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 不審な電話やメールはすべて詐欺だと疑ってほしい――。消費者庁がそんな呼びかけをしている。きょうからは国民生活センターが無料の電話相談を連休返上でスタートさせる。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う不安につけ込み、また政府や自治体が打ち出した生活支援策に乗じる形で、お金や個人情報をだまし取ろうとする動きが多発している。

 相手にせず無視する。少しでも疑問があれば、信用できる公的機関などに連絡をとる。自分だけでなく、離れて住む家族、とりわけお年寄りや社会経験の浅い子どもにも注意を促して、被害を防ぐ必要がある。

 国民生活センターによると、新型コロナウイルス関連で全国の消費生活センターに寄せられたトラブル相談は、4月末までで2万件を大きく上回る。

 手口はなりすましが目立つ。「市コロナ対策室」などと称して、子ども1人に3万円を助成すると偽り、振込先の銀行口座を聞き出す。「ウイルス検査が無料でできる」と持ちかけ、マイナンバーカードを用意して自宅で待つように伝え、番号を入手しようとする。心のすき間に入りこむ典型的なやり方だ。

 オレオレ詐欺の「進化形」もある。80代男性は息子を名乗る男に800万円をだまし取られた。銀行の窓口では「コロナ禍の影響で現金が必要になった」と説明し、行員のチェックをすり抜けた。そう言えと「息子」に指示されたという。

 国民1人あたり一律10万円を支給することを盛り込んだ補正予算がきのう成立し、こうした働きかけはさらに活発・巧妙になると予想される。

 給付金はどんな方法で支払われ、申請の際にどんな事項や個人情報を書類に記載するのか。政府・自治体は手続きの細部を速やかに決めて周知し、そこから少しでも外れるようなことがあれば詐欺だと、人々がわかるようにしてもらいたい。

 消費者団体、警察、弁護士・税理士・司法書士などの専門職も、連携して被害を抑えるとともに、だまされた人が出たときには、加害者の摘発と損害回復に積極的に取り組んでほしい。メディアの役割も重い。

 政府のコロナ対策をめぐっては、後手後手に回っている、思いつき先行でピントが外れているといった批判が絶えない。詐欺被害の防止でも同様の指摘を受けることがないように、適切な手立てを講じるべきだ。

 感染拡大を阻むために、当面は人と人との接触を抑えることが求められている。顔を合わせなくても、様々な手段を使って声を届け、情報を共有して詐欺犯のつけ入る穴をふさぎたい。

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