洋画の吹き替えやテレビのナレーションなどで親しまれた俳優の久米明(くめ・あきら、本名同じ)さんが23日午前、心不全のため東京都内の病院で死去した。96歳だった。葬儀・告別式は親族のみで行う。
終戦後に復学した東京商科大(現一橋大)在学中に演劇研究会を結成。1947年に劇団「ぶどうの会」に創立メンバーとして参加し、当初は舞台を中心に活動していた。
53年にテレビ放送が始まると、映像の分野にも進出。NHK大河ドラマの第1作「花の生涯」(63年)では、初代駐日公使タウンゼント・ハリスを演じた。池田勇人元首相に顔が似ていることから、映画「金環蝕」や「不毛地帯」で池田氏をモデルとした役を演じたことでも知られ、数々の作品で名脇役としていぶし銀の活躍を見せた。
また、落ち着きのある口調と美声を買われ、声優や洋画の吹き替え、ナレーションの仕事も務めるように。特に「カサブランカ」や「麗しのサブリナ」などで知られる米俳優ハンフリー・ボガートの吹き替えが有名で「和製ボギー」として親しまれた。
ナレーションでは、日本テレビ系「すばらしい世界旅行」を66年の番組開始から90年に終了するまで24年間にわたって担当。最近では、昨年までNHK「鶴瓶の家族に乾杯」に声で出演し、温かみと落ち着きを感じさせる語りでファンを得た。
次男は作曲家の久米大作さん。俳優業と並行して、日大芸術学部の教授として演技講座などを受け持っていた。92年に紫綬褒章、97年に旭日小綬章を受章した。