向けた取り組みとして、在宅高齢者フレイル予防支援事業を始めた。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で、運動する機会が減った高齢者の運動能力の維持・向上につなげたい考えだ。
フレイルは、健常から要介護へと移行する中間の段階を示す。JAでは2017年から各店舗を拠点として、エクササイズの一つであるスクエアステップを活用した介護予防教室を開き、地域の健康増進に力を入れてきた。
しかし、20年度は新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催を自粛している。
そこで、高齢者に自宅でできる介護予防の取り組みとして、セルフチェックシートや健康体操などの資料を送付。その後、電話などによる状況確認、助言を行うことで高齢者が元気に暮らし続けることができるようにする狙いだ。
事業を担当するJA生活福祉課の石川雅樹課長は「フレイル予防支援の取り組みを、組合員の健康向上につなげていきたい」と話す。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年04月30日
新型コロナの新着記事
[新型コロナ] GW 田植え共助で対応 帰省自粛呼び掛け コロナ禍の自治体、JA
大型連休が始まる中、各自治体やJAが、田植えの手伝いで例年、帰省していた農家出身の都市住民らに「今年は帰省しないでほしい」と呼び掛けを強めている。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためだ。自治体や専門家は、人手の確保へ地域での話し合いや、作業委託などの対応を呼び掛ける。
大型連休は水稲の苗準備や田植えと重なり、子や孫が帰省し手伝うことが多い。「平時ならば帰省してほしいが、今回は命を守る活動を優先してほしい」(島根県の普及指導員)。山形県の農業法人代表は「田植えは恒例行事で帰省をしてくれると地域が盛り上がるが、今年は我慢してほしい」と話す。
滋賀県や新潟県は、田植え帰省の自粛を特別に呼び掛ける。滋賀県はインターネット交流サイト(SNS)で発信し、県内農家らには田植えに支障を来さないよう集落の営農組合などで助け合うことを要請。それでも難しい場合は普及指導センターが相談に応じる。
新潟県も帰省や来県を自粛するよう、JAなど県内100の農業関係団体に通知した。JA新潟中央会はすぐに県内23JAに伝え、JA役職員や農家と情報共有する。
労働力不足も懸念され、農業法人や担い手らが乗り出す地域もある。広島県東広島市で40ヘクタールの米を作る「農事組合法人重兼農場」は、苗を100戸の農家に配達する中、周辺農家が困っていないか声掛けする。
代表の山崎拓人さん(31)は「困るという話はまだないが、いつも声を掛けている。田植えができない場合は急きょでも受ける。農村には共助の力がある」と話す。インターネットの接続など困り事相談にも応じている。人と会う機会が減り寂しい高齢者らの安心感につなげたい考えだ。
5月は全国各地で田植え作業が本格化するため、地域内での人材確保が重要になっている。
潜在する労力地域で確保を
東京農業大学の鈴村源太郎教授の話
近隣の集落営農組織に頼むなど地域内で情報共有し人材を確保してほしい。実家にとどまり手持ち無沙汰な学生がいることが想定される。農家でなくても、そんな若者が農業に関わる意義は大きい。最初は慣れなくても少しずつ役立つと思う。地域で話し合って考えてほしい。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年05月01日
[コロナと闘う](1) 大田花き 磯村信夫社長 販路限られダメージ深刻 消費喚起根気強く
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、花き業界は今、苦境に立たされている。式典やイベントのキャンセルで業務需要が大幅に縮小し、緊急事態宣言後は商業施設などに入る専門店の休業が全国で広がった。生花の取引価格や販売量は大きく落ち込んでいる。最もダメージの大きい生産者への行政支援が急がれる。
5月は「母の日」という大きな物日が控えている。もし緊急事態宣言が解除されてすぐに「母の日」の商戦を迎えれば、物流も逼迫(ひっぱく)し、店頭には買い物客があふれて感染拡大を招く恐れがあった。そこで、私が会長を務める日本花き振興協議会は今年、「母の日」を5月の1カ月にわたる「母の月」として提案している。消費者に理解を求めて、商戦を分散・長期化し、業界一丸で花の普及に取り組んでいく。
花きはサービス産業だが、一方で国民生活になくてはならないものとして、2014年成立の「花きの振興に関する法律」で位置付けられている。現状も全国の生花市場は休んでいない。販売会社は家庭向けを中心に仕入れを続け、営業する専門店やスーパーを通じて生活者に花を届けている。花きの売り先がほぼなくなった欧州などに比べればありがたい。
嘆いてばかりでは仕方がない。花を必要としている人に届ける工夫が必要だ。農水省が発信する「花いっぱいプロジェクト」などの後押しを受け、花き卸、専門店やスーパー、花束加工業者などが連携し、積極的に動いている。従来は業務用だった上位等級の商品を、家庭での普段使い用に販売を切り替えるなどして対応している。
新型コロナ禍で負った花き産業のダメージは深刻だ。終息後もV字回復とはいかないだろう。一歩一歩進む覚悟で生産、流通、販売を続けていく必要がある。課題は多いが、今後も消費者に花を使ってもらえるよう「花は素晴らしい」と発信を続けることが重要だ。家庭需要を根付かせるため、店頭やネット販売、インターネット交流サイト(SNS)などを使ってプロモーションを展開し、積極的に生活者に訴える。
生産者や花業界に携わる人たちに伝えたいことがある。命と健康に関わる食べ物とは違い、花は文化の産物。生命の危険の前では後回しになるが、通常の状態に落ち着けば花は絶対に必要とされる。関係者は所得面で苦しい状態が続くが、必ず克服し、新しい花き園芸文化を浸透させよう。来年に延期された東京五輪・パラリンピックで日本の花文化を楽しむ国民や世界中の人たちの姿が見られるよう、一緒に努力したい。(聞き手・柴田真希都)
〈プロフィル〉1950年生まれ。94年代表取締役社長に就任(現在は代表執行役社長)。2017年設立の日本花き振興協議会では当初から会長を務める。
◇
新型コロナウイルスの感染拡大で、食と農への影響が広がっている。農業や流通関係者、識者らに現場の実態や対策、今後の見通しを聞いた。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年05月01日
[新型コロナ] 緊急経済対策 減収農家 支援が柱 事業の申請本格化
2020年度政府補正予算に盛り込まれた新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急経済対策は、個人農家や農業法人を含め、経済の停滞によって収入が減った事業者への支援策などが柱だ。一定の要件に基づき、事業継続に必要な資金として支給する「持続化給付金」に加え、園芸品目の次期作支援、生産現場の労働力確保対策などを用意。今後、各種事業の申請受け付けが本格化する。
持続化給付金
持続化給付金は、所管する経産省が2兆3176億円を計上。……
2020年05月01日
[新型コロナ] 外食休業、販路模索も在庫の山… 青果仲卸展望見えず かさむ人件費継続か解雇か 豊洲市場
新型コロナウイルスの影響で飲食店の休業が長期化し、仲卸業者が苦境に立たされている。売上高が激減し、資金繰りに窮して従業員を解雇する業者も出てきた。青果物の安定供給を支える仲卸だが、中小規模の業者がほとんど。雇用維持への支援策はあるものの、緊急事態宣言は延長される見通しで、終息の見通しがつかないまま経営体力を奪われている。(橋本陽平)
「リスク回避 すべなし」
レストランや料亭など飲食業者による仕入れが多い、東京都中央卸売市場豊洲市場。青果物を扱う、ある仲卸業者は「緊急事態宣言の発令後、売り上げは前年比で3割を切った。底が見えない」と、日増しに悪化する経営に不安を募らせる。
同社は正規・非正規を含め、12人を雇う。築地から豊洲への移転に伴い、青果店など個人店の廃業が増加。チェーン展開するレストランや居酒屋など、業務筋への販路開拓を進めていたところだった。
焼き肉チェーンに卸していたサラダナは、店の大半が休業して注文が激減。在庫の山を積み上げた。他の販路を模索するが、百貨店は客足が減り、価格帯や取引慣習が違うスーパーにも回せない。地方市場への転送も、観光需要の低迷で縮小。「ウイルスは場所を問わず、全国に影響を及ぼす。リスク回避のすべがない」と嘆く。
販売不振が長期化し、経費の過半を占める人件費が重くのしかかる。入社して日の浅いアルバイト2人は既に解雇し、他の従業員にも休業を通知。一層の解雇も頭をよぎる。「この売り上げでは給料を出せない。失業手当で当座をしのいでもらい、後で再雇用する方が本人のためか」と思案する。ただ、終息のめどが見えない中で、再雇用を確約できるのか。正解の見えない決断を迫られている。
解除?延長?急ぎ判断を 仲卸の組合
同市場の仲卸約70社でつくる丸中組合の山田安良理事長は「豊洲の仲卸は、飲食店や給食関係の取引先が多い。休業や休校の長期化で各社とも経営は非常に厳しい」と指摘する。
緊急事態宣言の期限は5月6日からの延長がほぼ確定的だ。山田理事長は「宣言解除で規制が緩み、再び感染が拡大する事態は避けないといけない」と理解を示した上で、「宣言解除を想定した注文も入っており、延長すればキャンセル対応も出てくる」として、取引先との混乱が生じないよう早急な判断を求める。
助成金支給1割止まり
企業の倒産や従業員を解雇するケースは増えている。東京商工リサーチによると、感染拡大に伴う倒産は100件を超え、4月は75件と急増した。厚生労働省によると、新型コロナによる会社の業績悪化で解雇や雇い止め(見込み含む)となった数は、4月28日時点で3495人。3月末から3倍に増えた。
雇用維持に対する支援策はある。政府は、経営悪化を受けて事業縮小する企業が、休ませた従業員に支払う休業手当を助成する「雇用調整助成金」を拡充。解雇しない場合、中小企業は5分の4だった助成率を10分9以上に引き上げた。雇用保険に加入していないパートやアルバイトも対象となる。しかし、同助成金の支給決定件数は、329件(2月14日~4月28日・速報値)。申請書の提出件数3459件に対し、各段に少ない。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年05月01日
[新型コロナ] うちで踊ろう コラボ動画作成し運動不足解消へ 長野厚生連佐久総合病院
運動不足の解消に「うちで踊ろう」──。JA長野厚生連佐久総合病院が歌手の星野源さんの楽曲「うちで踊ろう」に合わせた体操の動画を作成した。動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」の同病院の公式チャンネルで公開している。外出自粛で家の中で過ごすことが多い人たちに、楽しく体を動かすきっかけにしてもらうことが目的だ。
動画を提案したのは、同病院の健康運動指導士ら。同病院では3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、JAや行政の依頼で行っていた健康教室などが相次いで中止。地域の高齢者らの運動不足が懸念されていた。家庭で体を動かしてもらうために、人気歌手の星野さんとのコラボを考えた。
動画では健康運動指導士らが、星野さんの歌に合わせて約1分間、リズミカルに体操を披露。高齢者でも無理なく全身を動かせる体操にした。
同病院の健康運動指導士、柳澤和也さん(47)は「外出自粛でみんな心身ともに疲れている。楽しく体を動かしてもらうのに星野さんの曲はぴったり。高齢者はもちろん学校が休校の子どもやテレワーク中の若者、運動不足の人たちみんなで楽しんでほしい」と呼び掛ける。
同病院では今後、タオルを使ったストレッチやレシピ紹介などの動画も作成し、公開する予定だ。医療機関として、新型コロナウイルスの正しい予防方法や、外出自粛が続く状況下において役に立つ健康づくりの情報発信にも意欲的だ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年05月01日
[新型コロナ] 農水省コロナ対策 肥育牛農家に奨励金 経営体質強化 1頭最低2万円
農水省は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける肥育牛農家の支援に乗り出す。肉専用種や交雑種、乳用種を対象に、一定条件を満たせば1頭当たり2万円以上の奨励金を交付し、生産の継続を後押しする。肉質の分析、畜舎の改善など経営体質の強化に取り組む必要がある。食肉卸の在庫が滞留する中、計画出荷する農家には、かかり増し経費を助成する。
外食やインバウンド(訪日外国人)需要が減退し、和牛の枝肉価格は低迷。あおりを受ける形で交雑種などの価格も落ち込み、農家経営は悪化している。
同省は対策として、農畜産業振興機構(ALIC)事業の300億円を活用し、経営強化の計画を定めた農家に、出荷頭数に応じた奨励金を交付する。
畜産農家は計画に、①飼料分析②牛の血液分析③肉質分析④畜舎の環境改善⑤経営分析──の複数項目を盛り込む。具体的には、エネルギー量などを考慮した効率的な給餌方法、血中ビタミンなどを把握し肉質を向上させる方法などの検討を想定する。「非常に取り組みやすい内容」(江藤拓農相)で、二つ以上の項目を実践すれば、出荷頭数に応じ1頭当たり2万円を交付する。
枝肉価格が前年同月比30%下落した場合、三つ以上実践すれば同4万円、40%下落なら同5万円と奨励金を積み増す。同省は「経営の維持を支えると同時に、体質強化につなげたい」(畜産企画課)と考える。
在庫の滞留を避けるため、肥育牛を計画的に出荷する際のかかり増し経費も定額で補助する。生産者がまとまって出荷時期を15日以上延期させる場合、肉専用種に1頭当たり同2万2000円、交雑種は同1万9000円、乳用種は同2万1000円を助成する。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年04月30日
[新型コロナ][届け!エール](3) アンガールズ 田中卓志さん 感謝し自炊 体気遣って
実家は広島で米や野菜を育てる兼業農家です。祖父は養鶏をやっています。新型コロナの影響で僕の生活は相当変わりました。スタジオに集まれないし、ロケも行けなくなりました。今はそれぞれができる形でやるしかないですね。
実家はとんでもない田舎で、スーパーに行く時くらいしか人に会いません。祖父は97歳で、両親は60、70代なので、万が一かかったら大変です。気を付けてということは伝えています。
こういう時、食べるということは大事なことです。生産を維持してもらわないと生活できませんから。僕も最近自炊を始めました。カレーを作ってインターネット交流サイト(SNS)にアップするとみんな褒めてくれます。近所のスーパーでジャガイモ1個、ニンジン1本からばら売りしているので独身は助かります。
自分で作って、おいしいものができたらやっぱりうれしい。近所から夕方になるといつもご飯のいい匂いがして、独身の僕にはすごいダメージだったのですが、今は僕も料理していますからね。相手の家庭にカレーの匂いで立ち向かえると思います。
大変な事態がいつまで続くか分かりませんが、そんな時期に食べ物を作ってくれることに感謝しています。皆さんも体に気を付けて作業してください。(お笑い芸人)
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年04月30日
[新型コロナ] タイで「野菜育てる」国民運動 コロナ禍で意識高まる 自給の重要さ再確認
新型コロナウイルスの感染拡大で、食料自給への意識が高まる中で、タイでは全国民が野菜を育てる90日キャンペーンが始まった。農家だけでなく、国民で野菜を育てようと、国を挙げた取り組み。在日タイ王国大使館の農業担当者は「今は行き来が難しいけれど、日本と共にコロナ禍を乗り越えたい」と日本の農家にメッセージを送る。日本でも野菜苗の売り上げが好調で、消費者が農業や自給への思いを高めている。
観光や流通が大きな影響を受け経済活動が停滞し失業者が増えているタイ。4月から全国民が野菜栽培に取り組む90日間キャンペーンが始まった。地域ぐるみでナスやキュウリ、パクチーを育て家計の足しにしたり食料自給につなげたりするのが目的だ。
キャンペーンは、故・プミポン前国王が提唱した「足るを知る経済」の哲学に基づく。プミポン氏はアジアの通貨危機を経て、“ないものねだり”はせず、地域の循環や持続可能な農業や暮らしを大切にし、国民から愛されてきた。この哲学を踏まえ、タイ内務省コミュニティ開発局は、食料危機を起こさないようにキャンペーンを考案した。
タイ全77県にある開発局の職員が見本となるように、野菜の苗を1人5~10種類育てる。ベランダや庭、バルコニーなどで育てる。野菜はパクチー、ナス、ヘチマ、オクラ、トウガラシなど。
5月からは市長、行政機構、村長らが、少なくとも5種類の野菜を栽培し、野菜の種子を交換する。その後、村長、村の代表が家庭に対し、野菜の栽培方法を説明していく。各地域の開発局がキャンペーンを全面的に支援し、種子や苗を一部提供するという。開発局の担当者らがチームを作り、アドバイスしていく。野菜が育ったら、近所同士や仲間で交換し、交流を深める。村の9割以上がキャンペーンに取り組むなど成果が出たら、国が表彰する。
観光地のタイでは、失業者が急増していることも踏まえ、内務省コミュニティ開発局のスッティポン・チュンチャルーン局長らが提案し、自ら栽培している。
タイ王国大使館農務担当官事務所の農務担当サコン・ワナセッティー参事官は「誰でもできるし、改めて自分の生き方を見直すことができる」と強調。日本の農家に「日本との協調は変わらず進めていきたい。今はお互い、一人一人ができることをして、コロナが収束した頃には農業分野など双方の交流がますます盛んになることを願っている」とメッセージを送る。
日本でも…家庭用苗売り上げ増
日本でも、不要不急の外出自粛が呼び掛けられる中、家庭で野菜を育てようという動きが広がっている。特に都会や住宅街で、家庭菜園ができる野菜苗や肥料の売り上げが伸びている。
福岡県糸島市のJA糸島では4月10日から野菜苗の販売を開始したところ、売り上げは前年比130%と大幅に伸びている。古藤俊二経済部長補佐によると、家族連れの来店が増え、土や肥料の相談件数も急増しているという。苗は、トマトやキュウリ、ピーマンなどが人気だ。同部長補佐は「お金も掛からず、家で安全に楽しめることから注目されているのではないか」とみる。
大阪府高槻市のJAたかつきの緑菜館センター店でも15日から野菜苗を売り出した。販売初日は開店前から楽しみにする来客が多く、店側が入場規制を実施するほどだった。同店の担当者は「5000円分の苗を買って『スーパーで5000円分の食材を買う以上に収穫できるかなあ』と期待するお客さんもいる」という。
東京都あきるの市の種苗店「野村植産」でも、子育て世帯の来店が増えている。同店は「子どもに安全な食べ物を食べさせるために、初めて庭の片隅で始めるという人も多い。果菜類は難しいからジャガイモがいいですよとアドバイスしている」と話している。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年04月30日
[新型コロナ] JR九州が応援動画 宮崎の畜産農家出演 終息の日まで頑張る
JR九州が4月下旬に公開した動画が注目を集めている。新型コロナウイルス拡大で影響を受ける九州各県の観光地などから、終息後を見据え観光客を迎える準備をする様子やメッセージをつなげたもの。宮崎県の若手畜産農家も出演している。動画投稿サイト「ユーチューブ」では公開1週間で再生回数が20万を超えるなど、反響を呼んでいる。
JR九州が立ち上げた「その日まで、ともにがんばろう」プロジェクトの一環。新型コロナの影響が収まり、安全・安心な日常生活を取り戻す日を「その日」と位置付け、九州の魅力を発信するのが目的で活動を始めた。動画は取り組みの第2弾として公開した。
動画には九州各県の21事業者が登場している。宮崎県都城市で母牛53頭を飼養する繁殖牛農家の繁昌拓治さん(36)は、同市の呼び掛けで参加。「美味(おい)しいお肉を準備して待ってます!」と書いたフリップボードを掲げた。新規就農して10年を迎える繁昌さんは「牛農家は枝肉の相場低迷で苦しいが、買い手の飲食店も店が開けず苦境に立たされている。みんなで今を乗り越えていこう、との思いで出演した」と話す。JR九州は「より多くの方に元気を発信できる企画を今後も検討する」(広報部)と話す。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年04月30日
[新型コロナ] 農業者も納税猶予 新型コロナ対策で政府 販売減少が対象
政府は、個人農家や農業法人を含め、新型コロナウイルスの影響で収入が減少した事業者を対象に、所得税や住民税などを1年程度猶予する特例制度を設ける。……
2020年04月30日