新型コロナ特例措置の雇用調整助成金を徹底解説|申請書類・書式・支給の流れ
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雇用調整助成金とは?
従業員の失業防止を目的として、1981年に創設された「雇用調整助成金」。
労働基準法では何らかの理由で休業せざるをえない場合、その理由が「会社都合」であれば従業員に「休業手当」として賃金の最低6割以上を支払う必要があります。
しかし売上が減少しているにも関わらず、休業手当を支払うことは非常に大変で、経営者が従業員を解雇する可能性があります。「雇用調整助成金」は会社が従業員を解雇せずに雇用を維持できるよう、休業手当を国が一部負担する制度です。
今回のコロナの一件でも従業員に休業手当を支払う必要があるのか
労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由(=会社都合)による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならない」と明記されています。
会社都合の休業は休業手当の支払いが義務化されていますが、今回のような事態は「会社都合」と言えるのでしょうか?厚労省のホームページでは「不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません」と記載されています。
- 会社都合の休業…休業手当の支払い義務がある
- 不可抗力の休業…休業手当の支払い義務はない
今回の緊急事態宣言や休業要請は「不可抗力」としてみなされるのか?この「不可抗力」の解釈は様々な所で議論になっています。
(朝日新聞)休業要請は「不可抗力」か 手当の支払い義務めぐり論争(4月20日の記事)
https://www.asahi.com/articles/ASN4N41B9N4KULFA026.html
厚労省のホームページでは、4月24日時点で「不可抗力」の解釈に関して下記のように回答しています。
不可抗力による休業と言えるためには、①その原因が事業の外部より発生した事故であること ②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること、という要素をいずれも満たす必要があります。
①に該当するものとしては、例えば、今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請などのように、事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因が挙げられます。②に該当するには、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要があります。
具体的な努力を尽くしたと言えるか否かは、例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか、労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか、といった事情から判断されます。
したがって、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や、要請や指示を受けて事業を休止し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません。
この記載内容を見る限り、緊急事態宣言を受けた、自粛要請を受けたからといって、不可抗力としてみなされるわけではなく、従業員を守るために最大限の努力を尽くしたか、という点が重要になりそうです。
雇用調整助成金のよくある勘違い
「雇用調整助成金」は「休業手当」の一部を国(厚労省)が助成する制度で、月給や日給などの「給与」の一部が助成されたり、従業員へ直接支給されるわけではありません。
月給30万円を支払う従業員がいる場合、1日換算10,000円となり「休業手当」を賃金の6割と設定すると、企業は従業員に1日6,000円の休業手当を支払うことになります。
「雇用調整助成金」はこの6,000円(休業手当)の一部を国が企業に対して補償するもので、助成率が4/5(8割)の場合は4,800円が助成(支給)されます。上限額は従業員1人あたり8,330円/日となります。
休業手当6,000円 × 助成率80% = 4,800円
休業手当が6,000円の場合は、4,800円が助成されるので、休業手当との差額で見れば、企業側の負担は1人あたり1,200円/日となります。コロナの一件で、助成される率や支給条件に何度も見直しが入っていますが、2020年4月28日時点でも、この上限金額は8,330円のままです。
ちなみに休業手当は「平均賃金の60%以上」がルールとなります。この「平均賃金」は「休業日以前3ヵ月間に支払われた賃金の総額 ÷ 期間の総日数(暦日数)」で計算します。
雇用調整助成金の特例措置による支給額と条件の変更
雇用調整助成金の意図や概要を説明しましたが、本題の支給額や対象者に関して、解説していきます。まずは通常時と今回の特例措置で分けて見ていきましょう。
| 通常時 | 新型コロナ特例措置(4月1日~6月30日) | |
|---|---|---|
| 対象事業者 | 経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた企業・個人事業主(雇用保険適用) | 新型コロナウイルスの影響を受ける企業・個人事業主(全業種、雇用保険適用) |
| 生産指標要件 | 直近3ヵ月の売上高等が前年同期比10%以上減 | 直近1ヵ月の売上高等が前年同期比5%以上減 |
| 対象従業員 | 雇用保険に6ヵ月以上加入 | 雇用保険加入6ヵ月未満/未加入な人も可能 |
| 助成率 | 中小企業2/3・大企業1/2 | 中小企業4/5・大企業2/3 (解雇をしない場合は中小企業9/10・大企業3/4) |
| 残業相殺について | 残業相殺 | 残業相殺を停止 |
| 助成額の限度(日額) | 8,330円/人 | 8,330円/人(変更なし) |
| 支給限度日数 | 1年:100日 | 1年:100日 + 緊急対応期間内の対象期間 |
| 手続き | 休業等の計画届は事前提出 | 休業等計画届の事後提出可 |
| その他 | 休業等計画届の事後提出が6月30日までに延長、雇用指標(最近3ヵ月の平均値)を撤廃、事業所設置後1年未満の事業主も対象、過去1年以内に雇用調整助成金を受給したことがある事業主も助成対象 |
雇用調整助成金の主な変更点をまとめると、下記のようになります。
- パートやアルバイトも対象になった
- 助成率は最大で中小企業は9/10、大企業は3/4
- 計画届の事後提出を認め、手続きを簡略化
パートやバイトも対象に
今回の特例で一番大きい変更は、パート・アルバイト、新入社員を休ませても雇用調整助成金の対象になるということです。
通常の雇用調整助成では、雇用保険の6ヵ月以上の義務が必須要件でしたが、今回の特例措置で、雇用保険加入6ヵ月未満/未加入な人も対象になったので、新入社員や派遣社員、契約社員、パート、アルバイトを休ませた場合も、助成金給付の対象になります。
助成率は最大で中小企業は9/10、大企業は3/4
また、助成率が中小企業は4/5、大企業は2/3へとアップし、従業員を解雇しない場合は、それぞれ9/10、3/4となります。
一件すると、経営者側としては非常に嬉しい話に思えますが、1日の上限が8,330円に設定されており、これを超える額は助成されません。
とある従業員の「平均賃金」が20,000円で休業手当が60%の場合、従業員へは12,000円を支払うことになります。助成率が9/10の場合、12,000円 × 90% = 10,800円となりますが、MAXが8,330円なので、12,000円 - 8,330円 = 3,670円は会社側の負担となります。
上記の平均賃金を例に、100人社員がいるとし、20日間休業させると、助成金額は1,666万円、会社側の負担は734万円となります。休業手当は賃金として扱われるので、通常の給与と同様に社保などを控除する必要があります。
計画届の事後提出を認め、手続きを簡略化
雇用調整助成金の申請は通常フローだと先に計画届を出し、休業をする流れになりますが、今回の特例措置により、先に休業してからの提出(事後提出)が可能となりました。
また申請をカンタンにできるよう、73個あった項目を38個に削減し、記載事項の大幅な簡略化と、添付書類の削減を行いました。
その他
新型コロナウイルスの影響を受けた会社であれば、開業して1年未満の事業主も助成対象となり、業種を問わなくなったので、風俗関連事業者も対象になります。
「残業相殺を停止」とは、通常の雇用調整助成では、従業員を休業させつつ、残業や休日出勤をさせたりと、突発的・一時的であっても休業させずに働かせる場合、助成の対象となる休業の延べ日数から、その残業や休日出勤をさせた分を控除します。
しかし、緊急対応期間に実施した休業含む、1/24以降の休業については、この残業相殺の適用はされなくなりました。
4月25日、雇用調整助成金の更なる拡充について
厚労省は4月25日に、雇用調整助成金の特例措置の更なる拡大を今後行うと発表しました。特例措置の詳細については、5月上旬頃を目途に発表するとのことです。
雇用調整助成金の更なる拡充について(4月25日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11603000/000625165.pdf
- 休業手当の支払率60%超の部分の助成率を特例的に10/10
- 一定の要件を満たす場合は、休業手当全体の助成率を特例的に10/10
しかし、この特例措置の更なる特例措置でも助成金の上限額は1日8,330円のままとなります。
休業手当の支払率60%超の部分の助成率を特例的に10/10に
中小企業が解雇等を行わず雇用を維持し、賃金の60%を超えて休業手当を支給する場合、60%を超える部分に係る助成率を特例的に10/10となります。
「平均賃金が8,000円、休業手当が100%、助成率が9/10(9割)の中小企業」を例に、従来の特例措置と今回の特例措置の拡大で違いを解説していきます。
休業手当8,000円 × 助成率90% = 7,200円
(休業手当8,000円 × 60% × 助成率90%)+(休業手当8,000円 × 40% × 助成率100%)= 7,520円
休業手当の60%を超える額(この例だと3,200円)の助成率が100%となったため、企業側への支給額が増えることになります。これにより実質94%の助成率(8,000円 × 94% = 7,520円)となり、会社負担は6%となりますが、1日の上限額が据え置きなのを考えるのであれば、微増、といったところでしょうか…。
休業手当全体の助成率を特例的に10/10に
休業等要請を受けた中小企業が解雇等を行わず雇用を維持し、下記の要件を満たす場合には、休業手当全体の助成率を特例的に10/10となります。
- 要請により休業又は営業時間の短縮を求められた対象施設を運営する事業主で、協力して休業等を行っていること
- 労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っていること、または上限額(8,330円)以上の休業手当を支払っていること(支払率60%以上である場合に限る)
適用日は4月8日以降の休業などに遡及(4月8日以降の期間を含む支給単位期間に適用)できます。
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雇用調整助成金の申請に必要な書類
申請は通常1ヶ月ごとに行う必要がありますが、緊急対応期間中は複数月をまとめて申請できるようになりました。申請には「計画届」と「支給申請」が必要となります。
詳しくは厚労省が(4月15日に)公開した「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)」を参照してもらうとして、簡単に要約して説明していきます。
特例措置の緊急対応期間は、2020年4月1日から6月30日までとなります。本来は事前に「計画書」を提出する必要がありますが、事後提出が暫定的に認められているので、要件を満たした上で、既に休業中の会社や、これから休業する会社は6月30日(火)までに「計画書」の提出をすればOKとなっています。
「計画届」の提出に必要な書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 休業実施計画届 | 記載例はこちら |
| 雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書 | 売上簿、会計システムの帳簿などの書類の写しでも可、記載例はこちら |
| 休業協定書 | 労働組合がある場合は組合員名簿、労働組合がない場合は労働者代表選任書を添付 |
| 事業所の規模を確認する書類 | 既存の労働者名簿及び役員名簿で可 |
「支給申請」に必要な書類
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 支給要件確認申立書・役員等一覧 | 計画届に役員名簿を添付した場合は不要、記載例はこちら |
| 支給申請書 | 手書きPDF版はこちら |
| 助成額算定書 | 記載例はこちら |
| 休業・教育訓練実績一覧表 | 記載例はこちら |
| 労働・休日の実績に関する書類 | ・出勤簿/タイムカードの写しなど(手書きのシフト表などでも可) ・就業規則または労働条件通知書の写しなど |
| 休業手当・賃金の実績に関する書類 | ・賃金台帳の写しなど(給与明細の写しなどでも可) ・給与規定または労働条件通知書の写しなど |
雇用調整助成金の受給の流れ
通常の雇用調整助成金の受給フローは、
- 休業の計画を作成して労使協定を締結
- 計画届(支給申請に必要な書類一式)の提出
- 休業の実施
- 支給申請
- (約2ヶ月後)労働局の審査・支給決定
となりますが、今回の特例で
- 休業の実施
- 休業の計画を作成して労使協定を締結
- 計画届(支給申請に必要な書類一式)の提出
- 支給申請
- (約1ヶ月後)労働局の審査・支給決定
とフローが変わりました。
休業を実施する
従来は労使協定を締結し、計画届を提出してから「休業」でしたが、休業後の提出でもOKとなりました。
労使協定の締結をする
休業の期間、対象者、休業手当の支給率(60%以上)を従業員と話し合ったうえで、事業主代表と従業員代表とで記名・押印をして締結する必要があり、これを「休業協定書」と言います。
休業協定書のフォーマット(愛知労働局で公開されている雛形)
https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/content/contents/000615626.doc
通常は、従業員代表を選出する際に「委任状」の添付が必要ですが、「委任状」は従業員の過半数以上の記名・押印が必要で手間がかかる、ということもあり、この特例措置中は不要となりました。
計画届の作成をする
次に「休業実施計画届」を作成します。「休業協定書」をベースに必要な情報を入力します。
様式第1号(1) 休業等実施計画(変更)届のフォーマット
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000621564.doc
従来、このフォーマットは各月でどの日を何日休業させるのか、計画を立てる必要がありましたが、今回の特例措置では休業日の合計日数を記載するだけでOKとなりました。
次に、雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書を作成します。確認書類は「売上」が分かる書類が必要になりますが、売上簿、会計システムの帳票等のコピーでもOKです。
新様式特第4号 雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000624437.doc
最後に労使協定を締結する際に作成した「休業協定書」と「労働者代表確認書類」「事業所の状況に関する書類」(労働者名簿および役員名簿のみで可)を用意して提出すれば、計画届の完了となります。
申込書の様式は厚労省:雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウィルス感染症対策特例措置用)にまとめてあり、記載例も載っています。
支給申請をする
原則は支給申請は休業を実施した判定基礎期間の翌日から2ヵ月以内が期限ですが、計画届を事後提出する場合は、事後提出の翌日から2ヵ月以内に申請する必要があります。
計画届を提出する際「判定基礎期間」を選択する必要があります。これは会社でいう「賃金締切期間」のことで、1ヵ月単位で、最大3ヵ月を判定基礎期間として、会社側で任意で選択することになります。
支給申請に際して、「支給要件確認申立書・役員等一覧」「支給申請書」「助成額算定書」「休業・教育訓練実績一覧表」「労働・休日の実績に関する書類」を提出する必要があります。
支給申請してから労働局の審査があり、通常は支給決定までに約2ヶ月かかりますが、厚労省は1ヵ月後の支給を目指しているようです。
雇用調整助成金、支給までの時間を半減(4/10の記事)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57934930Q0A410C2EA4000/
まとめ
雇用調整助成金の特例措置は、パートやバイトといった、従来では休業手当が発生しないような従業員が対象となり、解雇をしない中小企業は9/10が助成と、対象範囲・対象額ともに素晴らしい制度のように思えますが、1日の上限が8,330円まで、と上限は据え置きなので、経営者にとってはこの上限額が非常に気になるところでしょう。
また、助成金全般に言えることですが、何らかの費用を支払ってから(今回であれば従業員に休業手当を支払ってから)そのお金の一部が数ヶ月後に支給されるので、直近の資金繰りに困っている企業にとっては死活問題と言えるでしょう。
そういった点では経産省管轄の「持続化給付金」は「給付金」という扱いなので、売上が前年同月比で50%減少という、厳しい条件ではありますが、法人なら最大200万、個人なら最大100万が支給されるので、こちらも合わせてチェックしておくと良いでしょう。
このような助成金・補助金・給付金以外にも、コロナの影響を受けた個人事業主や中小企業に対して、無利子無担保融資や、納税猶予があり、さらには賃料補助などの話も出ています。
経営的に苦しい企業が増えているかと思いますが、比較ビズでは助成金申請の代行をする社労士に一括で見積もりが取れます。この時期は社労士の方々も忙しく、お問合せ頂いても必ず提案が入るとは限りませんが、もしよろしければ一度ご活用下さい。
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