前回の更新でお知らせしたように、今年2020年5月3日憲法記念日の日本会議系集会(憲法フォーラム)は、新型コロナウイルス感染防止のため、YouTubeのライブ配信という形式で開かれることになりました


日本会議の別動隊「美しい日本の憲法をつくる国民の会」によると、配信するのはTSJ(The STANDARD JOURNAL)というアカウントとのことです

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やはり活動休止を宣言していた「KAIKENチャンネル」での配信はないようですね

では、TSJなるアカウントは、普段、どんな番組を流しているのでしょうか?


TSJ(The STANDARD JOURNAL)の番組


TSJでは、大きく分けて2つの番組を放送しています

ひとつが「奥山真司の地政学「アメリカ通信」」。これはエドワード・ルトワックの翻訳で知られる「戦略家」奥山真司さんの番組です。コンセプトは欧米のニュースで「戦略」を学びつつ、「地政学」「リアリズム」「プロパガンダ」を身につけちゃおう、というなんとも中学2年生が好きそうな感じのアレです。「軍師様」養成講座ってところですかね

ちなみにルトワックさんは、数年前からなぜか日本に接近しているアメリカ人ウヨ「戦略家」です。『Will』や『Hanada』などのウヨ雑誌にも寄稿しています。トランプ大統領を補佐し、安倍晋三首相を「稀代の戦略家」と呼んだ……と言えば、だいたいどんな人かわかるでしょう。戦略国際問題研究所(CSIS)の偉い人でもあるので、陰謀論が好きな人にはたまらない人物かと

ルトワックさんについて詳しくは元読売新聞記者・中村仁さんのブログをご覧下さい

もうひとつがーーこれは特別な名称があるわけではないですが、元「日本エア野党の会」代表の山岡鉄秀さんがやっていた番組です。過去形なことに注目ください(「日本エア野党の会」については後述します)

山岡鉄秀さんは、日本会議と密接な関係にある宗教右派・モラロジー研究所の研究員でもあります。モラロジー研究所が4月から始める予定だった「令和専攻塾」の塾頭をつとめてもいます(「令和専攻塾」は新型コロナウイルスの関係で9月開講)

山岡鉄秀さんはオーストラリア・ストラスフィールド市で「慰安婦」像が建てられそうになったときに反対運動の中心となったーーと主張するも、実際に働いたのは現地の「幸福の科学」であり、山岡鉄秀さんは手柄を横取りしてウヨ業界で一躍名を上げた……という噂があります。このためヘイト漫画家である、はすみとしこさんをはじめ、一部ウヨからえらく嫌われているんですね

そのあたりの話はウヨブログの「日本国士」さんが詳しいです

実際、反対運動をしていた団体「AJCN」のブログを見ても、同地での「慰安婦」像問題が決着した2015年8月には、彼はすでに日本に住所を移していますので、はすみとしこさんの言うことにも一理ありそうですね

この件に関して、「慰安婦」像阻止のため山岡鉄秀さんとともに活動していた、当時「幸福の科学オーストラリア」として動いていた人(現在は教団で出世してるっぽい)は彼を擁護し、

"山岡氏は幸福の科学の信者ではありませんが、山岡氏とは今も志を共有できる仲間だという認識を持っています。世界的に見ても、このような戦略的連携が実現できた例は稀です。(中略)はすみさんの発言で、今頃になって仲たがいをし、連携が崩れてしまうことは大変遺憾です"

……といった具合に、はすみとしこさんに釘をさしています

まあ、このあたりの話はウヨにとっては重要でしょうが、僕にとってはどのみち「歴史修正主義者のクズ」にすぎないので、どっちでもいいことですね……もちろん山岡鉄秀さんが幸福の科学と仲良しだったことが知れたのは良かったですが

山岡鉄秀さんには「慰安婦」像阻止の功績だけではなく、単純に他人の著書の内容などをパクった疑惑もあります。被害を主張するのは、渥美育子さん。かつては真っ当なアメリカ文学者でフェミニズム運動とも関わりがあった人ですが、いつの間にかウヨになってしまった人ですね。謎理論に基づいた「グローバル教育」を子どもたちに教えているとは聞いたことありますが……その謎理論をパクってしまったようですね

まあ、それはさておき、「慰安婦」像によりウヨ界で名を上げて以降は、「朝日グレンデール裁判(原告代表は日本会議系憲法学者の百地章さん)」を支援し、ケント・ギルバートさんと一緒になって「朝日新聞英語版の「慰安婦」印象操作中止を求める有志の会(STOP朝日新聞プロパガンダ)」を設立。朝日新聞批判で更に名を高めました

その他にも売れっ子ウヨとして様々な活動に尽力している山岡鉄秀さんですが、僕としては、「KAIKENチャンネル」のキャスターだった岡田日美子さんがリーダーをつとめる「東京ダイアログEXE」のイベント(2020年2月24日)に登場したことに注目したいですね


2つのTSJ


さて、実を言うとTSJの本拠地はYouTubeではありません

ニコニコ動画」です

ようするに無料で視聴できるYouTubeは撒き餌で、「番組の後半は有料のニコ生で!」というやつですね

ニコ生ではTSJのチャンネルが2つあります

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こちらは「奥山真司の地政学「アメリカ通信」」を流している「スタンダードジャーナル2」です。お値段は1ヶ月880円(税込)

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こちらは山岡鉄秀さんの動画を主に配信していた、無印の「スタンダードジャーナル」です。お値段は1ヶ月550円(税込)

画像を見ていただければわかるように、日本会議系の集会を配信するのは、無印の「スタンダードジャーナル」なんですね(もちろんYouTubeでも配信されます)

なぜスタンダードジャーナルは2つに分かれているのでしょう?

その答えは、株式会社オンザボード(OTB)という会社の代表である和田憲治さんという人が握っています

"現在、TSJでは毎月500円の会費となっておりましたが、値上げすることをドワンゴ社に相談したところ、システム上、値上げ機能がないため、別チャンネルを開き800円(税抜き)で新しくオープンし、お客様に一から入会し直してもらうしかないということでした。新サイトは、THE STANDARD JOURNAL 2です"
"チャンネル閉鎖すると、過去のアーカイブはすべて消えてしまいます。
それを避けるため、これまでのTHE STANDARD JOURNALは過去の動画、ブロマガなど、そのまま会員であれば見られるようにしておきます"

この和田憲治さんの文章が書かれたのは2015年12月です

このとき値上げを検討していたのは「奥山真司の地政学「アメリカ通信」」。システム上それはできないから「スタンダードジャーナル2」が生まれたわけですね

無印の「スタンダードジャーナル」が過去のアーカイブを残すためだけでなく、山岡鉄秀さんの動画を流す等しているのは、これまで見てきたとおりです

で、なぜそれを和田憲治なる人物が知っているのかと言えば……

和田憲治さんが代表をつとめる株式会社オンザボードは、TSJ(スタンダードジャーナル)の運営会社なのです!


株式会社オンザボードと和田憲治


株式会社オンザボードは、インターネット番組を製作する会社です

会社のホームページを見て頂ければわかるように株式会社オンザボードはTSJの他に、以下のようなチャンネルも運営しています

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『竹田恒泰チャンネル』
『KAZUYA CHANNEL GX』
『花田紀凱の週刊誌欠席裁判/ちょっと右よりですが・・・』

うわー……

なんともおぞましいチャンネルの並びですね

若者ウヨ化の元凶見たり、といった感じさえします(本当に若者がウヨ化してるのかは議論が分かれるところですが)

どの番組の出演者も、いまさら説明は不要でしょう。花田紀凱さんの名前は知らない人がいるかもしれないので言っておくと、ウヨ雑誌の月刊『Hanada』の編集長です

これほどの出演者を集めるとは、株式会社オンザボードの代表である和田憲治さんは、さぞかし切れ者に……

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あっ、これアホだ

"渡部昇一先生を敬愛し、先生に直訴し、公認のホームページ、渡部昇一.com(http://www.watanabe-shoichi.com/ )をつくり、致知出版社主催の公式ファンクラブ「昇一塾」の立ち上げを企画"

あ、あの「痴の巨人」と呼ばれる故・渡部昇一さんを敬愛ですって(* ̄∇ ̄*)

史学の専門家でもないのに、現在でいう「歴史戦」にしゃしゃり出ては恥をかいていた渡部昇一さんも、ずいぶん偉くなったものですね

その発言は日本の歴史を修正するだけでなく「ナチスは左翼だった!」「ユダヤ資本が世界を支配している!!」など多岐に渡ります(o´・ω・`o)

ちなみに致知出版社ホームページ内にあった「昇一塾」のページは2017年4月に閉鎖されていますが、あるていどアーカイブされていますので興味のある方は是非

渡部昇一さんを敬愛している時点で、たいした人物でないのは明らかですね

実は株式会社オンザボードのウヨ番組には、和田憲治さんも出演することがあるのですが、その喋りを聞いても……(o´・ω・`o)


そんな和田憲治さんですが、実は株式会社オンザボード代表の他に、もうひとつの肩書きがありまして

それが「日本エア野党の会」幹事長

つい最近まで山岡鉄秀さんが代表、KAZUYAさんが副代表をつとめていた団体です


「日本エア野党の会」とその分裂


日本エア野党の会ホームページ

「日本エア野党の会」は、2019年3月に誕生した任意団体です。毎月1080円を払えば、誰でも入会できるそうです

"ロビー活動とシンクタンクと支援団体を足して三で割ったような"ウヨ政治活動をすると宣言して設立され、実際、山岡鉄秀さんはことあるごとに「日本エア野党の会」の名前を全面に出して言論活動をしていました

しかし、ホームページにアクセスして頂ければわかるように、2020年5月1日現在、山岡鉄秀さんの名前もKAZUYAさんの名前もありません

KAZUYAさんの名前は2020年1月ごろにはすでに消えており、山岡鉄秀さんの名前はーー

"私、山岡は、3月31日をもって「日本エア野党の会」の代表を退き、4月から別のプラットフォームでこれまでの活動を継続することになりました"

というわけで、すでに「日本エア野党の会」は分裂しているわけですね

そもそも「日本エア野党の会」は、その始まりからして、どこかギクシャクしたものが感じられました


上の動画ーーKAZUYAさんと和田憲治さんによる「日本エア野党の会」設立の宣伝ーーからわかるのは、

①KAZUYAさんは強引に「日本エア野党の会」の副代表にされた
②山岡鉄秀さんは、KAZUYAさん・和田憲治さんから「独裁者」呼ばわりされていた

の2点です。「日本エア野党の会」設立の宣伝なので、2人とも冗談めかして語っているのですが、ひょっとするとガチで怒っていたのかもしれませんね

この不満があったのか、KAZUYAさんは「日本エア野党の会」設立の翌月には、同様のコンセプトであり、かつ、本当に政党をつくってしまおうという主旨の「政党DIY」に参加しています(「政党DIY」は2020.4.に「参政党」を結党)


設立当初からこんな具合でしたから、「日本エア野党の会」が分裂・崩壊状態になったのもわかる気がしますね

また、「政党DIY」チャンネルのできる少し前に、KAZUYAさんは自身の動画でトンデモウヨで有名な青山繁晴議員を批判しており……


これがウヨ界隈でたいへんな物議を醸しました。KAZUYAさん・和田憲治さんと山岡鉄秀さんは、青山繁晴議員への対応で対立したといいます

先にあげた山岡鉄秀さんの代表退任挨拶(https://ch.nicovideo.jp/strategy/blomaga/ar1872770)でも、この青山繁晴議員への対応の違いが退任理由としてあげられています

「日本エア野党の会」結成当初の綻びが、ずっと尾をひき、そしてとうとう分裂にいたってしまったわけです

和田憲治さん一人になった「日本エア野党の会」が今後どうなるのか、注目したいところですね


おわりに


「日本エア野党の会」こそ失敗気味ですが、株式会社オンザボードと和田憲治さんが『竹田恒泰チャンネル』『KAZUYA CHANNEL GX』『花田紀凱の週刊誌欠席裁判/ちょっと右よりですが・・・』といった強力なウヨコンテンツをもっていることは確かです

2020年5月3日の日本会議系集会の配信を機会に、日本会議との結びつきを強めるとすると、かなり恐ろしい存在となることでしょう

株式会社オンザボードと和田憲治さんは、今後のウヨ業界の台風の目となりうる存在なのかもしれません