今回は、2020年にリニューアルした竹鶴ピュアモルトを飲んでみます。

深刻な原酒不足の末のリニューアル

take2020a_ニッカウヰスキーは、NHKの朝の連続テレビ小説「マッサン」の放送による、国内でのウイスキーブームに加え、継続的に海外でも数々の賞で評価されて消費が増えたことで、深刻な原酒不足に見舞われました。

そのため、2016年に余市、宮城峡などの年数表記もののボトルを販売終了、多くのラインナップをやめ、年数表記されたボトルを竹鶴ピュアモルトに集約する政策を行いました。

しかし、中国人観光客などのインバウンドの需要も増えていったことで、ついに2020年3月に、竹鶴ピュアモルト17年、21年、25年の販売を終了しました。

さらに、ノンエイジも3月で新しいブレンドでリニューアルすることとなりました。ただし、年間22,000ケース(1ケース=12本)に生産を抑えることとなり、従来よりも1/5にまで流通が少なくなることとなりました。

私も札幌市内の店頭をいろいろ探したものの見つからず、今回はAmazonで倍以上のプレミアがついたボトルを買わざるを得ませんでした。
奇しくも販売が終了した旧ボトルの方が安く手に入るという逆転現象が起きています。

使用する原酒は、余市、宮城峡のシェリー樽原酒と、宮城峡のリメード樽原酒の3種類と、従来のボトルとほぼ変わらないものを使っているようです。

テイスティング

今回は、旧ノンエイジのボトルと飲み比べてみようと思います。
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液色

比較すると、旧ボトルの方が若干琥珀色として濃い印象です。

グラスからの香り
どちらもリンゴとブドウの香りが主体ですが、旧ボトルの方が熟した印象があります。
かといって新ボトルが薄いわけではなく、若々しいフレッシュな香りになっています。

ストレート

旧ボトルでは、レーズンの香りが一気に広がり、後からリンゴも追いかけるように香ってきます。
味わいは、アルコールからの辛みが少々強めで、奥からリンゴのような酸味と、グレープフルーツのような苦みがついてきます。

一方で新ボトルは、リンゴは青リンゴ、ブドウもマスカットのような若い香りとなって鼻を通っていきます。
味わいは、アルコールからの辛みは旧ボトルよりは抑えられていて、酸味と共に渋みも一緒に舌を刺激します。

ストレートで比べると、新ボトルの方が若さを感じます。

ロック

旧ボトルでは、レーズンよりもリンゴが前に来るようになり、ライムの爽やかな香りも加わります。最後にはナッツのような香ばしさが得られるようになります。
味わいは、アルコールの辛さが消えて甘みが浮き出てきて、その後にほのかな渋みと酸味が味に幅を広げてくれます。

新ボトルの場合、ブドウの香りが先に訪れ、青リンゴが後からついてくる印象になります。奥からはカカオのような香ばしさを若干感じ取ることが出来ます。
味わいは、フルーツの酸味の方が前に来て、甘さが次に控えているように感じられます。そして後味として渋みを残します。

ロックにおいても、旧ボトルの方が熟成感がしっかりしているように思えます。

ハイボール

旧ボトルでは、ブドウの香りが一気に広がった後、余市由来のピートからのスモーキーさが若干目立ちます。
味わいは、炭酸と共に酸味が増幅されるものの、刺激は少なく柔らかく感じられます。

一方で新ボトルだと、ピートは旧ボトルよりも若干強めで、その後にリンゴの香りが前に出て、マスカットも奥からやってきます。
味わいは、苦みが先行してきて、その後に酸味が追いかける感じです。

比較すると、新ボトルの方がエッジの効いた味に感じます。

個人的評価

原酒の熟成度合いの違いが明確に出たような気がします。
ただ、劣化したというよりも、熟したフルーツからフレッシュなフルーツに変わった印象で、それほど悪いとは思いませんでした。
いずれにしても、従来とは別物と思った方がいいでしょう。

出荷本数を1/5にして価格を4000円に上げたことについては、個人的には好んで買う値段ではないかな、と思っています。
ましてやプレミアがついて倍の値段の今においては、尚更買うべき値段ではないでしょう。

しかしながら、同じ価格帯のシングルモルト余市と宮城峡が販売終了となった場合、まともに買えるモルトウイスキーはこのボトルしかなくなるため、話も変わってくるでしょう。

ニッカファンにとっては苦悩の時がこれから数年続きます。
  • 香り C: 青リンゴとマスカットの香りが主体。加水でライム、ピートが現れる。
  • 味わい C: 酸味と苦みがメインで、甘さは控えめ。加水で苦みが目立ってくる。
  • 総評 D: 若さが強まった状態で値上げは正直つらい。