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 新型コロナウイルスの感染拡大による、経済の落ち込みが深刻化している。政府・日本銀行は相次いで対策を打ち出しているが、影響の長期化へも目配りしなければならない。

 日銀は一昨日の政策決定会合で、民間企業や家計の資金繰りを支えるため、資金供給を一段と強めることを決めた。新型コロナ対策のための国債増発で、長期金利に上昇圧力がかかることに備えるため、国債買い入れ額の上限もなくした。

 黒田東彦総裁は、非常に危機的な状況にあるとの見方を示し、「中央銀行としてできることはなんでもやる。最大限やる」と述べた。政策委員らによる20年度の実質成長率予想はマイナス3~5%程度という。

 前例のないショックに見舞われる中で、財政金融政策総動員は当然だ。後手に回って悪循環に陥り、負の影響が拡大しては取り返しがつかない。

 決定内容が実際に行われ、効果を発揮しているか。民間金融機関が機能し、中小零細企業に資金が行き渡っているか。状況を見極めつつ臨機応変に対策を議論し、実行すべきだ。

 国債買い入れの上限をはずせば、政府の財政支出の制約が弱まりかねない。短期的には必要なことであっても、中長期的な財政の持続可能性に留意することを忘れてはならない。

 その意味でも、問題はこの状況がどの程度続くかだ。

 各国政府・中央銀行の対応もあり、足元の金融市場は小康状態を保っている。だが、感染拡大にいつ歯止めがかかるのか、まだ見通せない。

 通常の不況であれば、一定期間、金融財政政策で需要を支えつつ、投資と消費の回復を待てばいい。だが、今回は感染拡大を防ぐため、需要と供給を意図的に抑え込んでいる。

 医療と防疫に集中的に取り組み、経済への悪影響も和らげることを、まずは目指すべきだろう。だが同時に、可能性の大小はともあれ、危機が長期化することへの備えも欠かせない。

 実体経済の収縮が続けば、大企業でも資金繰りが行き詰まりかねない。その場合、実体経済と金融の相乗的悪化という最悪の事態に陥るリスクがある。

 需給の抑制が長引いた場合に、生活水準の低下をどう防ぐのか。所得減のしわ寄せが非正規労働者ら一部に集中しないよう分配を保つことも必要だ。防疫と矛盾しない医療・健康やデジタル化需要に生産余力を振り向けることが望ましいが、市場機能が制約される中で、その実現は簡単ではない。

 目の前の危機への対応に加え、先を見通した構想力が求められている。

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