新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急事態宣言について、安倍首相はきのう、5月6日までとしていた期限を延長する意向を表明した。人々の暮らしや経済活動は、さらに制約され続けることになる。どう乗り切るのか。政府は可能な限りの備えを用意すべきだ。
国民がいま知りたいのは、今後の暮らしがどうなるのか。そして、どこまで政府の支援を受けられるのかだ。
感染拡大に対する経済対策としてはきのう、総額25・7兆円の今年度補正予算が成立した。しかし政府が予算案を検討していた時点より、事態は大きく悪化している。
それなのに安倍首相は、予算案の審議で「(今の対策が)不十分ということになれば、果断に決断をしたい」などと精神論を繰り返すばかりで、具体策は示さなかった。これでは多くの国民は安心できないだろう。
現金給付の方針転換で、予算成立は予定より1週間遅れた。コロナ禍で苦境に陥った人の暮らしの支援は一刻を争う。遅れを取り戻すためにも、政府は自治体との連携を深め、給付を急がねばならない。
ただし、事態の長期化を踏まえれば、今の政策では不十分なのは明らかだ。
例えば、収入が半減した中小企業には最大200万円の現金を給付するが、中小企業庁の中小企業実態基本調査(2017年度)によると、地代と家賃だけで、飲食店は3・5カ月、劇場・パチンコなどの娯楽業は1・0カ月で使い切ってしまう。これらの事業者の多くは、3月には売り上げが急減していた。
地方自治体が休業支援に使える臨時交付金1兆円も、足りなくなるのは確実だ。1人一律で10万円の現金を配るが、10万円では標準的な人の1カ月の消費しかまかなえない。
宣言が延長されれば、多くの中小企業の経営や、失業した非正規労働者らの暮らしが、立ちゆかなくなる恐れがある。政府は速やかに追加対策を詰め、国民に示す必要がある。
新たなテーマも浮上している。売り上げが落ちて家賃の支払いに窮している飲食店などへの支援策だ。野党はすでに、中小企業の家賃を政府系金融機関が肩代わりし、支払いを猶予する法案を衆院に共同で提出した。自民党もきのう、別の支援制度の創設に向け本格的な議論を始めた。党派の対立を超えて対策をまとめるべきだ。
政府が果たすべき役割は多いが、財政支出を無尽蔵に増やすこともできない。本当に困っている人に必要な支援が届くよう、知恵を絞ることが求められている。
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